菜食に変えると血清脂質値が良好になる――RCT30件のメタ解析
無作為化比較試験(RCT)の報告を対象とするメタ解析から、食事を菜食(ベジタリアン食やビーガン食)に変えると、血清脂質値が有意に低下することが分かった。
コペンハーゲン大学(デンマーク)のRuth Frikke-Schmidt氏らの研究の結果であり、詳細は「European Heart Journal」に2023年5月24日掲載された。
この研究では、文献データベース(PubMed、Embase)を用いて、1980年~2022年10月に発表された、18歳以上の成人を対象に食習慣を菜食に変更するという介入を行っていたRCTを検索。
抽出された30件の研究を統合して、菜食群と一般的な食事(雑食)を続けた群との血清脂質値の差異を検討した。
研究参加者は合計2,372人で、介入期間は10日~5年の範囲であり平均29週だった。メタ解析の結果、菜食群は雑食群に比べてLDL(悪玉)コレステロールが-11.6mg/dL(95%信頼区間-15.5~-7.3)、総コレステロールが-13.1mg/dL(同-17.0~-8.9)、それぞれ有意に低いという群間差が生じていたことが明らかになった。
また、コレステロールなどを運搬するタンパク質であるアポリポ蛋白のうちのApoBの濃度には、-12.92mg/dL(-22.63~-3.20)の有意な差が生じていた。
菜食に変更した群の血清脂質の変化率を見ると、LDL-コレステロールは10%、総コレステロールは7%、ApoBは14%低下していた。
これらの結果は、研究参加者の年齢や研究が実施された場所(大陸)、介入期間、健康状態(肥満の有無など)にかかわらず、同様に認められた。なお、中性脂肪レベルについては、有意差が観察されなかった。
Frikke-Schmidt氏は、「この研究から得られた重要なポイントは、年齢やBMIなどが異なる全てのサブグループで同じ結果が得られたことだ。もし、人々が幼い頃から食事をベジタリアン食またはビーガン食にしたとしたら、動脈硬化によって引き起こされる心血管疾患のリスクを大幅に軽減できる可能性がある」と話している。
同氏らによると、世界中で毎年1800万人以上が心臓病で死亡しており、心臓病が世界の人々の主要な死因となっているという。
さらにFrikke-Schmidt氏らは、「人々が菜食に移行することで、気候変動を食い止めることができるかもしれない。最近発表されたシステマティックレビューでは、高所得国の国民が菜食中心の食生活に変更した場合に、温室効果ガスの排出量を35~49%削減できることが示されている」と語っている。
ただ、血清脂質値を下げるという点に焦点を当てた場合、脂質低下薬のスタチンの効果の方が菜食よりも優れているという。
とはいえ、菜食とスタチンは互いに相反する関係にあるわけでなく、「両者を組み合わせると相乗効果が生じて、さらに大きなメリットを得られる可能性が高い」としている。
一方、本研究の限界点としては、菜食とともに健康的な食生活として位置付けられている、魚介類の豊富な地中海食による血清脂質値の変化を評価できなかった点が挙げられるという。
同氏によると、「地中海食による介入を行い雑食と比較した研究の報告が、検索されなかった」とのことだ。
それでも同氏は、「地中海食は魚介類とともに植物性食品が豊富であり、その有益性は十分に確立されている」と解説している。(HealthDay News 2023年5月26日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehad211/7177660
構成/DIME編集部