過去10年のデータを見ると、海外投資家は例年4月に現物株を大きく買い越す傾向があるという。この傾向は、日経平均株価にどのような影響を与えるのだろうか?
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「海外投資家による日本株売買の季節性」と題したレポートを発表した。レポートの詳細は以下の通り。
海外投資家は4月第2週に1兆円を超える現物株を買い越し、日経平均押し上げの主因となった
新年度入り後の日経平均株価の動きを振り返ると、4月4日に28,287円42銭まで上昇した後、米国景気の減速懸念などを背景に、6日には27,427円66銭の安値をつけた(いずれも取引時間中、以下同じ)。
しかしながら、200日移動平均線に接近するあたりで、いったん底堅さが確認されると、その後は切り返し、25日には28,806円69銭の、年初来の取引時間中の高値を更新している。
日経平均は、4月第2週(10日~14日)に、27,000円台後半から28,000円台半ば付近まで、大きく上昇したが、日本取引所グループのデータによると、海外投資家はこの週、現物株を約1兆495億円買い越し、週間の買い越し額としては約9年半ぶりの大きさに達した。
11日には、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株の追加投資を検討との報道もあり、海外投資家の積極的な買いが、日経平均を押し上げたと推測される。
過去10年の動きを検証すると、海外投資家はとりわけ4月に現物株を大きく買い越す傾向がある
なお、海外投資家による週間の現物株売買状況について、2013年から2022年までの10年間、買い越し額の大きい上位10週を確認したところ、図表1の通りとなった。
これをみると、上位10週のうち、4月が4週を占め、11月と12月がそれぞれ2週を占めていることがわかる。つまり、海外投資家は、とりわけ4月に現物株を大きく買い越す傾向があるように見受けられ、以下、もう少し詳しくみていく。
具体的には、海外投資家による月間の現物株売買状況について、同じく2013年から2022年までの10年間、各年の月別に買い越しか、売り越しかを確認する。
その結果、買い越しが最も多い月は4月で、10年のうち9年、買い越しとなった(図表2)。次に10月が10年のうち8年、11月が10年のうち7年、買い越しとなっており、12月と7月は10年のうち6年、買い越しだった。
日経平均も過去10年4月は上昇しやすい傾向があり海外投資家の動向が影響している可能性
次に、海外投資家の現物株売買状況と、日経平均の騰落率との関係を検証する。2013年から2022年までの10年間、4月の日経平均の騰落率を、海外投資家による4月の現物株売買状況の日付に合わせて計算したところ、10年のうち7年、上昇し、平均上昇率は2.1%となった。
以上より、毎年4月は、海外投資家が現物株を大きく買い越し、日経平均も上昇しやすいという季節性があるように思われる。
なお、海外投資家による5月の現物株売買状況をみると、10年のうち7年、売り越しとなっているが、日経平均の騰落率は、10年のうち6年、上昇し、平均上昇率は1.6%だった。
海外投資家の現物株売買状況が、日経平均に与える影響の度合いについて、5月は4月ほど大きくはないとみられるが、売り越しが日経平均の上昇率を抑制する一因になっているとも考えられる。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい