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自分で自分を抱きしめる!?ハグの力で様々な社会課題の解決に挑むテクノロジー「Hugtics」とは?

2023.06.02

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

時間や距離を超えたハグを体験できるテクノロジー

テクノロジーとアイデアを起点とした社会課題の解決や新しい表現方法を実践しているR&D組織「Dentsu Lab Tokyo」が、触覚を擬似的に再現する「ハプティクス技術技」を用いて自身や他者の体へアウトプットすることで、ハグされている感覚を疑似体験できる、ベスト型のハグ体験テクノロジー「Hugtics」を発表した。

本プロジェクトを統括するDentsu Lab Tokyoの大瀧篤氏はこう話す。

「医学の進歩で寿命は大きく伸びましたが、世界的にもメンタルヘルスの不調を訴える人も増え続けており、幸せな状態で長生きするためにはどうしたらよいかと考えたことがきっかけでした。

私たちは人間の動きをデータにする『モーションデータラボ』というプロジェクトを進めてきましたが、今回はハグという動きに着目。ハグは脳の中で分泌されるオキシトシンというホルモンが分泌され、人と人との信頼や愛着を強めたり、ストレスを低減させたりする効果があり、幸福感が増すとされています。

テクノロジーの力で、時間や距離、概念を超えたハグに進化させ、世界中の人の心を通わせ豊かさを感じるきっかけになればという想いで挑戦しています」

今年3月に米国テキサス州オースティンで開催された「SXSW 2023(サウス・バイ・サウスウエスト2023)」に出展し、本プロジェクトの初披露の場となる体験型デモンストレーションを実施。子どもから大人まで老若男女、車いすユーザーも体験して、自分で自分を抱きしめる新しいハグ体験や、他者のハグを転送する体験に驚きの声が上がった。

「当初の目標の4倍ほどの方々に体験いただき、海外のSNSでも幅広く発信されました。『子どもとのハグを思い出した』『亡くなった父とのハグを思い出して幸せな気分になった』『孤児の子供たちにハグを届けてあげたい』などのコメントをいただきました。

『この技術で母とハグを記録しておきたい』という声もあり、離れて暮らす家族にハグを届けることも可能にする、新しいコミュニケーションを提案することができたと手応えを感じました。今後は国内でも、様々な企業とのコラボレーションを加速させていきたいと考えています」(大瀧氏)

「Hugtics」のベスト型デバイスは研究者の髙橋宣裕氏の協力を得て開発。コア技術である人工筋肉が編み込まれたベストを着用し、圧力センサーを付けたトルソーを抱きしめることで、ハグのデータを計測。自身のハグの感触をリアルタイムで人工筋肉にフィードバックすることで、自分で自分を抱きしめるという未知の体験を実現する。

ハグした時の幸福度を客観的に解析するため、電通サイエンスジャムの「感性アナライザ」を用いて脳波をセンシングすることで、ハグした時に感じる感情の変化を計測。その効果を独自のアルゴリズムで可視化して、ウェア型デバイスに内蔵したLEDの色に反映。幸福度が上がると赤から青に変化し、第三者から見ても感情の変化がわかる。

Hugticsのコア技術である人工筋肉について、スーパーバイザーの髙橋氏に解説してもらった。

「シリコンチューブの周りを、ある一定の角度で折った繊維をかぶせているシンプルな構造で、その中に最大5気圧ほどの高い気圧の圧縮空気を送ると、実際の筋肉と同じように膨張しながら伸縮する動きをするというのが人工筋肉の原理です。人工筋肉を繊維と編み込むことで、服に近い感覚で仕上げることができます。

方法としては古典的ですが、細い人工筋肉は近年に開発されたもので、こうしたデバイスにも応用できるようになりました。このデバイスでは5つ編みになっていますが、これを10本編みにするとより面として体に伝わる触覚をアレンジでき、細い人工筋肉を編み込んで使うメリットになります。

機械を動かす駆動のもとになるアクチュエーターですが、従来のハードアクチュエーターは重く、組み込む数を増やすとどんどん重くなってしまうため、今までは椅子などに仕込んで体に触覚を伝えるのが王道で、ウェアラブルでこれだけの力を出そうとすると非常に重くなり、着るというより背負うという状態になってしまいます。

今回の人工筋肉はソフトアクチュエーターで構成しているので、装着するデバイスは子どもでも着ることができる重量になっています。衝撃にも強く曲げても壊れないのが特徴で、デバイスを着て寝転んでも支障は出ません。

ウェアラブルでアクチュエーターを組み込むものとしては、介護や医療の現場で使うパワードスーツやアシストグローブなどがありましたが、Hugticsは対人コミュニケーションのための服という新しい形を提案できるのではないかと思っています。この技術を応用すれば、ウェアラブルデバイスを着ることで、対人コミュニケーションはもちろんのこと、“自己コミュニケーション”の一環として、座禅を組んだり、瞑想したりすることに利用できるかもしれません」(髙橋氏)

【AJの読み】ハグに慣れていないとちょっと気恥ずかしいかも

Hugticsを実際に体験してみた。まずは「自分で自分を抱きしめる」ハグに挑戦。ベスト型のデバイスを装着してトルソーに抱きつくと、抱いている箇所が人工筋肉のチューブの部分にフィードバックされ、ハグされている体験ができる。自身でハグすると、力加減や場所などを意識した状態になっているためか、ハグというよりマッサージのような感覚だった。

次に「他の人にハグされる」パターンに挑戦。他者がトルソーをハグした部分と同じところに感覚が伝わり、強くハグされたり、やさしくハグされたりと加減を相手に任せている状態なので、目を閉じていると本来のハグに近い感覚という印象だ。大谷翔平選手や二次元キャラなど脳内でハグされたい人を思い浮かべながら疑似体験できるという楽しみ方もあるかも(笑)。

脳波センシングは自分の心音を聞きながら自身の内部に潜っていくような感覚で、1分間のハグを行う。ハグをしている時の感情変化がリアルタイムで計測され、幸福度が数値で表れる。青の部分が多いほど幸福度が高いということ。ハグ自体にあまり慣れていないからか、緊張している瞬間もあって、筆者の幸福度は100点満点で「75」だったが、他の体験者では「98」もあった。

Hugticsのハグ体験はとても興味深いが、この技術をどのように展開していくのか気になるところだ。「今後はハグのデータで、医療や孤独対策、メタバースなど様々な分野に挑戦していく」(大瀧氏)ということで、ハグによる幸福感や自己肯定感を高める、新しいメンタルヘルス領域を目指していくという。

文/阿部純子

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