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東日本大震災から12年、13のブルワリーが同じレシピで醸造した「東北魂ホワイト」に秘められたそれぞれの思い

2023.03.12

2011年。東日本大震災で多大な被害を受けた東北の3つのブルワリーから始まった「東北魂ビールプロジェクト」。今では15社前後が参加するプロジェクトに発展している。今年はキリンビール系列のスプリングバレーブルワリーを含む13社が、同じレシピで醸造したそれぞれの「東北魂ホワイト」をリリースした。

「東北魂ビールプロジェクト」に参加した13社の「東北魂ホワイト」。

2011年、クラフトビール人気前夜に3つブルワリーの集まった

東北魂ビールプロジェクトの始まりは、2011年11月に、東北エリアの3つのブルワリーが集まって開いた勉強会だった。

発起人のひとり、いわて蔵ビール(岩手県一関市)の代表、佐藤航さんは原点をこう話す。
「震災直後、私たちは全国のたくさんの方からご支援と応援をいただきました。それに何かお返ししたいと考えた時、私たちにできることは、おいしくて品質の高いビールを提供することしかないだろうと思いました。そこで東北のブルワリーが知恵を出し合い、おいしいビールをつくろうと勉強会を始めたのです」

いわて蔵ビール代表の佐藤航(わたる)さん。東北魂ビールプロジェクトの発起人のひとり。

いわて蔵ビール、秋田あくらビール(秋田県秋田市)、福島路ビール(福島県福島市)の3社が集まった。
「私たちはみな小さな醸造所です。ブルワーは独学で学び、味も五感に頼るところが大きい。そのため製法が独特であったり、品質にバラツキがあったりしました。ほかのブルワリーさんの知見や意見を交換してみんなで品質を高めていこうと考えたのです」

原料やその調達方法、醸造法など、普通なら社内秘のノウハウを教え合い、ビールの出来については忌憚のない意見を交わした。

2012年から毎年、「東北魂ビールプロジェクト」オリジナルビールを醸造、販売してきた。この頃はまだクラフトビール人気の到来前だったが、回を重ねるうちに参加ブルワリーは増え、茨城県からの参加もあった。

2017年になると、キリンビール仙台工場の谷川満副工場長と、スプリングバレーブルワリーの田山智広さん(2021年発売の「SPRING VALLEY豊潤<496>」のマスターブリュワー)が、いわて蔵ビールの佐藤さんを訪ねてきた。

「何かいっしょにできることはないでしょうか?」という申し出に、佐藤さんは驚いたという。キリンビール仙台工場は、震災で貯蔵タンクが倒壊する被害を受けている。同じ東北のブルワリー同士、クラフトビールと大手メーカーの連携という進取のプロジェクトに発展していった。

同じレシピで醸造したIPAが色も味もバラバラ

キリンビールの参加は、東北のブルワリーの品質向上にとって大きな意味があった。
「ビール工場の分析器で各社のビールの味を分析してもらい、それまでブルワーの五感に頼っていたものが数値で見えるようになりました。たとえばオフフレーバーの要因を科学的に分析できるようになった。また、仙台工場に見学に行き、原料や醸造法についても学ぶところは多くありました」と、佐藤さんはその成果を語る。

翌2018年の「東北魂ビールプロジェクト」では初めて、参加ブルワリー8社それぞれが同レシピで醸造することになった。スタイルは当時大人気のIPA。その結果は、「同じレシピとは思えないほど色も味もバラバラでした」と佐藤さんは笑って振り返る。

前回は、新しいブルワリーISHINOMAKI HOP WORKS(宮城県石巻市)で研修会が開かれた。

そして今回の東北魂ビールプロジェクトでも、同じレシピで醸造した各社のビールがリリースされた。

お題はベルジャンホワイト。大麦のほかに小麦を使うベルギーの伝統的なスタイルで、コリアンダーシードとオレンジピールによる香りづけが特徴だ。苦みはなく、ほんのりスパイシー、さわやかな飲み心地は日本でも人気が高い。

ベースにしたレシピは、石巻の新ブルワリーISHINOMAKI HOP WORKSの「石巻海風ホワイト」。出来上がった13のビールについて、いわて蔵ビールの佐藤さんとキリンビールのマスターブリュワー田山さんは「例年に比べて、色も味も差が小さいですね」と、にこやかに評した。

13社のうち6社の「東北魂ホワイト」を試飲。色や風味に微妙な違いはあるものの、どれもおいしい「ベルジャンホワイト」だった。

各社の差の縮まりは、醸造技術の向上を表しているのだろう。こうして東北魂ビールプロジェクトはキリンビール仙台工場を含めた勉強会を重ねることで、技術の底上げがはかられている。

ホップの生産地東北は“世界に通用するビール”の発信地に

この数年、クラフトビールブルワリーの増加は目覚ましいものがあるが、東北地方でも新規オープンが続く。2020年醸造開始の半田銀山ブルワリー(福島県伊達郡)、2022年醸造開始の希望の丘醸造所(宮城県岩沼市)など、新しいブルワリーも東北魂ビールプロジェクトに参加している。

東北魂ビールプロジェクトの果実として、佐藤さんは「横のつながりが持てたこと。クラフトビールのブルワーって小さな醸造所で数人で作業しているので、けっこう孤独なんですよ。でも今は何か困ったら、ほかのブルワリーに相談できますし、たとえば機械が故障したとなれば融通したりできますからね」

先日も某ブルワリーから「ちょっと機械が故障しちゃって」とヘルプを求められ、いわて蔵ビールから缶詰マシンを貸し出してあげたそうだ。こうしたちょっとした連携ができるかできないかがビールの品質に影響してくるのだろう。

「気がつけば私が50代で最年長。若いブルワーが増えて、新しいブルワリーから私たちが学ぶところもあります」

12年前、勉強会から始まった東北魂ビールプロジェクトは、今では東北のブルワーたちの拠り所になっている。今後も勉強会を続けながら、「東北発の世界に通用するビール造り」に発展させていきたいと佐藤さんは語る。

一方、スプリングバレーブルワリーのヘッドブリュワー古川淳一さんは「日本にはビール造りを体系的に学べる場が少ない。そういう面で協力できることがあると思います」と、醸造の学びの場の不足を課題に挙げ、ビール造りの技術向上に貢献していきたい考えだ。

すでに、世界的ステイタスの高いワールドビアアワードで、いわて蔵ビールは2年連続スタイル別世界1位を、秋田あくらビールも昨年世界1位を受賞している。着々と東北魂ビールプロジェクトの成果が出てきている。岩手、秋田、山形県はホップの名産地でもある。地元産のホップが輝く東北は、日本のクラフトビールのリーディングエリアになる可能性を秘めている。

「東北魂ビールプロジェクト」2023のメンバーのみなさん。左からISHINOMOKI HOP WORKSの岡恭平さん、希望の丘醸造所の吉田丈祥さん、キリンビールのマスターブリュワー田山智広さん、スプリングバレーブルワリーのヘッドブリュワーの古川淳一さん、いわて蔵ビールの佐藤航さん、秋田あくらビールの長谷川信さん、半田銀山ブルワリーの鈴木翔之さん。

「東北魂ビールプロジェクト」のビールが楽しめるお店

・スプリングバレーブルワリー東京 3月3日〜
・クラフトビアマーケット田町店 3月9日〜
・クラフトビアサーバーランド赤坂見附/トレジオンポート赤坂3月10日〜
・F-BASE(仙台)/グッドビアマーケットENN(仙台)3月12日〜
*いずれも数量限定

販売

・「東北魂12本セット」100セット限定販売。9369円(送料込み。ただし九州地方と離島を除く) 販売:HOPDOG BREWING

東北魂ビールプロジェクト参加13社とビール

OIRASE BEER奥入瀬ビール(青森県十和田市)Aomori Spring White
いわて蔵ビール(岩手県一関市)イワテ陸風ホワイト
田沢湖ビール(秋田県仙北市)秋田海風ホワイト
秋田あくらビール(秋田県秋田市)Akita Spring White
BLACK TIDE BREWING (宮城県気仙沼市)TOHOKU PRIDE気仙沼風待ちホワイト
ISHINOMAKI HOP WORKS(宮城県石巻市)石巻海風ホワイト
希望の丘醸造所(宮城県岩沼市)岩沼汐風ホワイト
米沢ジャックスブルワリー(山形県米沢市)米沢義風ホワイト
半田銀山ブルワリー(福島県伊達郡)半田颪(おろし)ホワイト
福島路ビール(福島県福島市)吾妻の風White Ale
ホップジャパン(福島県田村市)あぶくま山風ホワイト
南会津マウンテンブルーイング(福島県南会津郡)春雪ホワイト
スプリングバレーブルワリー東京(東京都渋谷区)東北魂ホワイト

取材・文/佐藤恵菜

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