『メルカリ』が暗号資産を購入するハードルを下げる
『メルカリ』でビットコインを売買できる新サービスの特徴は次の3つだ。
1 メルカリの売上金・残高がビットコインに
2 いつものメルカリ内で完結
3 メルカリ品質の高いセキュリティ
メルコインの調査によると、暗号資産を保有しない理由は、「損しそう」「何となく怖い」「購入資金がない」がトップ3。この漠然とした不安感を、『メルカリ』で不要品を販売した売上金を用いることや、使い慣れた『メルカリ』アプリで操作できること、これまでのアカウント認証に加えて、新たにFIDO認証による生体認証を追加した『メルカリ』のセキュリティなどによって解消できるのはないかと考える。
暗号資産の利用申し込みは、『メルカリ』アプリですでに本人確認済みであれば、最短30秒で完了。取引についても日本円で最低1円から購入でき、マイページでメルペイの残高などと一緒に保有金額を確認できる。運用額や評価額などのチャートも円表示でわかりやすく、売却したい場合も日本円で入力し、メルペイ残高に戻すことができる。
『メルカリ』アプリから手軽に暗号資産の利用申し込みができる。
売買は日本円で1円単位から取引できる。
日本国内の暗号資産口座数は640万口座程度と言われているが、その中でアクティブな口座は370万口座程度。現在、インターネット証券取引口座が3900万口座と言われていることから考えると、この数は非常に限定的だと言える。今回、メルコインが暗号資産の取引領域に参入することで、『メルカリ』を利用する累計4800万人超の利用者が、年間流通総額約1兆円の売上金を活用して、暗号資産の領域に入ってくる可能性が生まれる。
「より多くの『メルカリ』利用者が売上金という別の財布を使うことで、無理することなく暗号資産のドアを叩いてもらえるようになる。『メルカリ』があるからこそ、この分野へのシナジーが生まれます。このことは、暗号資産の業界にとっても大きな意義があることだと考えています」と山本氏。
2023年2月1日に会社設立10周年を迎えたメルカリの新たなグループミッションは「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」こと。メルカリはモノやお金、信用などの価値の循環型社会の実現を掲げているが、その循環の中に新たに暗号資産という新しい価値が加わることになる。
メルカリの循環サイクルに暗号資産が加わった。
当初、取り扱う暗号資産はビットコインのみ。『メルカリ』でビットコインを利用して買い物をすることなどにも、現時点では対応していない。そのことについて中村氏は、「暗号資産を投資目的で保有するというよりも、購入することやチャートを確認するなど、ライトに楽しむという体験を提供していきたい」と言う。山本氏も「まずは市場の受け止め方を見定め、その後、今後の展開を考えていきたい」と補足する。
普段、使い慣れた『メルカリ』で売買できるようになることで、暗号資産のハードルが下がり、身近な存在になるのだろうか? まずは一度、購入してみることから始めてみたいと思う。
メルコイン
https://about.mercoin.com/
取材・文/綿谷禎子