スタートアップの存在感が高まっているものの直接接点がない人にとっては実感が湧きにくいかもしれない。ここでは投資の観点からビジネスパーソンにとっての重要性を語る。
投資するなら財務のプロであるCFOに注目
上場間近のスタートアップをリサーチし、上場後に投資して利益を狙う人も多い。グロービス・キャピタル・パートナーズのシニア・アソシエイト磯田将太さんに、投資先として有望なスタートアップの見極め方について話を聞いた。
「個人投資家が見るべきは『カテゴリーキラー』と『CEO、CFOの存在』です。『カテゴリーキラー』とは、各分野で競合他社に圧倒的に差をつける企業を意味します。機関投資家も注目するため、市場でも根強い人気を持ちます」
その企業を探し出したら、次なるポイントはCEOとCFO。
「会社の顔であるCEOは、上場後に他社の社長たちと渡り合える器か。財務のプロであるCFOは、機関投資家とやり合える人材か。メディア向けのインタビューなどもいいですが、セミナーやイベントなどでリアルに対峙し、肌感覚でつかむのもおすすめですね」
業界特化型SaaSに注目
「SaaSは年々市場が拡大し、成長が読みやすい」と磯田さん。注目するのは、建設業のプロジェクト管理サービス「アンドパッド」など業界特化型SaaS。
教えてくれた人
グロービス・キャピタル・パートナーズ シニア・アソシエイト
磯田将太さん
あずさ監査法人にて公認会計士として多業種のIPO準備支援業務などに従事し、現職。
「転職するなら大企業よりスタートアップ」が潮流に
従来は、ハードワークでブラックな労働環境とのイメージが強かったスタートアップ。でも、「その印象はもはや過去のもの」と語るのは、総合人材サービス大手エン・ジャパンで若手ハイキャリア向け転職サイト「AMBI」と30~50代向け転職サイト「ミドルの転職」の責任者を務める峯崎直哉さんだ。
「一昔前は、スタートアップ企業の労働環境といえば長時間勤務が当たり前で給与も低く、6畳1間に泊まり込んで作業する企業もザラでした。でも、2012年頃から、労働時間、年収、働く環境などのスタートアップを取り巻く状況は、大きく改善しています」
その最大の要因は、IT化が進み、効率化が進んだこと。
「以前は『手足を動かしてなんぼ』との風潮もありましたが、今は大企業よりスタートアップのほうがデジタル化も進み、効率も格段に上がっています。また、IT化でエンジニアをはじめ優秀な人材の確保は、各企業にとって急務。その対策として大手並みの給与を提示する会社も増えていますね。そのほか、自社のストックオプションを渡すことで、優秀な人材を確保する企業も少なくありません」
これら企業側の事情に加え、転職希望者が求める条件の変化も、スタートアップ人気を後押しする。
「若い人を中心に、企業の名前や規模感より、『自分自身がどう成長できるか』『事業を通じて社会にどんな価値を提供できるか』という目線で会社を選ぶ傾向が高まっています。結果、『大企業で働くよりも、スタートアップで働くか、起業するほうがかっこいい』と考える人が増えています。今後も、この流れは加速していくはずです」
この十数年で大きく変化したスタートアップ。転職先として、ますます選択肢が広がりそうだ。
若手ハイキャリア層向け転職サイト「AMBI」調査
転職サイト「AMBI」では、スタートアップへの転職者が年々増加。一昨年同サイトを利用した転職者の21.4%が、スタートアップを選択した。
教えてくれた人
エン・ジャパン「AMBI」「ミドルの転職」事業責任者
峯崎直哉さん
新卒でエン・ジャパンに入社後、転職サイト「AMBI」「ミドルの転職」の責任者に就任。年間1000社以上の採用支援に携わる
取材・文/藤村はるな
DIME最新号の特集は「最強のスタートアップ100」「家電の未来予報」、特別付録は自転車&バイク用スマホホルダー
日本におけるスタートアップが変革期を迎えつつある。メルカリ、ビズリーチ、ラクスル、BASEなど、急成長を遂げたこれらの企業に続くのはどこか。投資を目的に、協業を念頭に、転職先探しに、各分野で注目される企業など最前線を紹介する。