事業承継の主な3タイプと「社長に向いてる」チェックリスト
戸村先生 少し解説を加えると、具体的に事業承継の主な3タイプとしては、以下のようなものがあります。
① 親族内承継: 文字通り、家族・親族の中で、後継社長にバトンタッチする形態。
② 従業員承継: MBO(Management Buy Out)といわれたりしますが、自社の内情をよく知る社内の人材に後継社長をバトンタッチする形態。
③ 第三者承継: M&Aとしてニュースで聞くことがあるかと思われますが、第三者に買収・合併により事業を継続的にバトンタッチしたり、社外の人材に後継社長としてバトンタッチしたりする形態。
よく昔から変革を導ける者として、「よそ者」「若者」「バカ者(過去の価値観や固定観念や古くてムダな謎ルールからすれば、バカなことをすると勝手にみなされるものの、それこそが優秀な次世代型リーダー)」が適する(かも?)と言われたりします。
その点で、@DIMEの主な読者層でもある若手・一般職の方々は、③の第三者承継で「よそ者」であり「若者」であり「固定観念にとらわれない優秀な逸脱者」としての素質を、自然に備えています。
若手・一般職の方々が、あるがままの状態で「これって、こうすればいいんじゃねぇ?」と感じること(これが意外と良い問題提起・改善策につながり得る)を、そのままストレートに社長として改めていくことで、社会にも既存の従業員さんにも求められる救世主となり得ることも少なくありません。
それに、旧態依然とした自社内で管理職経験を積むよりも、副業であれ独立であれ、管理職を超える社長やオーナーの経験を積む方が、はるかに自己成長・自己啓発・人材育成の面で役立ちます。物事を経営者目線でごく自然に皮膚感覚でとらえることができて、社内研修を100回受けるよりも、一度、実際に社長・オーナーになってみる方が良いのです。
また、経営者やオーナーとなり、マネジメントや部下育成にも関わることで、仕事や職場のあらゆることを、我が身のこととしてとらえやすくなります。人間的にも成長しやすいのです。
その意味では、1)日本の社会的な問題である後継者不足・成り手不足・中小企業の事業継続といった問題の解消の点でも、2)経営視点で物事に見て自律的に動ける人材を育てるという点からも、各企業が積極的に副業で役職員を社長・オーナーになってみるよう働きかけても良いと、私は思ったりしています。
なぜ若手・一般職ほど後継社長・後継オーナーに適するのか?
――そうはいっても、自分に社長が務まるのかと思ってしまいます。
戸村先生 自然な反応というかよくある感想だと思います。逆に、その感覚を今の社長・オーナー・役員が懐疑心としてしっかり持っていれば、その方々の企業は、もっと良くなるのではないかと思ったりするくらいです。(※「懐疑心」の戸村版の整理:自分も相手もこのやり方・あり方で妥当なのかと、いろんな角度から人権・多様性を尊重し公平な受け入れあいの観点からも見つめ直す物事の接し方のこと)
多くの経営者から「戸村さん、ウチの会社はどうすれば良くなるでしょうか?」と尋ねられた時、幾度となく、「簡単です。今いる社長・役員がみんな辞めて若手にバトンタッチすれば、あっという間におたくの会社は良くなりますよ!」と言いたい衝動にかられたりしてきました(本当にそう申し上げたケースもありました)。
若手・一般職の方々などが、「私に務まるかなぁ?できるかなぁ?」としり込みする前に、以下の①~⑮の戸村版「あなたこそ社長に向いてるかもチェックリスト」(簡易版)で、副業であれ独立であれ、社長やオーナーとしての向き不向きの自己チェックをしてみてもらえればと思います。
【戸村版「あなたこそ社長に向いてるかもチェックリスト」(簡易版:15問)】
次の問いに「そう思う」・「はい」の方はマルを、納得できず反論して今の状況を進んで肯定したい方はバツをつけてみて下さい。
問い |
問いの文章 |
〇 or × |
1 |
新規事業をやれ、多様性を発揮しろ、若手の感性を活かせ、というわりに、旧来からの価値観や評価制度や社風で縛り、「鵜飼の鵜」にすらまともに漁をさせないような、ダメ出し減点型評価や古びた伝統の守旧に徹する会社はイヤだ。 |
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2 |
ウチの社内ベンチャー制度や新規事業は、会社が防波堤となってあなたを守ってくれるというより、会社に都合のよい枠にはめた中で、経営陣にとって都合よく儲けをすいあげる仕組みになっている。 |
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3 |
副業で小遣い稼ぎにしかならない程度のことや、負担の大きいゼロからの起業より、いっそ、譲渡額0円~数十万円で個人でも会社・事業を買える事業承継で、会社や個人事業を買ってしまう方が早いかもしれない。 |
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4 |
どうせ一度きりの人生なら、雇われるだけの立場だけでなく、気軽に社長やオーナーなどの雇う立場になってみてもいいかもしれない。 |
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5 |
あなたの会社の社長や役員は、部下に対して偉そうにせず、あなたがリスクをとってチャレンジして失敗した時に、怒らずにあなたに代わって謝りに行ってくれますか?社長や役員の肩書は、若手のフォローにこそ役立つ(謝られる側としては、えらい役職の人がおわびにくれば矛を収めやすく、若手が心配せずどんどん新たな取り組みを進められるよう後押しやフォローを、身を切ってでもやることに意味がある)と思いませんか? |
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6 |
社長や役員がいわゆる「働かないおじさん化」していませんか?辞めてゼロから起業して事業を成長させる実力のない社長や役員は、これからの多様で多難な時代に、あなたの会社の舵取りを積極的に任せたいとは思えない。 |
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7 |
役職定年で部課長を辞めさせて若返りを求めるより、社長・役員がバトンタッチして若返った方がうまくいくと思いませんか? |
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8 |
部下にリスキリングを押し付けるより、社内ベンチャー制度などで、若手よりも現職の社長・役員が役職を離れて社内でベンチャー起業をして、改めて主体的にゼロからリスキリングも対応しながら、社長になりなおすべきだと思いませんか? |
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9 |
産業構造や収益源なども激変する中、社長・役員が若返り、元・社長や元・役員は経験や人脈を生かして社内ベンチャーで役職を自ら作り出した方が、会社に活気ややる気が出ると思いませんか? |
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10 |
リスキリングでマイナスを埋めてからプラスに向かうより、DXネイティブな人が社長をやった方が手っ取り早いと思いませんか? |
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11 |
出社とリモートワークの両方があって、あなたが自由にその配分を決めることができても良いと思いませんか?ムダな謎ルールや古くからの習慣はスッパリ改めて、もっと効率的にコスパ(コスト・パフォーマンス)もタイパ(タイム・パフォーマンス)も、また、あなたの給料・報酬も良くすればいいと思いませんか? |
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12 |
ウチの会社の会議や職場のやり方は、ムダが多すぎて付加価値を生みにくいと思う。 |
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13 |
現職の社長やオーナーが抱く過去の成功体験や実力があった時の記憶と、今の実力とは必ずしも等しいとは限らない。 |
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14 |
過去の成功体験や経験が通用しないようになってきていると思いませんか?(運動会でPTA参加のリレーで足がもつれてこけるお父さんは、昔の速く走れた実力があった時の記憶のまま走り、今の実力にあってないからこけるのではないかと思ったりしませんか?) |
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15 |
時代や社会状況に合わないこだわりやしきたりなんか、いっそ、あなたの手で改めてしまえばいいと思いませんか? |
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<戸村版「診断結果」>
11個~15個〇がついた方:あなたこそ、即戦力で社長・役員として活躍して欲しいし、これから社会からも求められて活躍していける人材かも。
6個~10個〇がついた方:あなたは慎重さと隠れた意欲にあふれる存在かも。様子見というと賢そうな判断に見えて、実は、賞味期限ギリギリになるまで腐りかけるのを待ってから、商品を買うはめにならないように注意が必要かも。
1~5個〇がついた方:いわゆる「社畜」注意報発令中!世界はもっと広いし、あなたの良さを活かせる道は知らないだけでいっぱいあるかも。まずは副業で他の世界を見たり、社長やオーナーにならなくても転職エージェントに登録してみたりしても良いかも。
〇が1つもつかなかった方:いわゆる「古き良き時代」や昭和の時代の勇者にぴったりなあなたは、忖度という盾と根性論という矛で、縦横無尽に活躍できるのかもしれません。ただ、新たな法令や社会通念を知っておくと良いかも。パワハラ・黙認・隠ぺい・リストラなどには要注意かも。
チェック診断はいかがでしたか?激変する経営環境で、多様性の尊重と公平な受け入れあい(戸村的な整理によるダイバーシティ, エクイティ&インクルージョンーDEI、または、DE&I―)の観点や、働き方改革・DX・ニューノーマル等の観点から、少しでもヒントになれば幸いです。