四方を海に囲まれた日本。その貿易の多くは、コンテナや石油、鉄鉱石などを運ぶ大型貨物船によって支えられています。一方、目立たないものの、日本の通信を支えているのが海底ケーブルの敷設・修理を担う船であり、定点保持技術が重要な鍵になっています。
国際通信の99%以上が海底ケーブルに依存
KDDIによると、日本の国際通信は1871年に長崎と上海・ウラジオストックを繋ぐ長距離海底電信ケーブルを敷設したことで始まりました。その後、長波や短波を利用した無線通信や衛星通信の時代に移行したものの、光ファイバを使用した海底ケーブルが発展したことで、現在の国際通信の99%以上が光海底ケーブルでまかなわれています。
写真提供:国際ケーブル・シップ株式会社
つまり、世界中の海の底にはケーブルが敷かれているわけで、総延長は約120万km(地球30周分)にも達します。パソコンやスマホで世界中の情報が瞬時に入ってくるのも、海外のオリンピック映像をリアルタイムで鮮明に観ることができるのも、海底ケーブルが繋がっているおかげなのです。
写真提供:国際ケーブル・シップ株式会社
定点保持する仕組み
海底ケーブルの敷設には、作業を安全かつ確実に行なうための専用船が使われ、タンカーやコンテナ船などにない、特別な性能が求められます。それは同じ位置に留まり続けるための「自動船位保持装置(ダイナミックポジショニングシステム=以下、DP)」と呼ばれるもので、あらかじめ設定された場所で定点保持、または設定された航路・速力で自動航行する装置です。
それを可能にするため、一般的な船舶の推進器であるプロペラと舵のほか、船体の左右を貫通するトンネルスラスター、船首や船尾には360度回転するアジマススラスターなどが装備され、全方向への微妙な調整を可能にしています。
現場ではGPSをはじめ、無線電波やレーザー、音響、陸上の測位システムから位置情報を取得し、コンピュータが風や潮流などの外力によるズレを計算。それを相殺するために必要な推力を計算し、スラスターなどを動かします。