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脊髄への電気刺激で脳卒中後に何年間も上肢を動かすことができなかった患者でも腕や手の機能が回復する可能性、ピッツバーグ大学研究報告

2023.03.14

脊髄への電気刺激で脳卒中後の腕の機能が回復

脳卒中を発症した患者の多くは、過酷な現実と向き合うことになる。それは、リハビリを開始してから6カ月が経過しても腕や手の動きは回復しない可能性が高いという現実だ。

こうした中、中等度~重度の脳卒中の既往がある患者を対象とした予備的な研究で、すでに慢性疼痛に対する治療法として普及している脊髄刺激療法により、何年間も上肢を動かすことができなかった患者でも、腕や手の機能が回復し得ることが示された。この研究結果は、「Nature Medicine」2023年2月20日号で報告された。

論文の上席著者である、米ピッツバーグ大学神経外科学のMarco Capogrosso氏は、「脳卒中患者の多くは、理学療法により機能がわずかに回復するものの、恒久的な障害が残る。こうした患者では、追加の治療による効果は期待できない」と言う。

同氏によると、脳卒中は、世界中で麻痺の最大の原因で、米国だけでも年間約80万人が脳卒中を発症し、そのほぼ半数に恒久的な運動障害が残るという。

それでも、その治療に突破口を見出せる可能性はあると同氏らのグループは考えた。なぜなら、脳卒中により脳と脊髄の間の情報伝達が阻害されることはあっても、完全に遮断されるわけではないからだ。

このような考えのもと、Capogrosso氏らは、電気刺激を加えることで脳卒中により減弱したシグナルを改善し、増強させようと試みた。対象は、手と腕の動きを失った2人の脳卒中患者で、1人は22歳のときに脳卒中を5回経験した31歳の女性、もう1人は47歳の女性だった。

米カーネギー・メロン大学機械工学教授のDouglas Weber氏によると、2人の患者には29日間にわたって、2本の「スパゲッティのような」細いリード(刺激電極)が埋め込まれた。

リードは針を使って患者の背中から挿入し、「上肢からの感覚神経が脊髄に入る場所」に留置。そのプロセスは「侵襲性の低いもの」であったと同氏は説明している。

次に、それぞれの患者の脊髄中のターゲットとする神経細胞に対して制御下で持続的に電気パルスを送る治療を実施した。共同研究者で米ピッツバーグ大学リハビリ神経工学研究室のElvira Pirondini氏によると、この治療は1日2~3時間、週5日のペースで行われた。

Capogrosso氏、Weber氏、そしてPirondini氏によると、この電気刺激による治療の実施後すぐに、2人の患者の腕および手の力と機能に改善が見られたという。

例えば、Capogrosso氏によると、いずれの患者も、それまで困難だった「鍵を開ける」「ナイフとフォークを使って食べる」「物をつかんだまま維持する」といった動作ができるようになった。

対象者の1人であるHeather Rendulicさんは、初回(22歳時)の脳卒中発症後に片手を動かす機能を失っていた。

研究グループが公表したデモ動画では、Rendulicさんは「電気刺激が加えられたとき、この9年間失っていた私の腕と手をコントロールする力が戻ってきたと感じた」とコメント。また電気刺激については、「くすぐったい感じはするが、痛みは全くない」と話す。

Capogrosso氏によると、それぞれの患者の運動制御は徐々に改善し、達成可能な動作が増えていった。さらに予想外のこととして、電気刺激によって取り戻すことのできたいくつかの動作については、刺激を止めた後も継続してできるようになっていた。

このことから、脳は外部からの電気信号を、筋肉を動かすプロセスに迅速かつスムーズに取り入れることができる可能性が示唆された。Capogrosso氏は、「このプロセスが実際にどのように行われるのかの解明を進めるために、また、この治療で最大の効果が得られる脳卒中患者の特徴を明らかにするために、今後より多くの患者を対象とした研究が必要だ」と話している。(HealthDay News 2023年2月20日)

Copyright © 2023 HealthDay. All rights reserved.

写真:電気刺激による治療を受けるHeather Rendulicさん Photo Credit:UPMC

(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41591-022-02202-6

Press Release
https://www.neurosurgery.pitt.edu/news/spinal-cord-stimulation-improves-arm-mobility-after-stroke

構成/DIME編集部

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