どのようなリスクを想定している?
メタバースの活用シーンは多岐に渡るため、想定されるリスクも非常に幅広い。同社が想定している主なリスクとしては以下のとおり。
・ハッキングなどのサイバー攻撃、
・アカウントの乗っ取りやなりすましによるアバターの不正利用
・アバターを介したセクハラやパワハラ・詐欺行為
・システムダウンなどによるイベントの中止
・暗号資産やNFTの盗難
この中で同社が足元で顕在化すると想定したのが、サイバー攻撃やシステムトラブルによるイベントの中止あるいは、暗号資産やNFTの利用者の詐欺被害などだという。
「またメタバースには国境の概念がありません。世界中の誰もが利用可能なメタバースにおいては、知らず知らずのうちに法を犯し、突然海外の利用者から訴えられる、といったリスクも想定されます。メタバースはまだまだ発展途上であり、これらのリスクがいつどんなタイミングで顕在化するかは誰にも分からないため、普及の動向をしっかりと注視していく必要があると考えています」(あいおいニッセイ同和損保)
どんなケースで補償される?
現段階で保険がカバーしている具体的な補償としては、主に以下の3つ。
①サイバー攻撃によって事業者が持つ利用者の個人情報漏えいなどが発生した場合において、事業者が負う損害賠償費用などを補償
②システムダウンなどによりイベントが中止となった際、改めて開催するための費用や、チケットの払い戻しなどにかかる費用を補償
③万一、利用者の方がメタバース上で暗号資産やNFTの詐欺被害に遭った際、利用者に代わってメタバース運営事業者が詐欺の原因調査を実施する際の費用を補償
どれくらいの額が補償される?
保険料や保険金額については、メタバース空間や事業者の規模によって異なるが、一例をあげてもらった。例えば、メタバース運営事業者が参加者3,000人規模のイベントを主催し、サイバー攻撃による損害を2,000万円、イベント中止によって生じた延期費用などを1,000万円の上限で補償する場合、保険料は約90万円となるとのこと。
「メタバースを利用するにあたり、不安を感じる方もいらっしゃると思います。例えば、自分の個人情報の管理や、イベント中にトラブルが発生したらどうなるのか、などの不安があげられます。そんなときに運営側がしっかりとした保険に加入していれば、万一の際にも十分な補償が受けられるので、安心してご利用いただくことが可能になります。これからは、安心な環境かどうかという点も利用者がメタバースを選択する重要な基準になっていくと考えています」(あいおいニッセイ同和損保)
取材・文/桑原恵美子
取材協力/あいおいニッセイ同和損害保険株式会社