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10年にわたる黒田日銀総裁の金融政策に対する評価は何点か?

2023.03.01

日本銀行の総裁が10年ぶりに交代

デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日銀の政策連携-共同声明(アコード)が公表されてから、2023年1月には10年目を迎えた。アベノミクス「三本の矢」のもと、2%の物価目標を掲げ、異次元の金融緩和政策を約10年にわたって推し進めた、黒田総裁が4月8日に任期を終える。

次期総裁の人事が本格化している。両議院の同意を得て、内閣によって任命される新総裁が、これまで堅持してきた金融緩和の路線を維持していくのか、修正に舵を切るのか、注目される。

そこで帝国データバンクは、約10年にわたり行われた金融政策への評価と、今後の望ましい金融政策の方向性に関するアンケートを行い、その結果を発表した。

金融政策への評価は平均65.8点、政策スタート時の効果を評価する一方、長期化による副作用を指摘

黒田総裁のもとで約10年にわたり行われた金融政策(大規模金融緩和や2%の物価目標など)への評価について、100点満点で評価した場合、何点と評価するか尋ねたところ、平均65.8点となった。

点数の分布を見ると、「80~89点」が22.2%で最も高く、以下、「70~79点」(18.1%)、「90点以上」(14.5%)、「60~69点」(13.4%)、「50~59点」(13.3%)と続いた。

企業からは「黒田総裁の金融緩和策がすべて良いとは思わないが、我々中小企業の事業が思ったよりも順調に推移した点は良かった」(ゴムベルト製造、90点)、「当時の円高解消や株価の底上げに効果をあげたことは評価できるが、後半は過度の市場介入が市場や日銀財政をゆがめ、その割に効果が少なかった」(工業用ゴム製品製造、80点)、「金融政策に関して出だしは良かったが、その後は金融緩和政策に固守しすぎている」(工業用プラスチック製品製造、70点)との声があがった。

大規模な金融緩和が事業環境や為替・株価などに相応の効果をもたらしたと、政策スタート時を評価する一方で、その後も方向転換することなく10年という長きにわたり一貫して緩和政策を続けたことへは厳しい意見が多く出た。

また、「どこかの時点で金融緩和の見直し方針を打ち出さなかった事で、円安が定着した。後半は失策と言わざるを得ない」(金属線製品製造、40点)や、「金融緩和を長い間続けたことで国債が増えすぎ、身動きが取れない状況。一時的なカンフル剤としての金融緩和とするべきであった」(機械器具設置工事、35点)と、副作用を指摘する声も多数あがった。

望ましい金融政策の方向性は「金融緩和の縮小」が4割、慎重な方向修正を求む

今後(1年程度の間)の望ましい金融政策の方向性について尋ねたところ、「金融緩和の縮小」が39.6%で最も高くなり、「現状維持」の36.4%が続いた。「金融緩和のさらなる拡大」は17.6%、「金融引き締め」は6.4%となった。

企業からは「健全化の対策が急がれる」(貸家)や「マイナス金利は経済成長にひずみが出るので、徐々に脱却を図ることを望む」(一般貨物自動車運送)と、これまでの大規模な金融緩和による副作用へ対処するために方向転換が必要との認識が見られた。

一方で、「急激な変化が好ましくないことは明らか。新総裁はソフトランディングできるよう気を配ってもらいたい」(プラスチック部品卸売)、「アメリカのような急激な対策は取らず、金利を上げるなら、少し上げて様子をうかがうような慎重な対応を望む」(鉄筋工事)と、慎重に政策を修正していくよう求める声も多く聞かれた。

規模別に見ると、「金融緩和のさらなる拡大」については、「中小企業」(18.4%)および「小規模企業」(19.1%)が「大企業」(12.4%)を上回った。他方、「金融緩和の縮小」では、大企業(49.6%)が「中小企業」(38.0%)や「小規模企業」(36.1%)よりも高くなっている。

「行き過ぎた量的緩和の弊害を取り除いてほしいが、借入金の比重が大きい中小企業にとって借入金利息の引き上げは避けたい」(自動車部分品・付属品卸売)と、中小企業を中心に切実な実情が浮かびあがった。

企業からの主なコメント

10年にわたる金融政策への評価

・借り換えのタイミングで、黒田バズーカに助けられた。低金利により、苦しい状況をなんとかやりくりできているが、金利が上昇してくると経営が困難になる(無床診療所、80点)

・金融緩和策は必要だった。一方で財政や規制緩和の推進が弱かった(スーパーストア、80点)

・金融緩和策は当初はそれなりの効果があったと思うが、世界中が金融引き締めに向かう流れの中で、日本だけが取り残されている現状に危うさを感じる(造園工事、60点)

・どんなバズーカ砲を打ったとしても、最初に言っていた通り2年で物価目標2%を達成できていたら、批判は出なかった(金属プレス製品製造、35点)

・当初の目標としてインフレ2%の達成を2年で行うとしたが、結局10年たっても達成できなかった。途中で政策の変更はできたはず(コネクター・スイッチ・リレー製造、20点)
その場しのぎでなく長期的展望を見据えた政策に努めてほしい(電気機器卸売、10点)

今後の望ましい金融政策の方向性

・日銀の役割は、経済の体調を整える医者(薬剤師)である。投薬を長く続けると弊害も出るので、正常化までのプロセスを策定し実行してほしい(工業用プラスチック製品製造)

・国債や保有株式についての出口戦略を具体的に説明すべき(貸事務所)

・ゼロゼロ融資の期限を迎え、業績回復が芳しくない中小・零細企業は、資金繰りに窮する場面が予想されるため、バランスを考慮した政策が望まれる(ガラス工事)

・金融引き締めに転換すると、日銀保有の国債の金利負担が発生するため、当分は現状程度もしくは緩和を期待する(陶磁器製タイル製造)

本アンケートの結果、黒田総裁のもとで約10年にわたり行われた金融政策への評価は、平均65.8点となった。日銀による大規模な金融緩和が日本経済に一定の効果をもたらしたと政策スタート時の効果を相応に評価する一方で、その後は柔軟に方向性を転換せず、大規模緩和が長期化したことによる副作用を指摘する声も多数あがった。

今後1年程度の間の望ましい金融政策の方向性については、「金融緩和の縮小」が39.6%で最も高く、「現状維持」の36.4%が続いた。これまで堅持してきた異次元緩和の路線を修正し、金融政策運営を正常化させることが望ましいが、一方で急激な軌道修正が引き起こすリスクを不安視し、様子を見ながらゆるやかに修正していくよう求める声が多かった。

4月に就任する予定の次期総裁は、金融政策の正常化に向けてソフトランディングできるよう徐々に緩和縮小や引き締めに方向を転換するのか、現状を維持していくのかなど、刻々と変化する世界および国内情勢を注視しながら柔軟な舵取りが求められる。

<調査概要>
・アンケート期間は2023年2月10日~14日
・調査主体:帝国データバンク
・調査対象は当社調査協力先企業(当社の独自抽出による)、有効回答企業数は1,008社(インターネット調査)

出典元:帝国データバンク

構成/こじへい

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