アルコール飲料市場では近年、小規模製造所が造るビールやジンなど個性豊かな酒が人気を集めている。そして新たに注目されているのが、日本酒(清酒)ではないお酒、クラフトサケ(※)だ。酒税法上で日本酒は、「米、米麹、水を原料として発酵させてこしたもの」と定義される。一方、クラフトサケは日本酒の原料にフルーツやハーブなどの副原料を加えて発酵させており、酒としては「その他の醸造酒」に区分される。
クラフトサケが生まれた背景には、清酒製造免許の新規参入の難しさがある。酒蔵から造り手が独立しようにも、新規免許自体が約70年以上も認可されていない。そんな状況でハードルが低い「その他の醸造酒製造免許」を取得し日本酒業界に参入することで〝枠にとらわれないSAKEを造ろう〟という動きが全国へと広がった。
昨年には、全国7蔵が加盟するクラフトサケブリュワリー協会が発足。協会会長であり「稲とアガベ」(秋田県)社長の岡住修兵さんは、クラフトサケの魅力をこう語る。
「フルーツなどを加えることで表現できる、日本酒には出せない酸味や甘味など多様な味わいが魅力です。副原料を生産する農家とのコラボも多く、それらをきっかけに新規客が酒を飲んでくれるので、従来にはなかった新たな出会いがあるのもクラフトサケならでは」
協会は、全都道府県にクラフトサケ醸造所ができることを目指す。また、清酒製造の規制緩和を促進させ、造り手の起業支援も行なっていく予定だ。さらに、特産品を副原料にすることで地方創生の効果も期待できる。〝旅行先で名産のクラフトサケを持ち帰る〟ことが当たり前になる日も近い。
日本酒ライター/唎酒師
関 友美さん
雑誌やウェブを中心に日本酒についての記事執筆を行なう。また、兵庫県にある酒蔵のスタッフとしても日本酒とシードル製造販売に携わる、〝日本酒のなんでも屋〟。
※今回紹介するクラフトサケは、クラフトサケブリュワリー協会が定義したもの。
【クラフトサケ】ボタニカルサケ
日本酒の原料である米、米麹、水にフルーツやハーブや野菜などのボタニカルの副原料を加えて発酵させ、こしたもの。透明な液色が特徴だ。低アルコールのお酒や、ワインや日本酒を思わせる正統派のお酒など個性は様々。福島県の「haccoba」では、ベリーや味噌のほかに昆虫も副原料として採用している。農家と酒蔵の出会いがコラボ酒に直結することも多く、クラフトサケでしか成立しない体験の創出を目指す。
鮮やかな桃色に「あまおう」の香りがふわっと漂う
LIBROM Craft Sake Brewery(福岡)
『STRAWBERRY あまおうとハイビスカス』500ml 2800円
地元・福岡県産の原料を使用した春限定のお酒。ハイビスカスローゼルに含まれるアントシアニンの性質を利用して、天然由来の色素で桜をイメージしたピンク色に仕上げた。
〈Seki’s KIKISAKE〉甘酸っぱい味わいは、まさに最高級イチゴチューハイ! 瓶内2次発酵由来の天然炭酸ガスがシュワシュワして飲みやすい。お酒初心者にも愛されるやさしい味わいです。