2021年後半から円安・ドル高が加速度的に進んだ。米国では急激に進むインフレを抑制するためにFRB(米連邦準備制度理事会)が金利を大幅に引き上げる一方、日本では日本銀行が低金利政策を維持してきた。
この日米金利差の拡大が円安傾向をもたらす素地となっている。円安が続く結果として、輸入価格の上昇を通じて企業のコストアップへとつながる一因になる。他方、大幅な円安を背景に過去最高益をあげた企業も多く、為替レートが業績に与える影響は大きい。
企業が業績の見通し等を作成する際にあらかじめ設定(想定)した名目為替レートと、実際の名目為替レートに大きな差異が生じた場合には、企業の事業遂行に影響を与えるほか、業績を大きく左右することとなる。とりわけ、中小企業の想定為替レートは企業の与信にも影響を与える。
そこで、帝国データバンクはこのほど、企業の設定(想定)為替レートについて調査を実施し、その結果を発表した。
想定為替レートは平均1ドル=127.61円
2023年4月時点における、企業の想定為替レートは平均1ドル=127.61円(以下、1米ドル当たりの円レートを示す)となった。前年4月時点の119.69円から7円92銭の円安水準を想定していた。また中央値、最頻値はともに130円だった。
想定為替レートの分布は、126~130円の間を想定している企業が27.1%で割合が最も高かった。次いで131~135円が26.3%と続いており、120円台後半から130円台前半を想定する企業で5割を超える。
企業からは、「今後、インバウンドの回復が始まる。為替は現状くらいが実力でこの程度の円安でも資源エネルギーの基礎価格が落ち着けば、国内でのインフレ状況に落ち着きが出て、個人消費が戻るとともに好循環が始まる」(しょうゆ等製造、130円)など、現在の為替レート水準くらいが望ましいとする意見がみられた。
一方で、「年末に向けて、ドル・円の為替相場が円安に振れると問題が多そう」(果実卸売、125円)や「消費者物価は上昇中なので、為替レートに絡む仕入れ価格の上昇をどれだけ売価に転嫁できるか不透明」(婦人・子供服小売、125円)といった、さらなる円安進行や仕入れ価格の上昇分に対する価格転嫁へ懸念を示す声も聞かれた。