DIME MAGAZINE
■連載／阿部純子のトレンド探検隊
ふるさと納税の新しい形「旅先納税」とは
2008年（平成20年）にスタートした「ふるさと納税」は、寄付先を自ら自治体の中から選択でき、自己負担額2000円を除いた全額が控除の対象となる制度。
総務省では、納税したものがどのような使われ方をするのか納税者が考えるきっかけを作る、出身地としての故郷のみならず、応援したい地域の力になる、自治体間の競争が進み地域のあり方を考えるきっかけになる、これらをふるさと納税の意義としている。
初年度は寄附額が81億円だったが、年々増加し前年統計では8300億円と100倍近い規模に成長している。ふるさと納税の受け入れ額上位10団体を見ると、畜産・海産・農産物といった第一次産業で特色のある自治体に人気が集中しており、地域を応援するというよりも、返礼品で選ぶ“通販化”状態を疑問視する見方もある。
しかし実際には、ふるさと納税の対象者約5950万人のうち、納税した人の数は前年度で741万人と、12％程度しか利用していないのが現状だ。
ふるさと納税本来の目的である地域を応援し、利用者をさらに増やすことを目指したふるさと納税の新しい形が、ギフティの「旅先納税」。地域を訪れた際に、その街に共感したらすぐに寄付ができて、さらに街で楽しめるサービスを提供することで新しい地方創生に寄与する。
2019年11月にローンチしたサービスだったが、2か月後には新型コロナが発生し、コロナ禍ではアプローチできない状況が続いた。昨年5月以降、コロナで苦しんだ各業種にポジティブな取り組みをしていきたいと各地の自治体が参画、今年3月9日現在で26自治体に増えている。
「旅先納税は、地域で利用可能な価値を電子化し発行する弊社のシステム『e街プラットフォーム』を活用したソリューション。寄付者がスマートフォンから即座にふるさと納税ができ、返礼品として地域で利用可能な電子商品券を即座に受取り、様々な店舗で使える新しいふるさと納税の形です。
配送型中心だった今までのふるさと納税では恩恵を受けることが少なかった、飲食店、体験施設、宿泊施設、各種アクティビティを提供しているサービス・観光事業者にもふるさと納税の恩恵を受けることができる仕組みです。特にこれはコロナ禍で大きなダメージを受けた業種で、地域活性に貢献できるのが旅先納税の大きな特長でもあります」（ギフティ 代表取締役 太田睦氏）
旅行や出張先などで訪れる魅力を感じる地域に、旅前でも旅先でも寄付ができ、宿泊施設や飲食店、体験施設等の地域体験で利用可能な「e 街ギフト」を返礼品として受け取る。スマホから5分程度で寄付ができ、完了すると電子クーポン券が受け取れる。
一度、旅先納税を利用するとID登録がされるので、違う地域に行ったときには改めて登録する必要がない。店側もQRコード、もしくは電子スタンプと決裁方法が選べて、送料や返礼品管理といった費用も発生しない。また。旅先納税に参加している自治体同士で相互PRにも使えるメリットもあり、納税者、店、自治体と三方に利点のあるシステムとなっている。
【AJの読み】本来のふるさと納税の意義に沿った「地域応援」の形
3月から旅先納税に新たに参画した北海道北広島市は、日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」を含む複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」の所在地。北広島市の旅先納税では、プロスポーツチームと全面的なタイアップをして旅先納税を推進する、旅先納税の返礼品でプロ野球の観戦チケットがオンラインから事前購入できるという2つの日本初の取り組みが実施される。
「北海道は最もふるさと納税の仕組みが普及している都道府県で、北広島市を含め現在11の自治体に導入していただいています。北広島市はFビレッジと協業して、スポーツを軸とした街づくりを取り組まれており、北広島市を皮切りに、日本全国で地域のスポーツチームと連携した旅先納税の拡大を進めていきたいと考えています」（太田氏）
旅先納税の魅力は、実際に訪れた先でその地域に魅力を感じたり、共感したりすれば、その場で寄付ができるということ。地域を活性化させるというふるさと納税の意義に則った地域応援の形といえる。
文／阿部純子
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