「デジタルアイデンティティ」と言われても、ピンとくる人は少ないのではないだろうか。メタバースやWeb3、AIといったテクノロジーの進化に踊らされていると見落としてしまいがちだが、それら以上に今後、私たちひとりひとりの生活に関わってくる重要なキーワードなのだ。
日本のデジタル競走力を向上させるカギ
国際経営開発研究所(スイス)が2022年9月28日に発表した世界デジタル競争力ランキング2022によれば、日本は前年より順位を1つ下げた29位、韓国(8位)や台湾(11位)より順位が低く、このままでは日本がデジタル後進国となってしまう懸念がある。
一方、同3位のスウェーデンでは、官民一体でのDXが成功を収めている。例えば、同国では出生と同時に共通番号が付与、「Bank ID」という共通デジタルIDシステムが使われ、公的サービスから銀行決済、通販サイトなどでも利用できる。ネット上での個人証明・認証の共通システム、つまりデジタルアイデンティティのインフラが高い競争力の源というわけだ。国際通貨基金の調査では、生産性を示す2021年の1人当たりの名目GDPは約6.1万米ドルと日本の1.5倍にも上る。逆に日本では、プレーヤーごとに様々なIDが存在している結果、事務コストばかりがかさみ、生産性低下の一因にもなっている。デジタルアイデンティティは日本という国のDXに欠かせないキーワードなのだ。
ID先進国スウェーデンに学ぶデジタルアイデンティティの重要性
Bank ID
2003年にリリースされた個人証明・認証アプリ。国が付与した共通番号(国民ID)を使って、銀行口座や決済アプリと連動し、サービスの利用から支払いまでを、キャッシュレスで一気通貫に利用できる特徴を持つ。
デジタルアイデンティティが国際競争力を生む
取材・文/久我吉史
ビジネスの核心を司る「デジタルアイデンティティ」の指南書
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389106