「牛肉は高いから最近はいつも鶏肉」「節約疲れた。たまには贅沢したい」…連日、消費者たちの悲痛なSNS投稿が続いている。食肉の選択肢は比較的安価な鶏肉や豚肉に注目が集まっている中、特に鶏肉の中でも鶏むね肉は最も安価な傾向があり、注目されている。そこで今回は、節約疲れのなか、少しでも美味しいプチ贅沢となる鶏肉を選ぶ方法や美味しく食べる方法を探った。
鶏むね肉へのニーズが高まる一方でプチ贅沢志向も
総務省の「家計調査」では、近年、食肉の購入数量はコロナ禍の内食需要から好調に推移していることがわかっている。
2019年と比べてコロナ禍となった2020年は牛肉、豚肉、鶏肉いずれも大きく購入数量が伸びた。なかでも鶏肉が最も伸び幅が大きく11.5%増に。2021年は前年より落ちたもの2019年と比べれば9.5%増である。
最近では値上げラッシュで家計が苦しい状況だが、牛肉の高騰も手伝って、比較的安価な鶏肉に注目が高まっている。SNSをはじめとしたネット上を見渡してみると、特に安価な鶏むね肉はいま、食肉の中で人気を博しているようだ。
一方で、鶏肉ばかりを選ぶ日々に、不満も出てきている。SNSでは節約疲れの声がある。牛肉と比べれば鶏むね肉は質素。プチ贅沢をしたいニーズもあるようだ。
鶏肉の種類別の違い
今人気の鶏肉。プチ贅沢を見つけるためにも、改めて種類を確認しておこう。
食鳥産業における生産・流通の改善、および消費の普及増進のために活動する一般社団法人 日本食鳥協会の担当者に尋ねたところ、鶏肉は大きくブロイラー、銘柄鶏、地鶏の3種類に分けられるという。
●ブロイラー
一般鶏といわれ、50日前後で育てた肉用鶏の鳥のこと。市販のほとんどがこのブロイラーだ。
●銘柄鶏
銘柄鶏は、地鶏に比べ、増体に優れた肉用鶏といわれる鳥。飼料や環境など工夫を加えて飼育されたことにより、一般的なブロイラーよりも味や風味など改良している。JAS(日本農林規格)による定義はなく、ブロイラーと同じ種類の「若どり系」と赤鶏の両親を持つ「赤系」に分類される。
●地鶏
地鶏肉の日本農林規格(通称 地鶏肉JAS:平成11年6月施行、平成27年8月改正)に基づき飼育された鳥のこと。
日本の全国食鳥出荷羽数構成比(平成23年)※によれば、若どり54%、銘柄鶏(若どり系)43%、銘柄鶏(赤系)2%、地鶏1%の割合となっている。ほぼ若どり系で占められていることがわかる。
※【出典】農林水産省食鳥流通統計調査及び同協会発行「国産銘柄鳥ガイドマップ」より概算
値段で言えば、ブロイラー、銘柄鶏、地鶏の順に高くなる。
銘柄鶏の例
担当者によれば、「銘柄鶏は一般ブロイラーの飼育方法と違った方法を取っているので、一般ブロイラーと比べて価格は割高となる傾向があります」とのこと。
鶏肉の3つの種類のうち、地鶏より値段が低いもののブロイラーと比べると少し高額となる銘柄鶏は、プチ贅沢に適しているといえる。
銘柄鶏は日々生まれており、日本全国、北から南まで実に数百種類にも上るといわれる。北海道の中札内産雪どりや岩手県の南部どり、京都府のあじわい丹波鶏、鳥取県の大山どり、福岡県の華味鳥(はなみどり)などは有名で、一度は耳にしたことがあるだろう。
最近ではこんな新感覚の銘柄鶏が食べられる商品が提供されている。
1. 宮城県産「森林どり」
宮城県の森林どりは、「森林のエキス」という鶏自身の健康保持、病気の予防などに貢献するエキスを配合した餌で育てられており、他の鶏肉に比べて旨みの強さや、加熱しても保水力が高くジューシーさを感じられるという。食肉科学技術研究所で行った森林どりと他社ブロイラーとの比較試験の結果、森林どりは他社ブロイラーに比べて旨みが強く、ジューシーであるとの結果が数値として出ているそうだ。
2.福岡県産「はかた一番どり」を使った醤油ラーメン
2023年1月に発売されたアンクスの「博多とり醤油ラーメン」は、福岡産銘柄鶏「はかた一番どり」をスープに使用したもの。一般的な鶏肉に比べ、旨味成分が約15%多いのが特徴という。在来種の地鶏「さざなみ」と、雌系統ブロイラーにも使われている「ホワイトプリマスロック」を交配させて誕生したそうで、地鶏ならではの上質な旨味と、若鶏ならではの食べやすさが特徴だそうだ。
3.九州産「華味鳥」を使ったチキンバーガー
写真左「チキンデミカツバーガー」、写真右「チキン南蛮バーガー」
ハンバーガーチェーンのフレッシュネスバーガーでは、九州産の銘柄鶏「華味鳥」のむね肉を使用した「チキンデミカツバーガー」と「チキン南蛮バーガー」を販売している。華味鳥は、自然の姿に近いストレスの少ない開放鶏舎で、専用の飼料を与えて健康的に育てた銘柄鶏という。同バーガーは、ムネ肉を特別製法でふんわり・しっとりと仕上げている。
銘柄鶏は、時にはプチ贅沢として楽しむには十分といえそうだ。