人工甘味料が心臓病のリスクを高める可能性
加工食品に使用されているエリスリトールという人工甘味料が、心臓発作や脳卒中のリスクを高めていることを示唆する研究結果が報告された。
エリスリトールは、野菜や果物にも含まれている天然の糖アルコールで、体内でも少量産生されているが、加工食品にはそれらよりもはるか高用量が添加されていて、摂取により血栓症のリスクが上昇する可能性があるという。
米クリーブランドクリニック、ラーナー研究所のStanley Hazen氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Medicine」に2023年2月27日掲載された。
Hazen氏は、「特に心血管疾患のリスクの高い人は、食品のラベルをチェックしてエリスリトールの含まれているものを避けるべきかもしれない」と話している。
Hazen氏らの研究からは、血液中のエリスリトール濃度が高い人と低い人の比較で、心臓発作や脳卒中のリスクに最大2倍の差がある可能性が示された。
ただし、ほかの専門家からは、「エリスリトールを潜在的に有害であると見なす前に、より多くの研究が必要である」と懐疑的な声が上がっている。
例えば、米国心臓病学会(ACC)の栄養や生活習慣に関するワーキンググループを統括しているKaren Aspry氏は、「現時点では、少量のエリスリトールを使用することが問題になるとは考えていない」と述べている。
エリスリトールは砂糖の約70%の甘さのある甘味物質で、商業的にはとうもろこしを発酵させることで生産されている。業界団体によると、エリスリトールは過去30年以上にわたって生産されてきており、50カ国以上で使用されているという。
「エリスリトールは、いくつかの人工甘味料の中で最も急速に成長してきたものの一つで、人の体内でも産生されている。ただしその量は人工甘味料として摂取される量の1,000分の1から100万分の1程度と少ない」とHazen氏は解説する。
血栓症リスクを高める?
Hazen氏らは、心疾患のリスク評価を受けた1,157人のデータを用いた解析から、エリスリトールの血中濃度が、向こう3年間の主要心血管イベント〔致死性/非致死性の心筋梗塞または脳卒中および死亡(MACE)〕のリスクと関連のあることを見いだした。
「われわれは当初、人工甘味料を研究するとの意図は全くなく、MACEリスクとの関連のある血中の化学物質の探索が研究目的だった。結果的にエリスリトールが特定された」とHazen氏は語っている。
研究グループでは続いて、米国(2,149人)と欧州(833人)で実施されたほかの研究のデータを用いた解析を実施。
米国の研究では、エリスリトールの血中濃度の第1四分位群(下位25%)に比べて第4四分位群(上位25%)のMACEリスクが80%高く〔調整ハザード比(aHR)1.80(95%信頼区間1.18~2.77)〕、欧州の研究では同様の解析で2倍以上の差が示された〔aHR2.21(同1.20~4.07)〕。
続いて行った動物実験でも、エリスリトール投与によって用量依存的に血栓症リスクが上昇することを確認。
さらに、30gのエリスリトールの水溶液を8人の健康なボランティアに摂取してもらうという小規模な研究から、摂取後の数日間は潜在的に血栓リスクが高い状態になることが確認された。
Hazen氏によるとこの30gという用量は、人々が摂取している上限量として報告されている量だという。
ただし、これらの研究はエリスリトールと血栓症リスクとの因果関係の証明には不十分だとする指摘もある。
ほかの食事の影響が関与している?
そのような意見の一つは、エリスリトール以外の食事の影響が考慮されていないという指摘だ。また、観察研究のデータに関しては、因果の逆転の可能性も指摘されている。
つまり、血栓症のリスクが高いと指摘されている人は、体重を減らすために砂糖を控えて、代わりにエリスリトールを含む食品を食べているのかもしれないということだ。
米国心臓協会(AHA)の栄養委員会のメンバーの1人で、米ロードアイランド大学のMaya Vadiveloo氏も、「心血管イベントのリスク評価に関する研究の参加者は、そのリスクが高い人が多い」と話す。
同氏はまた、「エリスリトールが多く使われているような加工食品には、エリスリトール以外にも心臓に良くない成分が多く含まれている可能性がある。よってわれわれは、以前から加工食品の摂取を控えるようにアドバイスしている」と付け加えている。(HealthDay News 2023年2月27日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41591-023-02223-9
構成/DIME編集部