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企業の価格転嫁が成功している理由TOP3、3位業界全体における理解の進展、2位取引先への価格改定の通知、1位は?

2023.03.03

帝国データバンクが2022年12月に実施した価格転嫁に関する調査 によると、自社の商品・サービスのコスト上昇に対して、企業の販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は39.9%と算出された。

しかしながら、価格転嫁の実態は業種・業界や取引関係、消費者などとの関係で受ける影響が大きく、コスト上昇分の多くは企業が負担しているのが現状である。

その一方で、政府の取り組みをはじめ、徐々に価格転嫁ができる土壌は生まれてきている。また、企業努力や創意工夫で付加価値を上げ、価格転嫁を実行している企業も少なくない。

そこで同社は、企業が価格転嫁できた理由や2023年の値上げ時期に関するアンケートを実施した。アンケート結果は以下の通り。

企業の価格転嫁の成功理由、「原価を示した価格交渉」が4割超で最高

自社の商品・サービスについて多少なりとも価格転嫁ができた理由について尋ねたところ、コスト上昇の程度や採算ラインなど「原価を示した価格交渉」が45.1%と最も高くなった(複数回答、以下同)。

以下、「取引先への価格改定の通知」(28.7%)、「業界全体における理解の進展」(25.8%)、「日頃から発注者へのコストに影響しそうな情報共有」(24.2%)、「業界全体における価格調整」(13.9%)が上位に並んだ。

企業からは「他社との差別化を進める機会と捉えている。実際に、差別化による恩恵を感じている」(園芸サービス)や「2022年の資材の高騰時から、お客さまに対し都度値上げ交渉をしている。また、見積有効期限を明確にし、常に仕入れ価格を意識しながら経営している」(特殊産業用機械機器具卸売)といった声があがっている。

また、「2022年に施行された「酒類の公正な取引に関するルールの改正」がプラスに働いているほか、値上げされた仕入価格に加え、適正な販管費および利益をのせて卸すということが、業界全体に浸透しつつある」(酒類卸売)というように、業界におけるルールを価格転嫁の成功理由とした企業もみられた。

他方、すべてを転嫁することは難しく、「原材料のメーカーが寡占状態で、有無を言わさず値上げしてきている。一方で、販売先からは値上げを拒まれ、半分程度しか転嫁できていない。結果として大変厳しい状況が続いている」(各種機械・同部分品製造修理)などの実情が浮かび上がった。

業界別では、『製造』において「原価を示した価格交渉」が63.7%と他の業界より高くなった。他方、『小売』では、原価を示した価格交渉は難しく2割程度にとどまった。

商品・サービスの2023年の値上げ動向、年度はじめの4月がヤマに、1〜5月に値上げが集中

2023年における自社の商品・サービスの値上げ予定(実績含む)について尋ねたところ、多くの企業で年度はじめでもある「4月」が42.8%で最高となった(複数回答、以下同)。

4月に値上げを実施する予定の企業からは「販売組合で値上げのお願い文書を作成し、4月から値上げを実施する」(砕石製造)や「幼稚園から高校までの給食の比率が高いため、年度単位の値上げに集中する傾向」(料理品小売)といった声が聞かれた。

また、「前年4月に値上げを実施したことと同業他社が4月に値上げするといった情報を得たため。多くの企業にとって同時期は年度はじめでありタイミング的に良いと思われる」(金物卸売)や「すでに資材などが少しずつ、複数のタイミングで値上げされているため、当社もどこかでまとめて値上げしなければいけないと思っており、4月だとキリが良いため同時期に決めた」(印刷)などというように、年度はじめである4月は値上げ実施時期としてキリが良いと考えている企業が一定数存在した。

次いで、「1月」(28.1%)、「5月」(26.5%)、「3月」(20.6%)、「2月」(20.2%)が2割台で続いた。

2023年通年でみると、1月~5月に値上げが集中していることがうかがえる。ただし、調査時点での値上げの動向であるため、先行き不透明感が強まるなか、今後さらに値上げが行われる可能性もある。

主な業界別にみると、『製造』『卸売』『小売』はいずれも「4月」が最高となっている。とりわけ『小売』においては、「4月」の値上げが6割を超えており、突出して高い結果となった。

企業からのコメント

・電気料金の総額は前年と比べて約150%、重油は約120%にまで上昇。そうしたエネルギー関連の値上がり幅を取引先に提示して交渉を行った。ただし、今まで約20年間価格を据え置きにしていたこともあり、他社と比べて価格はまだ安く、コストの上昇分も十分に転嫁できていないため、今年4月に再度値上げを行う予定(味そ製造)

・部品や材料、電気料金が上がったタイミングごとに、料金(1時間あたりのサービス代金を請求する事業形態)を設定している。都度細かく値上げすることで、ゆるやかに値上げしているという印象を持ってもらう。また、元請け・下請けという関係性を従来から作らないようにし、さまざまな企業と取引している情報を発信することで、相手先に販売面で依存しているというイメージを与えないよう心がけている(自動車一般整備)

・多くは自社開発の製品なので転嫁できている。日本で唯一などの特殊機械を手がけており、取引先の理解もあるので、原材料価格などの上昇分はほぼすべて転嫁できると考えている(建設機械・鉱山機械製造)

・一企業だけでは限界もあり、業界団体や協会が中心となって行政などに原材料の高騰の実態などを説明し要望を出している。また、行政などの人件費や材料費などの単価見直しを受けて春先に値上げの動きがある(一般管工事)

・原料価格の変化に合わせて売価を調整する仕組みを顧客と取り決めしているケースが多い。業界の慣習的に価格転嫁に関する理解は進んでいる(界面活性剤製造)

まとめ

本アンケートの結果、4割を超える企業で原価を示した交渉により、多少なりとも価格転嫁が実施できていた。加えて、価格転嫁に対する理解の進展や情報共有なども要因の1つと言える。また、2023年の商品・サービスの値上げの動向は、多くの企業で年度はじめの「4月」に山場を迎え、現時点で1~5月の期間に集中していた。

現在、「価格転嫁」に対して、社会全体は徐々に受け入れ始めている。しかしながら、すべてを転嫁できているわけではない。「他社との競合もありお客さま離れが懸念される」(自動車(新車)小売)といった声や、目に見えにくい電気料金などの価格転嫁はなかなか理解されないという声は多い。

企業だけでの取り組みは限界を迎えつつある。引き続き政府や行政は、価格転嫁の実態をよく把握し、さらに価格転嫁を受け入れやすい環境づくりや、サプライチェーン全体での価格の底上げを率先していく必要があろう。

出典元:帝国データバンク

構成/こじへい

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