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サクラ、アリア、エクストレイル、乗ってみてわかったレベルの高い日産車の氷上走行性能

2023.03.04

日産自動車が長野県の女神湖が氷結する冬、毎年のように開催してきた「氷上試乗会」。日産車を一堂に会して、まさに「氷上イッキ乗り」といった形で行われるイベントには、国内のジャーナリストやメディアが参加して行われる。今年も「サクラ」や「エクストレイル」、そして「アリア」といった話題のモデルをはじめ、「GT-R」や「フェアレディZ」までも揃えて、参加者に対して色々な気づきを与えてくれたのである。

サクラからGT-Rまで揃えて氷上性能をチェック出来る、年に一度の貴重な機会を日産自動車が提供してくれる。

スケートリンクのようなコースで試すべきこと

昨今の世界情勢などを見るに付け、私たちが当たり前のように享受している日常の平穏や無事が、いかに危ういものなのかを実感させられるばかり。冷静に分析してみると、あくまでも私見に過ぎないが、実は高度な政治的判断や施策などによって、ギリギリのところで、なんとかバランスが保たれているのだと思い知らされる。当然、油断や過信があれば、あっと言う間に日常は崩れ去ってしまうと、理解している。

ずいぶんと大局的な話をしたが、ごくごく普通の生活の中にも、そうした“絶妙なるバランス”によって保たれている平穏が存在する。そして、それを毎年のように痛感させてくれるのが、長野県立科町の「女神湖」で日産自動車がメディア向けに開催している「NISSAN Intelligent Winter Drive」の場である。このイベントは日本国内のメディアや自動車評論家、さらにはプロドライバーたちを集め、氷上における日産の各モデルの走行性能をじっくりと試して欲しい、という狙いがある。

ただし、そのテストの場は、まさにスケートリンクと言ってもいいほどに磨き込まれた氷上の所々に、うっすらと申し訳程度に雪が乗っているだけ。どうしたらグリップを得られるのか? と、不安になるほどだし、通常ならば確実に通行止めになるよう状況である。そこに用意された試乗コースは、例年どおりなのだが、直線路にパイロンを置いた「スラローム」、全長約1kmに渡る外周路、そしてパイロンを円の中に置いて、その周りをクルクルと回る「定常円旋回」、そして「8字旋回」といった内容だ。日産はそこに、最先端の「e-4ORCE(イーフォース)」という4WDシステムのクルマだけでなく、軽自動車BEVの「サクラ」、さらに国産最強スポーツの「GT-R」や、雪道は決して得意とは言えないFR(後輪駆動)の「フェアレディZ」まで持ち込んで、「どうぞ、ご自由に」というわけである。

通常、こうした雪道走行は「e-4ORCE」のような、メーカーご自慢の4WDシステムを搭載したモデルを用いて、その威力をたっぷりと試して貰おうとする。当然だが、今回は多くのテスターやジャーナリストが楽しみにし、試乗の主たる目的はe-4ORCEを搭載した「エクストレイル」やBEVの「アリア」、さらには「ノート」や「キックス」の4WDモデルにあった、と思う。サクラやGT-R、そしてフェアレディZは、一般路ではあまり試す機械のない雪上での走りを思いっきり試してほしい、ということなのである。まぁ、正直に言えば“雪上ドリフト”などを心置きなく試してやろうという気持ちがないといえばウソになる。

そんな中で、さすがに凄いと思わせてくれたのが、やはり最新の国産SUVとして人気となっているエクストレイルだった。

ドライ路面やオフロードでの走破性の高さを見せた「エクストレイル」。もっとも滑りやすい氷上でも高い走破性を示してくれた。

GT-Rはランフラットタイヤが前提であり、スタッドレスタイヤの選択は限定されているためブリザックではなくダンロップの「DSX CTT」を履く。

サクラが想像以上に健闘した氷上性能

エンジンで発電機を回して、その電力で前輪と後輪を、それぞれ独立した2基のモーターで駆動する“e-4ORCE”は、実に賢い4WDだと、理屈では分かっていた。ドライ路面をはじめ、オフロードではその優れた走破性はじっくりと試すことは出来た。だが、やはり本領を発揮して日常的な優位性を試すには、雪道などの滑り易い状況での走りがもっともいい。とくに路面の滑りやすさなどの路面状況を瞬時に察知して、4輪の駆動力を自在に制御するにはモーターによるコントロールが適していて、なんとも平穏無事に走り出してくれるから、あっけないというか……。加速時にも、そして減速時にも、車体を可能な限り平穏無事に走ってくれようとするから、十分に注意して走れば、特別な運転テクニックを多用しなくても、ストレスなく自然に走行できるのである。

この感覚はBEVのアリアに乗り換えても同じであり、雪がない乾いた一般舗装路のように、とまでは言わないが、e-4ORCEがドライバーに大きなストレスを感じさせることなく、事前に滑り易さを予測し、それに対応するようにスイスイと走ってくれるのである。エクストレイルより300kgあまり重く、走行フィールの違いはもちろん感じられるが、アリアの方がしとやかな運転感覚。発進時から安心感がより高く、総じてしっとりとしたレベルの高い安定性を維持してくれる。

そんなe-4ORCE搭載モデル以上に、4WDシステムが有効に作用したのは軽量にして重心の低い「ノート」&「ノートオーラ」であった。こちらの4WDシステムは「X FOUR」とよばれるもので、自慢のハイブリッドシステム「e-POWER」の前輪用モーターは最高出力116馬力、それと68馬力の後輪用モーターを組み合わせたパワートレインということだが、これがなかなか活発で安定した走りでいい感じである。軽量にして低重心であるノートは慣性による乱れも少なく、ブレーキでもコーナリングで車体の挙動はコントロールがとても楽。コンパクトなボディと言うこともあるのだが、結果的に氷上の走りをもっとも快適に姿勢の乱れも少なく、安定した走りを堪能できたのはノートであった。やはり重量のあるSUVは、滑りやすい路面でのトラクションでは多少の優位性があっても、慣性力の大きさによって、その安定感は少しだけ差し引かれてしまうように感じた。

重量という点で言えば、軽自動車のBEV「サクラ」もなかなかの走り。ガソリンエンジンを積む軽自動車のデイズ・ハイウエースターのプロパイロットがFFで870kg、サクラのプロパイロット標準搭載車が1080kgだから、車両重量は210kg重くなるのだが、それでもモーターのトルクは適度に制御され、マイルドに加速していく。現在、サクラには4WDモデルがないことは、雪国性能の面で少しばかり不安はあったが、大きなバッテリーをボディ下部に置いて重心が低いこともあってコーナリングの安定性やハンドリングが良くなっている。それに加えて前後の重量バランスもいいためだが、雪上での走りでストレスを感じて困ることは多くはなかった。もし4WD仕様がこの先サクラに追加されるのであれば、さらに滑りやすい路面での安定感は増すはずで、期待度は高くなる。

グレードは航続距離が長いB9 e-4ORCE リミテッド。前後輪の駆動力が瞬時に変えると同時に左右のブレーキ制御が行われ、安定している。

車両重量が1070kgと軽自動車として重いが、それを前後の重量バランスの良さによって吸収し、止まりやすく、曲がりやすい印象。

軽量コンパクトである事と4WDシステムによって揃ったクルマの中でもっともバランスよく走ることが出来た「ノート」。

アリアとe-4ORCEの組み合わせはもっとも安定感があった。無理をしなければ氷上スラロームでも姿勢を崩すことなくスイスイとクリアできた。

どんな優れたハードでも、使いこなすのはあくまでも人間だと痛感

いよいよGT-Rである。こちらも4WDであるが走りの基本はFR(後輪駆動)であり、リアタイヤに滑りなどが発生すると前輪にトルクが伝わり、4輪に適正なトルクを配分しながら走るというもの。発進もアクセル操作を丁寧に行えば、トラクションを上手にコントロールしながら加速していく。ここでアクセルを一気に踏み込んだとしても、その振る舞いには大きな違いはなく、あくまでも氷上ではジェントルマンで在り続けてくれる。ただし、地上最低高も100mm少々であり、一般路でちょっとした轍に乗り入れてしまうと、動けなくなってしまう危険性はかなりあるし、なによりエアロパーツ類に対する干渉が気になって、雪道などはあまり走りたいと思わないクルマのである。

その意味から言えばFRのフェアレディZはさらに雪道では乗りたくない1台である。テスト車両には、国内でもっとも信頼性が高いと言うことで、支持されている「ブリヂストンVRX3」というスタッドレスを装着しているのだが、スタートからトラクションコントロールがフル作動。アクセルを踏み込んでも思ったほどの加速もせず、少し氷面がうねっていたりしても姿勢が崩れ、お尻を振りたがるので修正舵を与え続けることになる。スケートリンクのような状況だから、ここまで苦労するのだが、一般路に置き換えてもブレーキングポイントやコーナリングの手前から十分に速度を落としていかなければならないことには変わりがない。正直に言えば、冬の間はスポーツカーをガレージに納めておき、春までは4WDの軽自動車に乗ろうかと、考えてしまう。

さて今回の女神湖氷上試乗会でも、一部のクルマを除き、ほとんどの車両には「ブリザックVRX3、あるいはVRX2が装着されていた。もっとも支持率の高いブランドだけに、当然の装着率だと思うが、滑りやすい路面での安定した走行には優れた電子制御の他に、このタイヤの安定した氷上&雪上性能も必要であることは今さら説明の必要はない。その上でドライバーが肝に銘じなければいけないのは、どんなにクルマやタイヤの性能が上がろうとも、その限界を知り、抑制の効いた運転をするという心構えであると、今年も痛感することになった。

FRっぽさを感じながら4輪の駆動力配分によって意外なほどしっかりとしたグリップを感じ、楽しく走れるGT-R。

予想通りもっともコントロールに苦労したフェアレディZ。電子制御がフル活動しながらも、発進時から細心の注意が必要となる。

スタッドレスタイヤで磨き込まれ、その氷上はクルマが写るほどにテカテカである。

円の中心にパイロンをセットした「定常円旋回」では、4輪を滑らせながらグルグルと回り続けるように走る。

過信と油断がなければ、滑りやすい路面でも安定した走行が可能となる。

問い合わせ先:日産自動車 0120-315-232

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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