海外投資家の日本株売買状況を北米、欧州、アジアといった地域別でみた場合、もっとも日本株を売買している地域は、いったいどこになるのだろうか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「海外投資家の地域別日本株売買状況」と題したマーケットレポートを発表した。レポートの詳細は以下の通り。
海外勢は4月に約2兆2,000億円買い越したが、欧州が約1兆7,000億円の買い越しで最大に
日本取引所グループは、海外投資家の日本株売買状況について、地域別に月間と年間のデータを公表している。具体的に、地域は「北米」、「欧州」、「アジア」、「その他地域」の4つに分類されている。
そこで今回のレポートでは、直近の月間データである4月分を用いて、地域別に海外投資家の日本株売買状況を検証するとともに、年間データで2013年から2022年までの地域別売買状況の推移を振り返る。
はじめに、4月のデータからみていくと、海外投資家は4月に現物株を約2兆2,000億円買い越した。
買い越し額が2兆円を超えるのは、2017年10月以来、5年半ぶりのことで、海外投資家の買いが、新年度入り後の日本株上昇の大きな原動力になったと考えられる。
地域別にみると、欧州が約1兆7,000億円の買い越しと、最大の買い手だったことがわかる(図表1)。
3月の海外勢の大幅売り越し時も欧州が最大の売り手に、そこで過去の地域別売買状況を検証
なお、海外投資家は、米欧の金融不安でリスク回避姿勢が強まった3月には、現物株を約2兆3,000億円売り越しており、このうち欧州が約1兆3,000億円の売り越しと、最大の売り手となった。
海外投資家は、4月の買い越しで3月の売り越しをほぼ埋めた形になったが、投資部門別売買状況の週間データをみると、5月に入ってからも、第1週、第2週と買い越しを続けている動きが確認されている。
このように、海外投資家は3月に現物を大きく売り越し、4月に大きく買い越したが、いずれにおいても欧州の存在感が突出している。
そこで、次に2013年から2022年までの年間データを用い、地域別売買状況の推移を確認する。手順としては、地域別に売買金額を合計し、全体の売買金額に占める割合を算出し、年間の地域別売買シェアの変化をみていく。
過去10年で欧州が最大の売買シェアを有しアジアのシェアも増加、全体の売買金額は増加傾向
結果は図表2の通りで、2013年から2022年の間、欧州が最大の売買シェアを占めていることがわかる。
欧州のシェアは、2013年が59.4%だったが、2022年には74.5%に達しており、この10年で緩やかながらも増加傾向にある。
また、アジアについても、シェアは2013年の9.4%から2022年は17.1%に増加している。一方、北米のシェアは、2013年の30.8%から2022年は7.9%に減少しており、近年ではアジアを下回っている。
全体の売買金額の総計に着目すると、2013年は約670兆円だったが、2022年は約1,041兆円に増加している。
以上より、日本株に投資する海外投資家については、欧州の投資家が最大の売買シェアを有し、近年ではアジアの投資家の存在感が高まっているといえる。
また、全体の売買金額の総計も増加傾向にあることから、海外投資家は日本株の売買を増やしてきていると推測される。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい