■連載/あるあるビジネス処方箋
部下をけなして”カッコつけた上司”になっていないか?
今回と次回はクリエイターの目を通して会社や上司と部下の関係を考えたい。今回は、エッジの効いた作品を次々と作り出すクリエイターの坂本嘉種さんに取材を試みた。坂本さんは、クリエイターの武笠太郎さんと2人で2004年に「有限会社ザリガニワークス」を設立した。
2人は、多摩美術大学在学中は先輩・後輩の間柄。ともに音楽サークルのメンバー。卒業後は坂本さんがゲームメーカーのキャラクターデザイン職、武笠さんが玩具メーカーの企画・デザイン職をしていた。
ザリガニワークスを設立以降、シリーズで300万個以上売れた「土下座ストラップ」をはじめ、「コレジャナイロボ」や「自爆ボタン」など玩具の企画開発やデザインを中心に活躍。「ごはんかいじゅうパップ」「弾神オドロッカー」「石膏ボーイズ」などの番組企画、キャラクターデザイン、さらには作詞作曲、ストーリー執筆までを手掛ける。
坂本さんは、デザイン担当。各種デザイン、イラストを中心に、ライティングワークにも携わる。コレジャナイロボ主題歌「IT IS NOT THIS! コレジャナイロボ!」の作詞・作曲担当。
Q 会社員の頃を振り返り、上司や同僚との関係はいかがでしたか?
坂本:私は会社員の頃、ゲームの開発の部署にいました。パワハラとか、いじめもなかったように思います。仕事が多くて、そんな余裕がありませんでした。大きな魚をみんなで釣るようなテンションの日々です。チームワークは、よかったですよ。
おもしろい人が多いし、くせのある人もいます。気難しい人もいたかもしれません。仕事ができる人もいるし、できない人もいました。上司はそれぞれの部下のことをきちんと考えて、仕事を与えていたように思います。仕事ができない部下にも、相性のいい仕事をうまくまかせていましたね。
管理職は、社内では強者なのですから……。少なくとも、部下よりは。ある程度の権限を与えられているのでしょう? それを生かして、何かができるはずですよ。
Q.ご自身は、上司の立場になったことはありますか?
坂本:私も一時期、グループのリーダーをしていました。自分のアイデアにこだわり、押し付けることはしないようにしていました。みんなで目指す結果だけは共有します。個性的な人が多かったので、そのほうがよかったと思います。
私も部下として上司と仕事のやり方などをめぐり、ずいぶんと話し合いをさせてもらいました。互いに言いたいことを言って、ギャーギャーとやるときもあったように思います。大切ですよ。こういう意思疎通は……。
部下をけなす上司は、そんなコミュニケーションをあきらめてしまった管理職なのかもしれませんね。そもそも、部下とトコトン話し合ったのでしょうか? それでも、部下が仕事ができないならば、上司としてどのあたりの指導がいけないのか、とさらに深く考えたのでしょうか……。
部下が使えなかったとしても、上司も会社も実際のところは、さほど困らないでしょう。管理職は部下を否定するよりも、するべきことがたくさんあるような気がしますね。部下のことを嘆く上司がいるならば、こんなことを言いたくなります。それはあなた自身の問題じゃない?管理職は部下を上手く使って育てるのも仕事なのですから。それを忘れていないでしょうか……。
その意味ではサボっているのかもしれないし、自分のことが見えなくなっているのかもしれませんね。部下を否定することで、気持ちがよくなっているようにも思います。他人がバカゆえに理解がないと考えることは、管理職のような仕事のストレスに耐えるのには効果がありますね。辛い反面、気持ちもよいのです。
そんな自分の姿に気がつくと、三枚目(滑稽な人)になってしまうから、本人はそれに気づく必要がない。だから気づかない。部下をけなして、気づかずにその人なりの2枚目、つまり、「カッコいい上司」をやっているのかもしれません。