部下や同僚に意図した内容が上手く伝わらないと感じることは多いもの。たった一言で部下の信頼を失ったり、逆に取引先との関係が向上して大きな売り上げにつながることも。
今回は(株)文道取締役で日本映画ペンクラブ会員の小川真理子さんに、映画から学ぶ「伝わる言い方」について教えてもらおう。
失敗せずにきちんと伝わる言い方は映画が教えてくれる
――初めまして!小川真理子さんは株式会社文道取締役兼、編集ユニット「クロロス」のメンバーです。現在、日本映画ペンクラブ会員で、たいへん映画好きと伺っています。
小川さん 映画は好きです。母が映画好きで、小さい頃、母に手を引かれてよく映画館に行きました。タイトルは覚えていませんが、外国映画では西部劇、日本映画では喜劇をよく観に行きました。お正月は家族そろって映画を観に行くこともありました。
その影響で映画を観るのは日常となり、学生時代には映画制作のサークルに入って制作もしていました。
私にとっての映画の楽しさは、「だれか」の人生を追体験できることです。架空の登場人物であれ、リアルな登場人物であれ、映画に映し出される人(ときには動物)の人生を観ることで、共に歩き、何かを感じていく。
そこには日常の2時間では得られない感動や気づきがあります。
たった2時間、しかも2000円程度で得られるのは、なんといってもお得です。
映画館で観るとさらにおもしろいです。大画面、大音響で観られるので、集中できて気持ちの切り替えになります。ほかのお客さんもいて、知らない人たちと一緒になって、泣いたり笑ったり拍手したりするのも楽しいです。
ここ最近は忙しくて家でビデオを観ることが多かったのですが、これからはまた映画館に足を運びたいです。
【伝える言い方】映画のセリフはビジネスに役立つ
――ビジネスに役立つ映画の観かたもありますか?
小川さん あると思います。映画の中には、「上司と部下」や「先生と生徒」のように、上下関係の設定は多く、仕事をする上の心構えとして役立ちそうな名言が多くあります。
たとえば、2022年に大ヒットしたトム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』。アメリカのエリート・パイロットチーム“トップガン”養成の教官となったマーヴェリック(トム・クルーズ)が、訓練生に次のようなセリフを言います。
「考えるな。行動しろ」
私なりの解釈では、「普段からきちんとトレーニング(仕事)に取り組んでおくと、いざというときに、考えなくても手が動く、体が動く」です。あるいは、「わからないときは、まずはやってみよう」という解釈もできます。
言葉は力を秘めています。人や自分を元気づけたり、勇気づけたりできる。
映画であれば、言葉が映像やストーリーと一緒に刻まれますので、より力強いメッセージとして、心にストックできます。
心にストックしておくと、仕事でピンチのときに、顔を出して気持ちを立て直したりしてくれます。
――なるほど!ほかにも小川さんの印象に残っているビジネスシーンのセリフはありますか?
小川さん 『プラダを着た悪魔』も上司と部下のやりとりがありますので、ビジネスに役立つかもしれません。この映画は、一流ファッション誌のカリスマ編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタントとして採用された主人公アンディ(アン・ハサウェイ)の成長の過程が見ものです。
アンディは一生懸命に仕事をするのですが、ボスのミランダは鬼のような命令を突き付けてきます。そのときに、アンディが「私がちゃんとやっても、ミランダは認めてくれないし、お礼も言わない」と文句をいいます。
すると、それを聞いていたアートディレクターのナイジェルがこんな辛辣な言葉をかけます。
「アンディいいかい、君は努力してない。グチを並べてるだけ」。
新入社員であれば、はっとするような言葉で、何かの気づきになるかもしれません。
映画を観ていると、言葉の選び方や使い方次第で、主人公の人生が変わっていくことがわかります。ビジネスにおいても、同様で言葉や文章の選び方ひとつで、うまくいくかいかないかが決まってくるのではないでしょうか。