スタートアップとの協業が大企業が生き残るカギに
昨今、スタートアップ周辺で注目されるのが、大企業との〝協業〟だ。大企業とスタートアップのマッチングを行なうアジア最大級のイベント・ILSを運営する松谷卓也さんは「年々協業の需要は高まっている」と言葉を続ける。
「ILSも毎年参加企業が増えており、昨年度は大手企業が100社以上参加し、3000件以上の商談が行なわれました」
協業が広がる最大の理由は、トヨタやNTTといった業界最大手をはじめ、オープンイノベーションに積極的な大企業が増えたこと。
「例えば自動車にしても、急成長するテスラ、開発を進めるAmazonやGoogleなど、旧来メーカーだけでなく、GAFAMのようなビッグテックなどが大手企業のライバルとして出現。大手企業にも外部の革新的技術を取り入れて開発を進めないと生き残れないという危機感が漂っています」
スタートアップとともにいかに先鋭的な新製品を生み出せるかが、大企業の命運を分けるカギなのだ。
ILSでは事前に興味分野や得意分野など互いの情報を交換し、マッチングを行なう。大手がスタートアップの技術に資金提供をして、両社単独では開発できなかった革新的な製品やサービスが生み出されている。
教えてくれた人
プロジェクトニッポン代表取締役社長
松谷卓也さん
リクルート退社後、同社を設立。2014年からマッチングイベント「イノベーションリーダーズサミット(ILS)」を運営。
【実例】商船三井×メトロウェザー
商船三井が実証する運航時に温室効果ガスを排出しない次世代燃料船に、京都大学発のスタートアップ・メトロウェザーの風の動きを可視化し予測するシステムを搭載。世界初の船上風況計測装置を開発。
ILS公式サイト参照 画像/商船三井公式YouTubeチャンネルより
【実例】東洋製罐グループホールディングス×おいしい健康
飲料容器製造の業界最大手、東洋製罐が食事支援アプリ・おいしい健康と資本業務提携。醤油の量を抑制するため、数字の〝くぼみ〟を施した豆腐容器などを開発。「2」は2㏄で、醤油の量を見える化。
ILS公式サイト参照
大手からの出向も増加
大企業の社員がスタートアップにレンタル移籍(出向)するサービスが注目を集めている。「スタートアップの働き方に刺激を受けたい」と大手企業60社以上が導入。同サービスを展開するローンディール代表の原田未来さんに聞いた。
「大手企業では新事業など変化を起こせる人材の育成が課題となっています。スタートアップに移籍することで、ゼロから立ち上げる事業開発プロセスや自律的な働き方を学べます。これにより価値観や仕事のやり方、モチベーションなどが一変し、戻ってからも高い成果を上げる方が多いです」
ローンディール 代表取締役社長
原田未来さん
2015年、大企業からスタートアップへのレンタル移籍を支援するLoan DEAL設立。600社以上が登録。累計200人以上が移籍を経験。
取材・文/藤村はるな
DIME4月号の特集は「最強のスタートアップ100」「家電の未来予報」、特別付録は自転車&バイク用スマホホルダー
日本におけるスタートアップが変革期を迎えつつある。メルカリ、ビズリーチ、ラクスル、BASEなど、急成長を遂げたこれらの企業に続くのはどこか。投資を目的に、協業を念頭に、転職先探しに、各分野で注目される企業など最前線を紹介する。