政府は、賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という3つの課題の一体的改革を進めている。とりわけ、昨今の物価高騰から企業へ従業員に対する賃上げ協力を求めており、賃金改善の動向が大きく注目される。
そこで帝国データバンクはこのほど、2023年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施し、その結果を発表した。
2023年度、企業の56.5%で賃金改善を見込む。ベースアップは過去最高を記録
2023年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は56.5%と2年連続で増加、2018年度見込み(2018年1月調査)と並び過去最高水準となった。
一方、「ない」と回答した企業は17.3%と前回調査(19.5%)から2.2ポイント低下、調査開始以降で最も低い水準だった。
賃金改善の状況について企業規模別にみると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模すべてで、前回調査の2022年度見込みから賃金改善見込みの割合が上昇した。
また、従業員数別では、「6~20人」「21~50人」「51~100人」で6割を超えている。他方、「5人以下」(39.6%)と「1,000人超」(39.4%)の両サイドで賃金改善を行う割合が低くなっている。
しかし、賃金改善を実施しない割合は「5人以下」(33.1%)が突出して高く、従業員が5人以下でより賃金改善を行う環境が厳しくなっている様子がうかがえる。
業界別では『建設』(60.1%)が最も高く、『製造』(60.0%)や『卸売』(57.2%)が続いている。
企業からは、「基本的な収益構造を確実化させ、ベースアップ達成を目指す」(技術提供業、神奈川県)や「大幅な賃金改定は難しく、わずかではあるが従業員の生活補填をしたい。賃金改定による販売価格の見直しは必須であることから取引先との交渉が課題」(料理品小売、長野県)などの意見が聞かれた。
また、「物価高により給料もできる範囲でアップしたい」(野菜漬物製造、和歌山県)、「賃金水準と消費拡大の好循環が来れば大変良い状況になる」(ガソリンスタンド、鳥取県)や「臨時手当も考えたが、人員確保には目に見えるベースアップが重要」(土工・コンクリート工事、高知県)といった声もあがった。
賃金改善の具体的な内容をみると、「ベースアップ」が49.1%(前年比2.7ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.1%(同0.6ポイント減)となった。
「ベースアップ」は過去最高となった前年の46.4%を上回り、2年連続で調査開始以降の最高を更新した。また、2023年度に正社員の賃金改善が「ある」企業に対して、どの階層が賃金改善の対象となるか尋ねたところ、「従業員」は98.3%、「管理職」は68.5%、「新入社員」は41.0%、「役員」は21.3%となった。