大正製薬は日本人の中高年者の健康データ解析により、健康維持に重要な成分タウリンの食事からの摂取量の年次推移を初めて推定。
その結果、食事からの摂取量は8年(2002〜2004年調査時→2010〜2012年調査時)で約2割減少していることが判明したという。
なお、本成果の一部は2023年5月12~14日に開かれた第77回日本栄養・食糧学会大会で発表された。
タウリン摂取量調査の背景
同社の最新研究によれば、タウリンを約300mg/日程度摂っている中高年者は、約100mg/日程度の人に比べ脚の筋力を維持できていることが判明(※1)。
タウリンは魚介類に多く含まれているが、人間の体内にも体重の0.1%に相当する量が存在すると言われている(※2)。
また、タウリンは、コレステロールを減らす、高血圧の予防などに効果があると言われているほか(※2)、約300mg/日摂るとメタボリックシンドローム予防につながるとの報告(※3)もある。
そこで今回、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが保有するデータを解析することにより、日本人の中高年者(40歳以上の男女)のタウリン摂取量の年次推移を初めて推定した。
研究成果について
タウリンはビタミンやたんぱく質などのように、食品中の含量の公的な資料がない。よって日本人のタウリン摂取量の報告は少なく、その年次推移の報告はほとんどないのが現状だった。
今回、食品からのタウリン摂取量を独自に推定した結果、300mg以上/日の摂取者は減少し、約9割の中高年者は、目安となる300mg/日よりも摂取量が少ないことがわかった(図1)。
図1 中高年者の食事からのタウリン摂取量
また、食事からのタウリン摂取量を比較した結果、8年間で約2割減っていることが判明。平均摂取量も200mg未満/日(2010-2012年時点)まで減少していた(図2)。
図2 食事からのタウリン平均摂取量(推定値)の年次推移
この解析では、食事からのタウリン摂取のうち、7割以上が魚介類から摂られていた。その割合は8年間で減少しており、タウリン含量の少ない肉類からの摂取が増加している(図3)。
図3 食事からのタウリン摂取内訳
近年は、魚介類消費量の減少(図4)により、タウリン摂取量もさらに減少していると考えられる。
図4 魚介類と肉類の消費量の年次推移(出典:令和3年度水産白書(水産庁)を加工して作成)
研究成果のまとめ
今回の研究では、健康維持に重要な成分タウリンの摂取量の年次推移を日本人で初めて推定した。
その結果、食事からの摂取量は8年で約2割減少しており、中高年者の約9割が300mg未満/日である可能性が示された。
普段の食事で不足分を補うためには、1日に1食程度、カキ、タコ、サンマなどの魚介類のメニューを食事に取り入れることで、約300mgのタウリン摂取が期待できる(※3)。
同社では、このような結果を受け、「当社はこれまで、タウリンと疲労回復の関連やタウリンが筋力維持に与える影響など様々な角度からタウリン研究を進めてきました。今後もタウリン研究を推進し、生活者の皆さまの健康で豊かな生活に貢献してまいります」とコメントしている。
※1 2023年6月16~18日の第65回日本老年医学会学術集会で当社が発表予定(2023年5月9日プレスリリース)
※2 厚生労働省e-ヘルスネット
※3 読んで効くタウリンのはなし(成山堂書店)
構成/清水眞希