日本でも物価が上昇し、長期金利は上昇している。住宅ローン金利にはどのような影響が出ているのか、今後どうなるのだろうか。
住宅ローン金利の決まり方
住宅ローン金利は、大きく分けて「変動金利」「全期間固定金利」「固定期間選択型」の3つがある。
変動金利は、常に適用金利が変動し、返済期間中でも適用金利が6か月ごとに変わる。そのため、契約時に計算された総返済額通りにいくわけではなく、返済額は返済期間中でも変動する。金利が上がれば総返済額は当初より増え、金利が下がれば総返済額は当初より減ることもある。変動金利は、短期プライムレートを基準に銀行ごとに決められている。短期プライムレートとは、銀行が優良企業向けに貸出す際の金利をいう。この短期プライムレートに銀行が1%程度上乗せして住宅ローンの店頭表示金利を決めている。実際の住宅ローンの適用金利は、店頭表示金利から優遇金利を差し引いた金利となる。
優遇部分は、返済中は変わらないが、短期プライムレートが変動すれば適用金利が変動する。
全期間固定金利は、返済中金利がずっと変わらない。そのため、契約時の総返済額は変わらない。そして、固定期間選択型は、契約時に固定期間を10年など決めてその期間中だけ固定金利となり、固定期間終了後にそのときの基準金利での変動金利または固定金利を選択するものだ。
全期間固定金利と固定期間選択型は、日々取引されている10年物国債の金利を基準に決められている。この金利は本来日々変動するものであるが、現在は日銀の国債の買入により金利を一定に抑えているため、日々取引なしか現在だと0.5%と一定で、日銀の金融政策動向によって今後も変動する。
金利は、基本的に期間が短いものから長期のものにかけて上がっていく。
そのため、同時期に比べると短期プライムレートを基準とする変動金利が最も低く、期間選択型、35年のような全期間固定金利の順に金利は高くなっていく。
これまでの住宅ローン金利の動向
住宅ローン利用者の73.9%が変動金利を選択している。
変動金利は、短期プライムレートは2009年1月から1.475%と変わっていないが、熾烈な銀行間の金利競争により優遇する金利が上がることにより、適用金利は最近でも下がり続けている。現在0.5%程度で借りることができ、非常に低金利で借りることができ人気だ。
(参考)【フラット35】借入金利の推移:長期固定金利住宅ローン 【フラット35】 (flat35.com)
一方、固定期間選択型、全期間固定金利は、基準とされる10年物国債を日銀が0.25%までになるよう買入を行っていたため、2022年まで低水準となっていた。しかし、2022年末に日銀が0.25%から0.5%に買入目安を引き上げたことで、10年物国債金利は0.25%から0.5%に上がり、それに連れて10年物国債を基準とする固定期間選択型や全期間固定金利の適用金利が上がった。全期間固定金利のフラット35は、2022年まで1.4%台であったのが、2023年に入って1.6%、1.96%を一気に上がった。
今後の動向
これから借りる方、変動金利で現在返済中の方、これから借換えを考えている方には、今後の金利動向に目を配る必要がある。
変動金利の基準となる短期プライムレートは、日銀の政策金利(短期金利)の動向により変動する。政策金利は、現在マイナス金利である。リーマンショック後の2008年のゼロ金利政策導入後、2016年にマイナス金利政策をとり、長い間短期金利はゼロ以下の低金利が続いている。マイナス金利政策は、デフレに長くあえいでいる日本が物価上昇率2%になるように向けて行われた政策だ。現在日本で物価上昇率は4%を超えているが、アメリカのような需要が強いためではなく、ガソリンなどの輸入価格の上昇のせいだと日銀はみており、まだしばらくこのマイナス金利(今後ゼロ金利となるかもしれない)継続しそうだ。したがって、今の1%割れるような変動金利の水準はしばらく続くのではないかと思う。ただし、住宅ローンは30~35年と長い期間組むことが多く、今から30年後の金利はわからない。将来が見通せず、もし金利が上がって返済額が増えてしまうことに不安を感じるのであれば全期間固定金利が安心だ。
全期間固定金利は、10年国債の金利が0.25%から0.5%に上がり適用金利が上がったものの、未だ2%割れの低い水準だ。フラット35の場合には、購入する建物が省エネなどの条件に合えばさらに金利は下がる。ただし、今後近いうちに金利は上がっていき2%を超える可能性がある。2023年4月に日銀の総裁が変わる。新しい総裁候補である植田氏の衆議院での所信聴取によれば、「2%の物価目標を達成すれば国債の大量買入れを終了する。達成しなくても、副作用を考えて正常化を目指す。」とのことだ。この所信を聞くと、現在の大量買入れで抑えている長期金利を元に戻すのではないかとも考えられる。このことから、固定金利は今後上昇が続くと考えられ、固定金利を考えているなら早めに決断した方がよいかもしれない。
(参考)
住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査 2022年4月調査
住宅ローン利用者の実態調査:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫) (jhf.go.jp)
長・短期プライムレート(主要行)の推移 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)
文/大堀貴子
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