2型糖尿病患者が飲み物を変えると寿命が延びる可能性
2型糖尿病患者の場合、砂糖で甘く味付けされた飲み物(加糖飲料)の摂取が、寿命を短くする可能性のあることが報告された。
米ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院のQi Sun氏らの研究によるもので、詳細は「The BMJ」に2023年4月19日掲載された。
この研究には、米国内の看護師を対象に実施されている「Nurses’ Health Study;NHS」と、医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」という二つの大規模コホート研究のデータが用いられた。
それぞれの研究のベースライン時または追跡期間中に2型糖尿病と診断されていた1万5,486人(平均年齢61.3歳、女性73.6%)を解析対象として、2~4年ごとに実施されていた食事調査から、加糖飲料やその他の飲料の摂取量を把握。
それらの摂取量と、全死亡(あらゆる原因による死亡)、心血管疾患の発症、心血管死のリスクとの関連を検討した。
平均18.5年の追跡で、3,447人(22.3%)が心血管疾患を発症し、7,638人(49.3%)の死亡が記録されていた。
解析結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、糖尿病罹病期間、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、降圧薬・血糖降下薬・脂質改善薬の使用、糖尿病・心筋梗塞の家族歴、閉経状態・ホルモン補充療法の施行など)を調整後、加糖飲料の摂取量が多いほど全死亡リスクが高いという関係があることが明らかになった。
具体的には、加糖飲料の摂取量が1日当たり1杯多い場合、全死亡リスクが8%有意に上昇していた〔ハザード比(HR)1.08(95%信頼区間1.02~1.14)〕。
心血管疾患の発症や心血管死についても、同様の関連が認められた。反対に、コーヒーの摂取量が1日当たり1杯多い場合は全死亡リスクが有意に低く〔HR0.91(同0.89~0.93)〕、普通の水の摂取量が多いことも全死亡リスクの低さと関連が見られた。
加糖飲料を摂取している2型糖尿病患者が、その一部をほかの飲料に置き換えた場合に、それらのリスクが低下する可能性も示された。
例えば1日1杯の加糖飲料をコーヒーに変えた場合は全死亡リスクが18%低下し、茶(tea)や普通の水に置き換えた場合は16%、低脂肪乳では12%リスクが低下すると推算された。
また、人工甘味料を用いた飲料に置き換えた場合も、全死亡リスクは8%低下すると見積もられた。
糖分が多いながらも非加工に近い食品であって栄養素を多く含んでいるフルーツジュースは、それらのリスク低下との関連が示された飲料と加糖飲料との中間に位置付けられた。
つまり、フルーツジュースの摂取量が多い場合に全死亡や心血管疾患の発症、心血管死のリスクの上昇は見られず、かつ、加糖飲料をフルーツジュースに置き替えたとしても、リスクの低下は生じないと予測された。
この論文に対して、英ケンブリッジ大学のNita Gandhi Forouhi氏が付随論評を寄せ、「本報告は、2型糖尿病患者にとって加糖飲料を減らし、より健康的な飲料を摂取することが最善であることを示しており、かなり強力なメッセージである」と記している。
ただ、「茶(tea)の種類による違いや、コーヒーに砂糖を加えるか否かによる違いが検討されていない」と、研究の限界点も指摘している。
また、米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、「加糖飲料はカロリーはあるが栄養価はほとんどない。さらに、空腹感は満たされず、ごく短時間で大量に摂取できてしまうことも問題だ」と語っている。(HealthDay News 2023年4月20日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/381/bmj-2022-073406
Editorials
https://www.bmj.com/content/381/bmj.p841
構成/DIME編集部