KDDI(au)、ソフトバンクの通信キャリア2社は、2023年3月下旬以降に、緊急時にauまたはソフトバンクの予備回線に切り替えて通信サービスが利用できる「デュアルSIMサービス」の提供を開始すると発表しました。簡単にいえば、「auショップでソフトバンクの回線」、「ソフトバンクショップでauの回線」が契約可能となるサービスです。
ご存じの通り、KDDIとソフトバンクはライバル会社。今回の発表内容は、「ライバル会社の回線を販売します」という意味にもとらえられるため、不思議に感じる人がいるかもしれません。
では、なぜKDDIとソフトバンクはライバル会社の回線販売に踏み切るのか、我々一般ユーザーにとってどのような変化やメリットがあるのか、執筆時点で公開されている内容をもとにご紹介します。
KDDIとソフトバンクがライバル会社の回線を提供するわけ
今回発表された「デュアルSIMサービス」は、既存の料金プランを他社でも契約できるようになるわけではなく、災害や通信障害が発生した場合の、緊急用回線として、お互いの回線を契約しておけるというもの。つまり、「通信回線の保険」のようなサービスとなります。
協議のきっかけは、2022年7月に発生した、KDDIの大規模通信障害でした。ソフトバンクの代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏が、通信障害に対して「対岸の火事ではない」とコメントしているように、〝いつ〟〝どこで〟〝どのキャリア〟が通信障害を起こしてもおかしくありません。
ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川潤一氏
災害発生時に携帯電話のサービスエリアを迅速に復旧するために活用される、ソフトバンクの「有線給電ドローン無線中継システム」
障害発生後は、総務省でも「事業者間ローミング」について協議が行われてきたように、障害の発生を未然に防ぎながら、仮に障害が起きてしまった場合にどう対応するのかが、今後の通信サービスにおける課題。その対応策として考案されたのが、今回のデュアルSIMサービスとなります。
【参考】総務省/非常時における事業者間ローミング等に関する検討会
発案はKDDIの代表取締役社長である高橋誠氏とのことで、高橋氏は「これまでは各通信会社が自前で何とかするのが当たり前だったが、これからは協力できる部分は協力していくべき。競争と協調が大切」とコメントしています。
KDDIの車載型地球局「ビッグシェル号」。衛星通信を利用し固定通信網や電力が遮断された場所でも利用でき、大規模災害発生時には被災地の状況を国内外へ伝える役割を果たす