ハーバードの研究員たちは、困難なミッションを達成するため、まだ、発見されていない「価値」に到達するために日々、研究を続けています。そこで働く研究員たちが重要視しているある習慣。それは、「1日5分好奇心を刺激し、思考の固定化を避ける」「どんな時でも、新たな発見を求める」「チームや同僚の助けを得て、日々前進しようとする」といったことです。
ハーバードでは、これらの習慣を、「なんとなく」重要視しているのをではありません。一言でいうなら、「脳が冴えた状態をキープする」ための習慣として大切にしているのです。脳が冴えた状態をキープできるとどんな時でも思考が止まらなくなります。ビジネスから日常のモヤモヤまであらゆることがスムーズに運ぶようになるのです。
本記事ではハーバード大学の医療機関に在籍し、多くのプロジェクトを通じて学んできた脳の使い方を紹介する川﨑康彦氏の著書「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」からビジネスパーソンが仕事に使える「脳が冴える33の習慣」を抜粋、再構成してお届けします!
専門性を見極めるには経験も忘れてはいけない
自分にとっての専門性とはなんだろうか。これは、業種や職種を問わず、誰もが一度は突き当たる問題です。
専門性について、ハーバード時代のボスから言われた言葉で印象的なものがあります。それは、「ワクワクできそうな仕事に出会ったら、最低でも10年間は続けてみなさい。そうすれば、それがあなた自身の価値に結びつくかどうかの答えが出るだろう。
その時にワクワクしなければ、またやり直せばいい」。
この言葉は、研究職に限らず、他のどの分野にでも共通するアドバイスだと思います。10年間1つの道を志して突き進むと、始めた当初は気づかなかったものが見えてきます。逆に言えば、10年間続けても、何のワクワクも得られなければ、その分野はあなたがその専門性を活かして世界に貢献するものではないのでしょう。
私は、ボスから「10年間続けなさい」と言われたことで、大学院で5年間研究していた専門分野である電気生理の研究をハーバードに着任してからも続けました。結果的に、世界で習得している人がほとんどいない方法で実験ができるようになりました。
そして、ハーバードに在籍中、その実験技術を求めるさまざまな人とコラボレーションすることができたのです。
最初の3年間はやみくもに集中する
ただ、10年間ボケーっと過ごしていても、その分野のトップクラスを目指すのは難しいのは明白です。
最初の3年間はやみくもに、1つのことに向き合いましょう。この期間は、上司や同僚などから言われたことにただ従うだけでも十分に成長できます。しかし、経験を重ねて視野が広がれば、ただ言われたままに作業をする時期は過ぎていきます。
また、経験を積むと、周囲から言われた以外のアイデアが思いつくようになりますし、言われた以外の行動をとりたくなってきます。
そうなったら、チャンス! ハラハラしますが、徐々にでいいので、言われていない行動もとるようにしてみましょう。中でも、結果が読めない行動が大事だったりするのです。予測しなかったことが起きて不安になるか、おもしろいと思うかです。
一流の研究者が集うハーバードでは、着実に成功するものしか取り組まないのではないか、また優秀なゆえに結果が分かってしまうのではないかと、考えている人は多いかもしれません。
しかし、彼らの考えはその逆で、結果が見えるものには誰も興味を示しません。たとえ何度も失敗することが分かっていたとしても、結果が見えない未知の領域を知りたいという情熱がとても強い人が集まっているからです。
次の一手は限りなくある
そのため、たとえ結果が予測できるものだったとしても、実際に実験をして、その結果が出るまでは決して予測の話をする人はいませんでした。これは、日本の組織で交わされる、「こういう結果になるはずです」とか「こういう結果を目指してやってみましょう」という予測ありきの取り組み方とは正反対でした。
彼らが、実験の結果をもとにして何が考察できるかを、常に探求し続けていくことを大切にしていたからだと思います。
常にワクワクを持っている彼らは、自分が思っていたような結果を残せなくても、次の手法、さらに次の手法というように、別の方向で同じゴールを目指します。時にはゴールを変更する柔軟さもあります。それだけの情熱に支えられて複数の手法が取れるからこそ、自分の専門分野については他の誰よりも1歩リードした結果を生み出せ、自分のやっていることに自信を持って取り組んでいけるのだと思います。
もし今、ワクワクできるものをすでに見つけているとしたら、1度や2度の失敗で簡単に諦めず、10年間はさまざまなステップを踏みながら続けてみましょう。10年経った後に振り返ってみて、10年前の失敗と今の失敗の質を比べてみてください。あなたの成長の足跡が、目に見えて右肩上がりになったのが明らかになるでしょう。
一見無関係なことから本当の能力に気づく
今の自分のポジションで好きな仕事ができる立場ではない、と考える人もいるかもしれません。しかし、どんなに些細なことでも、少しでも楽しいと思えることを続けてみてください。
ここで私の経験をお伝えしましょう。私は、電気生理の研究に情熱を感じて、ハーバードの研究員になりました。しかし、10年間研究に打ち込む中で、いつしか「自分にとって最もワクワクを感じられるのが研究とは違うかもしれない」と考えるようになりました。
最初の1〜2年こそ結果を残そうとがむしゃらに研究と向き合っていました。しかし、コンスタントに論文を発表し、周りからの評価が高まるのとはうらはらに、自分のワクワクが別にあると確信してしまったのです。
研究は自分の知識を蓄積しながら続けることで、未知の発見をすることに喜びがあります。その発見によって、研究者として人々の健康や幸せに寄与することはできるかもしれません。
しかし、私はそれよりもプロジェクトチームの人々と接したり、学会で他の研究者たちと交流をしたりする中で、人と接することで人を幸せにするのが好きだと気がつきました。自分にしかできない方法で人と交わり、幸せにすることのほうが、私にとってはワクワクの気持ちが強いのだと確信したのです。
それで、ハーバードの上司や仲間は「もったいない」と引き止めてくれましたが、別の道へと踏み出そうと決心しました。
私は今、訪問リハビリ、介護関係の仕事、動物関係の仕事、ヨガ講師、セミナー講師、講演家など、さまざまな顔を持って活動しています。なので、私に対する呼び名もいろいろで、時にはリハビリの先生、時には体操の〝おいちゃん〟、時にはヨガの先生、時には脳科学の先生、時にはパーソナルトレーナー、そしてマッサージの人とバラエティに富んでいます。
10年間、電気生理の研究を頑張り続けたことは結局、私に2つの恩恵をもたらしました。1つは、研究者として世界でも希有な存在になれたこと。もう1つは、多くの人に接して幸せになるサポートをすることのほうが、ハーバードの研究者であり続けるよりも、自分がもっとワクワクすると気づいたことです。
ですから、今読者の皆さんが置かれている場や与えられた仕事にワクワクすることを見出せなくても、今いる場所で少しでも楽しいと思えることを探してみましょう。そして、それを10年間続けてみるのです。すると、世界でトップクラスになれる場合もあれば、自分にとっての本当の意味でのワクワクに気づく場合もあるでしょう。
もしかしたら、それは今いる場所でさらにスキルを高めていくことかもしれません。あるいは、私がそうだったように今いる場所を去って、新天地を求めることになる場合もあるでしょう。どちらの選択も、あなたの脳を成長させます。
いずれにしても、自分にとって少しでもワクワクと思えることに1日1日向き合うことで、一歩リードした結果を生み出せる脳に進化しているはずです。
☆ ☆ ☆
いかがでしょうか? ビジネスも自分の成長も、プライベートなこともすべての「源」は脳です。脳の活用の仕方をさらに知りたい方はぜひ、「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」で紹介されている脳が冴える33の習慣を実践して自分らしい人生を発見してみてください。
「ハーバードの研究員が教える脳が冴える33の習慣」
著者/川﨑康彦
発行/株式会社アスコム
https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1270-6.html
川﨑康彦
医学博士。脳科学者。元ハーバード大学医学大学院研究員(2003~2008年)。専門は神経生理学。佐賀大学医学部大学院神経生理学博士課程卒業。中国医科大学(旧満州医科大学)医学部卒業。中国では、東洋医学と西洋医学の両方を学ぶ。その後、これまでの研究成果を買われ、ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院麻酔科の研究員として招かれる。在籍中に、論文がネイチャー関連誌にも掲載される。日本に帰国後は、医学博士、理学療法士、カウンセラーとして運動、睡眠、痛みなどに対し、多方面からの知識でアプローチしている。現在は、チャレンジ、感動、旅を通して「多様な脳の共存、共感、共鳴を通して個々の意識と集合意識の成長」をテーマに研究活動を展開し、それらを通して社会に貢献していくコミュニティIBTA(Impact your Brain and Tuning them All)実現のための活動のほか、脳の研究とハーバードでの経験から得た、固定概念を覆して生き方を変えるためのメソッドをオンラインサロンで伝えている。
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