危険な心筋梗塞は月曜日に多く発生する
週末が休みの人にとって、仕事や学校に戻らなければならない月曜日は憂うつなものだ。しかし、月曜日は人を憂うつにさせるだけではないようだ。
アイルランドの患者データを分析した新たな研究で、月曜日は、緊急性の高いST上昇型心筋梗塞(STEMI)が1週間のうちで最も多く発生する曜日である可能性が示された。
英Belfast Health and Social Care Trustの循環器専門医であるJack Laffan氏らによるこの研究結果は、英国心臓血管協会(BCS)年次会議(2023年6月5〜7日、英マンチェスター)で発表された。
STEMIは血栓により冠動脈が閉塞して生じる心筋梗塞で、閉塞した血管を速やかに開通させなければ、心筋全層に壊死が生じる。英国でのSTEMIによる入院患者数は、毎年3万人以上に上る。
STEMIでは、患者の心臓へのダメージを最小限に抑えるために、緊急度を迅速に評価し、必要に応じて閉塞した冠動脈を再開通させるための治療(経皮的冠動脈形成術)を行うことが必要だ。
今回の研究では、2013年1月から2018年3月の間にSTEMIを発症して入院した、アイルランド共和国と北アイルランドの患者1万528人のデータが分析された。対象者は、入院した日の曜日によりグループ分けされた。
STEMIの各曜日の発生件数と1週間の平均発生件数を比較すると、STEMIは月曜日と日曜日に有意に多く発生していることが明らかになった。
また、各曜日のSTEMI発生のオッズを当該曜日以外の6日の平均と比べたところ、月曜日のみSTEMI発生のオッズが有意に高いことが示された(オッズ比1.13、P=0.015)。
ただし、この研究では、なぜ月曜日にSTEMIの発生が増えるのか、その理由は明確になっていない。過去の研究では、1日ごとの周期で繰り返される概日リズム(体内時計)が関わっていることが示唆されている。
Laffan氏は、「われわれの研究から、1週間の仕事を開始する日である月曜日は、STEMI発生と統計学的に強い関連を示すことが明らかになった。このような結果は以前にも報告されているが、今でも好奇心をそそるものであることに変わりはない。月曜日にSTEMIの発生が多い理由には複数の要因が絡んでいる可能性が高いが、過去の研究で示唆されたように、概日リズムを一要因として検討するのは妥当ではないかと思う」と述べている。
一方、英国心臓財団(BHF)のメディカルディレクターを務めるNilesh Samani氏は、「英国では、5分に1人が命を脅かす心筋梗塞により入院している。そのため、今後も研究を続け、心筋梗塞がどのように、また、なぜ起こるのかを解明することが重要だ」と述べる。
その上で同氏は、「今回の研究結果は、特に緊急性の高い心筋梗塞の発生時期に関する新たなエビデンスとなるものだ。今後は、1週間のうちの特定の曜日になぜ心筋梗塞が起こりやすいのか、その理由を明らかにする必要がある。それにより、この致命的な疾患に対する医師の理解が深まり、それがより多くの命を救うことにつながるかもしれない」と話している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2023年6月6日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://heart.bmj.com/content/109/Suppl_3/A78
構成/DIME編集部