企業の恒久的繁栄のためには、次世代に適切なタイミングでバトンを引き継ぐことが不可欠だ。しかし、それが叶わず、後継者不在のために倒産の憂き目に遭う「後継者難倒産」が昨今、後を絶たない。
帝国データバンクはこのほど、2022年度の「後継者難倒産」動向について調査・分析を行い、その結果を発表した。
なお本稿において「後継者難倒産」とは、「法的整理(倒産)となった企業のうち、後継者不在のため事業継続の見込みが立たなくなったことが要因となった倒産」と定義する。
「後継者難倒産」2022年度は487件、年度ベースで過去最多を更新
2022年度の後継者不在による「後継者難倒産」は、前年度を2.3%上回る487件発生し、2年連続で増加した。また、これまで過去最多だった19年度(479件)を上回り、最多を更新した。
月次ベースでも2022年10月に過去最多の56件を記録するなど、倒産発生ペースは年間を通じて高止まりで推移した。
なかでも、コロナ禍以降「代表者の病気・死亡」が直接の原因となった後継者難倒産のケースが目立った。2022年度の倒産487件のうち、代表者の病気または死亡により、事業が立ち行かなくなり倒産に至ったケースは233件で、全体の47.8%を占めた。
集計開始以降、主因別で最も多かったのは長らく「販売不振」で、厳しい経営状況が続き、後継者が事業を継ぐことをためらい倒産に至った事例が多く見られた。
しかし、2021年度には「代表者の病気・死亡」が初めてトップとなり、2022年度まで2年連続で最多となった。後継者の有無や業績にかかわらず、後継者の選定・育成ができない代表者が活動できなくなるといった「不測の事態」に対応しきれず倒産となった企業が増加している。
一方で、後継者がいたにもかかわらず、コロナ禍における事業の先行きを鑑みて、業績改善が期待できないなどの理由で「先んじて」事業継続をあきらめたケースも散見された。
2022年度の後継者難倒産を業種別にみると、「建設業」が119件と最多となり、全体の24.4%を占めた。建設業は2年連続で100件を超え、突出している。
以下、小売業(89件)、製造業(87件)、サービス業(80件)、卸売業(73件)が続き、上位5業種で全体の92%を占めた。
負債規模別にみると、負債「5000万円未満」が約半数を占めたほか、負債5億円未満が全体の96.3%を占めるなど、小規模零細規模の倒産が目立った。
近づく「2025年問題」 高齢代表の後継者難倒産で増加懸念
従前から続く中小企業の後継者難に対して、公的機関や金融機関、民間企業などによる多種多様な事業承継メニューが整いつつある。そうしたなか、帝国データバンクが算出した2022年の「後継者不在率」は57.2%と調査開始後初めて60%を割り、5年連続で低下した。
一方で、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が目前に迫るなか、代表者が70歳台の後継者不在率は約3割に達する。
事業承継の準備には一般的に約5~10年程度の期間を要するとされ、この間に代表者の病気・死亡により後継者育成に支障をきたしたり、後継者がいたとしてもコロナ禍で業績改善が見込めず事業継続を断念するといったリスクが存在している。
代表が高齢で後継者がいない、円滑な事業承継が進まない企業を中心に、後継者難倒産が今後も発生する可能性が高い。
<調査概要>
集計期間:2022年4月1日~23年3月31日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:帝国データバンク
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい