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3月8日は国際女性デー!メディア、企業、個人、発信するすべての人が注意すべきジェンダー表現の落とし穴

2023.03.08PR

3月8日は「国際女性デー」。1904年にニューヨークで発生した婦人参政権デモが起源で、1975年に国連によって制定されたものだ。共生社会の実現を目指す毎日新聞は今年、ジェンダー平等実現に向け、2月27日(月)にジェンダー表現に焦点を当てた、オンライントークイベントが開催された。

日本新聞労働組合連合(新聞労連)という産業別労働組合に在籍する新聞社勤務の女性記者が中心となり執筆した書籍「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(小学館)の内容をもとに構成。荻上チキさんがモデレーターを務め、タレントのバービーさんをゲストに迎え、弁護士、書籍編集者、新聞記者が登壇し、約400名の視聴者を前にジェンダー表現について議論した。

評論家 荻上 チキ(おぎうえ ちき)
メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。TBSラジオ「荻上チキ・Session」パーソナリティー、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表、「社会調査支援機構チキラボ」所長。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『いじめを生む教室』(PHP新書)など。

小学館 福田葉子(ふくだ ようこ)
1993年早稲田大学卒、小学館入社。AneCan、Domaniの編集長などを経て、 現在は、「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」を発行した第二ブランドメディア局 ライフスタイル・ブランドスタジオ室 編集長。企業などのオウンドメディアのコンテンツ制作受託を請け負う。

毎日新聞社 吉永磨美(よしなが まみ)
1998年、毎日新聞社入社。横浜支局、東京本社地方部、社会部、生活報道部などを経て、現在はくらし医療部所属。労働、社会保障、ジェンダー、ハラスメント・性暴力などを取材。前新聞労連中央執行委員長 時に「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」(小学館)執筆に携わる。

弁護士 武井由起子(たけい ゆきこ)
1990年中央大学法学部卒、伊藤忠商事入社。一橋大学大学院法学研究科
(法科大学院)終了、2010年弁護士登録。現在は八重洲グローカル法律事務所に所属し、ハラスメント事案を数多く手掛ける。企業でのジェンダーのアドバイザーの他、講演も多数。

著名人 バービー
2007年お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。バラエティー番組のほか、ワイドショーのコメンテーターやラジオのパーソナリティーとしても活躍し、2020年に『本音の置き場所』(講談社)を出版。自身のYou Tubeでは330万視聴回数を超える動画もあり好評配信中。

ジェンダー表現を見直すには、見方を変える「新しいメガネ」が必要

荻上/ジェンダー表現と聞くと「女子アナ」「女医」などが思い浮かぶ。職業に「女」をつけるが、男性のアナウンサーやドライバーに、あえて「男」という言葉は使わない。ニュースを読む上でも性別は関係ないが、私たちは慣れてしまい、違和感なく使ってしまっていると感じる。

本日は本書刊行に関わった方々にも加わってもらい、なぜこのようなプロジェクトが立ち上がったのか、本書をどのように活用してほしいか、本書を通じて社会をどのように変えていきたいか、などについて語っていただく。

そして法律の専門家として、弁護士の武井由起子さんにもご参加いただき、裁判事例やリスクマネジメントについてもお話しを伺う。芸能界におけるジェンダー表現については、バービーさんにお話を伺う。皆さん、どうぞよろしくお願いします。

早速ですが、最初に毎日新聞の吉永記者に、簡単に本書の刊行の経緯について伺いたい。

吉永/私は毎日新聞の記者だが、新聞労連でも活動している。その中で、ジェンダー表現を上司に指摘したが、対応してくれないとの悩みを聞いた。すると「弊社もそうだ」「うちも」と、次々に声が上がり、業界として指針的なものが作れないかとの議論が始まった。各社で資料を持ち寄ったところ、かなりの数が集まったため、では自分たちで作ろうじゃないかということになり、プロジェクトが始動した。最終的には、約20人が関わった。

荻上/これは記者だけではなく、全ての人に関係があると感じる。本書は当初は書籍化する予定はなかったと聞いた。小学館で本書の編集に携わった福田さんに経緯を伺いたい。

福田/私は自発的に担当になったわけではなく、軽い気持ちで引き受けた。編集者としては「面白い」と思って話を聞いたが、新聞業界だけでなく出版業界にも通じる問題だと感じた。私は女性誌の編集に携わってきたので、「女子力」とか「輝く女性」など、無自覚に使っていたな、と気づきもあった。今では担当して良かったと思える1冊になった。

荻上/自己発見とともに、本としてより多くの読者に届けるためには編集者として、どんなところに注力したのか。「ふむふむ」と読めるような事例集として出発しながら、なぜそれが問題とされてきたのか、後半になって専門家の方と解きほぐす構成になっている。

福田/社内では、〇×のクイズ形式にしたほうがよいとの助言もあったが、法律違反でもないし、もちろん放送禁止用語でもない。執筆にかかわった記者の皆さんと話したことで「今その感覚でその言葉を使うのは、良くないですよ、考えてみましょう」という立ち位置が明確になった。読者の反応としては「無自覚に使ってしまっている」などが多かった。

荻上/バービーさんにも、感想を伺いたい。

バービー/新聞社に勤務する記者が執筆したと聞けば硬い内容とのイメージが強かったが、ファッション誌など時代の最先端にいる小学館が発行元という組み合わせが面白いと感じた。テレビ業界は、ヒキのある言葉、エッジの聞いた言葉が大好き。キラキラとイカみたいに光っているものに飛びつく。おもしろそうな物には、何でも食いつくし、その役割を求められることも多い。

お笑いの世界は「エッジの聞いた言葉じゃないと」という風潮があり、〇×表現をなくすと刺激が足りないという人も多いと感じる。

荻上/テレビの世界でも、言葉遣いの変化があるように思うが。

バービー/確かに変化は感じるが、本書に書かれている内容に比べたら、レベルは違うとは思う。ただ、ここ5年ぐらい前から空気感が変わり、ここ1,2年は相当気をつけるようになってきた。番組内での再現VTRやコントでも、「旦那さん」という表現を「パートナー」に変えるなど、現場レベルで浸透している。

荻上/最近ドラマの現場でも、女優、男優などではなく男女、様々なジェンダーも含めて「俳優」と紹介することが増えた。

バービー/女芸人ではなく「女性芸人」とか。でも、「教科書に書いていたから」「これが正解の基準なのだ」と使っている現場もあるかもしれない。今まで女性の役割だったものを、あえて男性にやらせている映像が増えた。例えば、家庭で女性が料理をしているシーンは女性蔑視につながる表現と判断し、不自然にネクタイ姿の男性が料理をしてみようとか。部屋着でいいのに(笑)。わざと男性がやっているという、過剰なアピールも増えてきたのかなと思う。

荻上/弁護士の武井さんには、ジェンダー表現が違法になりうるケース、実際に裁判で争われる事例について伺いたい。

武井/「ジェンダー表現は違法ではないがアウト」という言葉のとおり、ストレートに違法となることは考えにくい。ただし性意識がトラブルを生み、訴訟に発展したケースはある。SNSなどでの女性バッシングのほか、離婚を取り上げた番組が夫の言い分だけを流したことで、名誉毀損とプライバシー侵害が認められた。先日も同様の提訴があった。一方、女性が性被害を訴えた際、そのまま書いていいかとマスコミに相談されたりする。「男性の話はそのまま書いてもいい」「女性の話はそのまま書けない」というようなところがないか。特に、男性で社会的地位がある場合に、そういう傾向が強まるよう。

荻上/攻撃的な性差別表現と別に好意的な性差別表現があるが好意的な性差別表現として「内助の功」「女性ならではの感性」など、女性に特定の役割を押し付けているが、裁判の場合、好意的性差別表現は「褒めたのだよ」「攻撃的意図がありませんよ」となり訴訟になりにくいのか。

武井/好意的性差別表現は、訴訟ではやりようがない。社会の中で、皆で気をつけていく必要がある。

荻上/SNSの研究で、自分より優れた人と比較する「上方比較」がある。加工され選別された他者の魅力ある発信と、日常の自己を比較することなどで、メンタルヘルスの悪化へとつながるとの報告がある。その時に雑誌には何ができるか

福田/2000年代、働く女性をターゲットにした雑誌「Domani」の編集に携わっていた際、おしゃれも結婚も完璧で理想的な女性像を追いかけていた。15年後に編集長として同誌に戻った時、今これだけ頑張って疲弊している女性に「頑張れ」とは言えないなと感じた。そこで「働く女性をラクにする」というコンセプトを立てて、「何かをやめよう」「これはしなくていい」という軸でタイトルを付けた。

バービー/私が大学生の頃から、「愛され」「恋する」などのワードが出てきて、「女性の役割はこうだよね」と定義されたように感じていた。受け身であるべきなのかなというのを、無意識に刷り込まれてきたのではないか、と。若干モヤっとしていた部分はあった。

荻上/現場の記者が書いた記事の見出しが変えられてしまった結果、PV(ページビュー)は大幅に上がったケースも散見される。ジェンダー化された見出しで誇張した事例を紹介したい。

まずインプレッション数やPVを稼ぐ「釣り見出し」。「セーラー服でノーバン、天使すぎる始球式」。毎年始球式をやるたびに、キャッチャーミットにバウンドなしで届いた時に、この見出しをつけて、性的な錯覚を誘導しクリックを誘う。

要は、「ノーパン」と「ノーバン」と、あえて似たようなものを出し、定着している。もうお約束だ。

次もネットではお約束。「スク、水揚げ」。文字だけ見ると、多くの人が「スク水=スクール水着」を想起する。実際には沖縄の魚「スク」の水揚げが始まった季節の風物詩の記事。「今年もスク大量」などの表現でいいはずだが、「スク水揚げ」という見出しが、10年以上前からバズり定着している。

武井/実は本日、セクハラ被害を組織が長年放置したことで、現役の女性自衛官が国を訴える裁判の記者会見をした。前述「スク、水揚げ」のメディアについては、女性差別的な報道をしないかと少し心配だった。また、ネットニュースでは、見出しに同僚からセクハラの文言が掲載されており、煽情的な印象を持った。

荻上/実際に行われた裁判をメディアがどう報じるかどうかが大事だと思う。そのメディアがジェンダーバイアスを含んで発信すると「意味ないじゃん」となってしまう。

バービー/ネット上の誹謗中傷で言えば、当初は違和感を覚え慣れるまで気持ちが落ち込んだりした。それ以降は慣れてしまい、もうエゴサーチはデータ収集と割り切ってやっていたことがある。しかし、他者の攻撃的投稿にはすごく心が痛む。割り切れない人は、心をすり減らしていると思う。

荻上/私がエゴサすると、体調を崩すので、ネットとは適度な距離を置いている。

荻上/東京都の50代男性から事前に届いた質問を紹介する。「慎重に言葉を選んで発言していても、本書を読んで思い当たることが、たくさんあり怖くなりました。不安に感じます」とのこと。

福田/この方は不安に感じている時点で「大丈夫だ」と思う。読んで感じてくれたなら、ありがたい。

荻上/今後も人の足を踏むことは起こり得る。次から「もうしません」と言えるように反省装置が埋め込まれることは大事だ。バービーさん、ジェンダー表現で失敗したなとか、時間を戻せるなら、やり直したいと思っていることはあるか。

バービー/山ほどあって、どれを言えばわからない(笑)。以前は「イケメン」は当たり前のように使っていたし、「カッコいいね」「可愛いね」「美人だね」も。もう、振り返っても仕方ない、ここから頑張ろう、という気持ち。

荻上/本日は、言葉のレベルから法律の話まで、私たちは何ができるか、各領域の方々と話してきた。どんなジェンダー表現があるのか、今一度、自己点検、社会点検をしてほしい。最後に皆さんから一言ずついただきたい。

武井/ハラスメントのセミナーで話をすると、ダメな表現は×、大丈夫な表現は○と教えてほしいと言われるが、いつどこでどんな背景かによって違うし、その基準も変わりうる。大事なのは思考停止しないこと、常に考え続けることだと思う。

福田/ジェンダー表現で大事なことは、〇か×ではなく、思慮深さ、相手に対して失礼ではないかを考えること。私自身、本書を担当して「新しいメガネ」を与えられたと思った。何か今まで見えてなかったものがはっきり見えてきて、注意深くなった。そう感じる人が一人でも増えてほしい。

吉永/メディアはプロの発信者としてとして、無自覚であってはならないと思う。メディアに限らず、企業も個人も、発信していることが社会につながっていくことを自覚することが欠かせない。

荻上/メディアは、事実を伝えるだけではなく、社会規範の製造責任を持っていると思う。

バービー/仕事柄、お笑い現場、発信する現場など様々な場所で仕事をしている。会話が成立する場所、そうでない場所もある。時間もないし、考えたくない時もあるが、思考停止しないことが一番だと思う。いろんな人の橋渡しになれたら。

荻上/常に満点の回答はできないが、誰かを責めるのではなく、自己反省が誰かの気付きになるかもしれないとの気持ちは持っておきたい。このトークイベントがご自身の発言を考えるきっかけになればと思う。

「失敗しないためのジェンダー表現ガイドブック」1650円(小学館)
 詳細はこちら

文/編集部

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