小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

楽天モバイルは2023年中に単月黒字化を達成できるのか?

2023.02.16

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、〝第4の通信キャリア〟として奮闘する、楽天モバイルについて会議します。

郵便局内のショップを200店舗削減

房野氏:楽天モバイルは昨年末からショップ閉店が話題になっていますね。

房野氏

石川氏:郵便局内に設置している「楽天モバイル 郵便局店」を、今年の4月末までに200店舗閉鎖すると発表しました。郵便局店は280店舗あったんだけど、80店舗残して200店舗削減するという話です。1年半ぐらい前に、試験的に郵便局にショップを構えるというので自分も取材に行きました。同じタイミングでHISモバイルも発表会をやっていたんですが、HISモバイルが参入した時って、「我々は全国に旅行代理店のHISがある。代理店の店頭で受付して契約を取れる」といった主旨で説明していたんです。でも、何年か経った後に話を聞いたら、「(ショップでの契約は)やめました」と。旅行に行くつもりで代理店に来る人は携帯電話を契約しないと。確かにモチベーションが違うよなっていう話を聞いていたんですよ。

 楽天モバイルが郵便局でショップを作ると言った時に、「郵便局に来る人は、携帯電話を変えようというモチベーションじゃないと思う」と楽天モバイルに質問したら、「郵便局は、荷物を送ったり貯金しにきたりとリピーターが何度も来るところ。最初はショップがあることを何も知らずに来るし、声をかけてもそのタイミングでは契約しないかもしれないけど、次のタイミングというチャンスがある。リピーターが来る郵便局はいい場所」という回答だったんです。先日、200店舗を閉鎖すると発表された時に楽天モバイルの人に話を聞いたら、「リピーターしかいなかった」と。

※写真はイメージです

石川氏

石野氏:なるほど。

石野氏

石川氏:いつまで経っても同じ人しか来ないから、楽天モバイルを契約してくれた人はいいけれど、契約しない人は一切興味を示さないという話でした。だから、リピーター以外の人も頻繁に来るところとか、端末を展示できるような80店舗に関しては残す、という話でした。

石野氏:郵便局でわざわざ契約する人っていうのは、ITをあまり使いこなしていない人たちが多いと思うんです。そういう人たちが、郵便局にチラシがあって契約するかと言われると、うーんと思うところがあります。そういう人たちにとって、楽天モバイルが使いやすいキャリアかと言われると、それもまたうーんと。かと言って端末の種類が豊富かというと、そこまでではないですし。

房野氏:楽天モバイルは、全国約2万局の郵便局に順次、サービスを案内するチラシを置くそうですね。

石川氏:郵便局にチラシを置くプロモーションはIIJがやっていて、それでIIJのユーザーがすごく増えたかというと、そういう話は聞かない。

石野氏:チラシを自宅に持ち帰って契約する人がどれだけいるか。

法林氏:一応フォローしておくと、お客さんとのタッチポイントを増やしていくのは郵便局でもいいと思うんです。楽天モバイルもわかっていると思うんだけど、郵便局にある「地方のうまいものを送ります」みたいなコーナーって、実はすごく大きいマーケットなんだそうです。楽天市場とかで買える人には不要だろうけど、そうじゃない人も結構いるので、大きなマーケット。ただ、それが携帯電話の契約に結びつくのかは、ちょっと微妙だと。タッチポイントは増やした方がいいけれど、ターゲットとうまく噛み合うかはまた別で、チャレンジしたことは評価しているし、1年経って80店舗に絞るのも、現実論として理解できる。最初に風呂敷をちょっと広げ過ぎた。「これはテストで、1年ぐらい試して様子を見たい」くらいの言い方にすればいいのに、「これでもう完璧」みたいなニュアンスで説明するからマイナスイメージになってしまう。楽天モバイルは、毎回ちょっと言い過ぎる。

法林氏

石野氏:確かに、カニとか牛肉とかが置いてあれば、たまには誰かに贈ろうかなって思うんですけど、SIMカードとまでは思わないなと(笑) 基本的に自分のものですし。

法林氏:客層とデバイスも合ってない。今考えると、郵便局で商売して一番売れそうなのはY!mobileのような気がしますね。客層と合いそうだし、Y!mobileで宣伝している親子で割引とか家族で割引とかは、うまくハマりそうな気がするので。

春商戦には参戦せず?

石川氏:このことは他媒体で原稿も書きましたが、2022年の12月くらいから、通信キャリア大手3社と2つのサブブランドは、家族割引とか学生をターゲットにしたキャンペーンをやっている。でも楽天モバイルは一切やっていないですよね。もっと親子を獲得していった方がいいんじゃないのかなって気がするんですよね。楽天モバイルは春商戦をどう思っているんだろう。

石野氏:そうですよね。

法林氏:楽天モバイルのスタンスって、基本的に他社の否定から入っている感じするんだよね。「3キャリアがこうやっているけど、これじゃダメだから、ウチはこうする」みたいな、やや強引に反対路線を敷いている感じがする。

石野氏:そうなんですよね。一般的な日本人の生活を考えると、2月、3月は新入学の準備があり、新社会人を目指す人がいて、生活が変わるタイミング。子どもが学校に入るからケータイを持たせようというような、そういう生活スタイルの変化に基づいて3キャリアがキャンペーンを打ち出した結果、2月と3月の新規契約が1年で一番多い月として常識になっている。そこに対して楽天モバイルがアプローチしないというのは……。

石川氏:単純に家族4人が全員、楽天モバイルに変えたら、4人分の回線料金が最高でも1万2000円程度に抑えられるかもしれないじゃないですか。そういう訴求をするだけで全然違う気がするのに、もったいないというか。

石野氏:CMもやっていないですよね。学割キャンペーンとかやればいいと思うんだけどな。まぁ、元々の料金が安いので、やりづらいっていうのは当然あるとは思うんですけど、それでも3か月間、料金を値引きするとか、学生には0円プランを復活させるとか、何かしらやりようがあるのになぁと思うんですけどね。

法林氏:安い料金で回線を持ってもらいつつ、楽天経済圏でお金を使ってくれる人を獲るという考え方なので、どうしてもなんか中途半端なマーケティングになっちゃっている感じが否めない。でも、だからって家族全員、楽天モバイルがダメだという話ではない。例えば、楽天モバイルの電波が届かない、あるいは弱い地元から、大学入学で都心に来たら楽天モバイルの圏内。だから楽天モバイルに乗り換えて、学校のパソコンもテザリングで使えます、みたいなストーリーが描けるんだけど、そういうことも楽天モバイルは一切やってこない。

石野氏:自分の子どもが今度小学生になるので、キッズケータイを持たせようかと考えていたんですけど、選択肢がドコモ、au、ソフトバンクしかない。楽天モバイルだと、それだけで最低1078円かかっちゃうわけです。端末もないし。その段階で選択肢から外れちゃうわけですよ。主回線に紐づく家族用プランみたいなもの、年齢に合わせた家族プランみたいなものもないです。10回線まで契約できるようになったのに、データ容量をシェアするようなタブレット用プランもないし、iPadも販売していないし。

法林氏:ないんだよね。

石野氏:パソコンやタブレットを自分で買ってきてSIMを入れようとすると、楽天モバイルだとまた最大で3278円かかっちゃうわけじゃないですか。「それ、高いよね」っていう話になっちゃう。

法林氏:だったらKDDIのpovoの方がいい。

石野氏:ドコモやソフトバンクだったらプラス1000円とかで使える。楽天モバイルは1プラン2980円にこだわり過ぎている感じがしますね。

石川氏:わかりやすい1プランに縛られすぎている感じがする。

法林氏:わかりやすいけど応用が利かない、みたいな。

石川氏:競争力がなくなっている感じがします。

石野氏:楽天モバイルはApple Watchの「電話番号シェアサービス」を月額550円で提供していて、ああいう風にオプションとして何かやるという手はあるし、会長の三木谷さんは「オプションは頑張って獲っていきたい」と普通のキャリアみたいなことを言っていたので、そういうやり方があるのかなと思いつつ、やるんだったら春商戦に向けてやろうよ、とはちょっと思ったところです。

通話無料のRakuten Linkがあっても通話定額を勧める

房野氏:楽天モバイルが1プランにこだわっている理由は何でしょうか。総務省と約束しているとか?

石川氏:武田良太元総務相や菅義偉元総理が「(携帯電話料金は)わかりにくい」と言ったことの影響はあるかもしれない。

石野氏:アンチテーゼかな。既存キャリアのプランは複雑だと言いたいため。

石川氏:そこが楽天モバイルの原点なので。だから「0円」をやめる時も、引き続き0円の人とRakuten UN-LIMIT VIIを契約する人が両方存在するのではなく、「全員UN-LIMIT VIIにします」ということになった。1プランという方針が、結果として楽天モバイルを苦しめている感じがありますね。

法林氏:果たしてあれだけ0円を続けていて良かったかどうか、ちょっと疑問はあるけど、0円の人にはプラス○倍のポイントは付けないけど、○○○円以上使ってる人はポイントをプラス○倍にしますとか、ポイント付けの段階性もあったと思うし、もっといろんな方法があったと思う。楽天モバイルと楽天本体、およびポイントあるいはカード部門と、社内的なせめぎ合いもきっとあるだろうから、なかなか難しいでしょうが、もうちょっとアレンジの方法はあったと思う。今、楽天マガジンやNBA Rakutenとかが3か月間無料で利用できる特典を一生懸命アピールしているけど、あれはスタート時からやるべきだった。

房野氏:楽天モバイルユーザーのデータ使用量って、どうなんですか?

法林氏:多い人はめっちゃ多いらしい。100GBとか、そんな世界。

石野氏:二極化ですよね。ARPUが1500円くらいなので、それをベースに計算すると、平均はたぶん3GB以上10GB以下みたいな、そんなレベル。

房野氏:キャリアとしては多い方ですか?

石野氏:多い方だと思います。

法林氏:「楽天モバイル、今月はこれだけ使いました」といって使用データ量をSNSに投稿している人がいるけれど、それを見て「そんなに使える場所にいていいな」という声もあって……そう言いたくなる人もいるよね(笑)

房野氏:キャリアにとってARPUの高いユーザーが多いことは、いいことですよね。

石川氏:でも、楽天モバイルは通信料金が3000円以上にはならないので。

石野氏:だから「オプションをがんばる」って三木谷さんが言うんでしょうね。オプションを契約してもらわないとARPUが上がらない。

石川氏:他キャリアは使い放題だと6000円くらいの設定になっているので、まあまあ許されるけど、3000円でジャンジャン回線を使われたら儲からない。

法林氏:「オプションをがんばる」って考えがもう古いかもしれないよね。今、auは「バンドルだ」と言っているご時世だし。

石野氏:それから、国内で無料通話ができる「Rakuten Link」があるのに、普通の通話定額オプションを頑張って売ろうとしているのが疑問。

石川氏:Rakuten Linkを作らなければ良かったのにね。

石野氏:そうそう。「Rakuten Linkの品質が悪いって自ら認めるんですか」みたいな気分になる。my 楽天モバイルアプリを立ち上げると、通話定額を何度も勧められるんですよ。いやいや、Rakuten Linkを使わせてもらっているので、通話定額はいらないんですよって思う。

法林氏:Rakuten Linkのパソコン利用は、まだできていないよね。

石野氏:できてないですね。延期に次ぐ延期。

房野氏:楽天グループに光回線サービスはあるんでしたっけ。それとのセット割りとかは?

石野氏:光回線は売っていますが、家族割引とか光回線とのセット割りとかはないんですよ。

房野氏:なぜやらないのでしょうね。

大都市のエリアは整ってきたが、2023年の黒字化は可能?

石野氏:ちょっとびっくりしたんですが、家族から急に「楽天モバイルってどう?」って聞かれたんです。母親のドコモを楽天モバイル変えたら、もっと安くなるんじゃないかと。なぜ急に言い出したのかと聞いたら、周りの友人たちが楽天モバイルにどんどん変えているというんです。圏外になるのが心配にならないのかと聞いたら、都内は大丈夫だと。以前は地下鉄とかでauローミングになっていましたが、今はそれほどならない。確かに都内からあまり出なければ困らないかなぁと。

法林氏:郊外だと鉄塔を建てて、みたいな話になってくるので大変だと思うんですけど、最近、自分の家の周りを歩いていると、前よりはるかに楽天モバイルの基地局が増えて、ちょっとびっくりしました。僕はそんなに楽天モバイルを使うわけではないので、実感はわからないですけど、基地局の数はすごく増えている気がします。

楽天モバイルの4G用基地局

石川氏:使い放題だから、ある程度基地局をたくさんたてないと、トラフィックが分散できなくなるので結構大変ですよね。本当は5Gに持って行ければいいんでしょうけど。

石野氏:都内から出ない人だったら、そんなに困らなくなってきているかなって気はします。

房野氏:関西とか中京圏はどうですか?

石野氏:関西でも大阪とかは三木谷さんが「大阪に行ってぜひ楽天モバイルを試してほしい」と言っていたくらいです。

法林氏:神戸、大阪はすごくいいですよ。神戸は三木谷さんの地元ですから。サービス開始当初はローミングエリアも多かったですけど、今はもう自前のエリアになっている。

房野氏:都市部では結構、使えるようになってきたんですね。

法林氏:あくまでも大都市圏ですよ。それも基本的には地上の話。

石野氏:地下でも、新しいビルはJTOWERなどインフラシェアリングの会社が設備を持っていて、そこが通信キャリア4社に貸し出したりしているので楽天もエリア化されやすいです。先日、JTOWERへ話を聞きに行ったんですけど、古いビルに入っている設備が老朽化してきていて、今、ちょうどリプレイスするタイミングになり始めているんだそうです。設備を入れ替えるタイミングで楽天モバイルの設備も入れるという話は結構あるみたいなので、都内のビル内は思ったより電波が入るようになっている印象はあるんですけどね。

房野氏:地下鉄はどうやってエリア化されているのでしょう。

石川氏:かつて「トンネル協会」と呼ばれていた移動通信基盤整備協会という団体があって、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が中心となってまとめて東京メトロと交渉する。3社まとめて工事する交渉をしていたところに、楽天モバイルが乗るか乗らないかって話をしていましたが、ようやく乗ったらしいので楽天モバイルもエリア化されています。

石野氏:日本のインフラシェアリングの先駆けですよね。

房野氏:すでに地下鉄でも楽天モバイルは使われていると。

石野氏:メトロはもう、ほぼ入っていますね。基本的にアンテナはケーブルをずっと通してあって、アンテナが繋がっている先のベースバンドユニットは駅の部屋にあって、それぞれのキャリアにつながるという感じ。アンテナは同じなので、それに加えてどのキャリアを使ってもビル内や地下街の電波環境はそんなに変わらない。楽天モバイルの場合、ビル内で入らないところはauローミングするので、結構繋がるなと。

房野氏:楽天モバイルは今年、単月黒字化を狙っていますね。

法林氏:この座談会をやっているタイミング(2023年1月下旬時点)で、楽天モバイル債が絶賛販売中ですよ。あれ、がんばって売らないといけない。

石野氏:利回りは結構いいですよね。

法林氏:債券って、過去にはソフトバンクも売っているけど、額面が10万円くらいからが多い。今回の楽天モバイルの債権は額面50万円からなので、相当まとまった資金がほしいんだなと。

房野氏:黒字化できそうですか?

石野氏:うーん、結構ギリギリかもなぁとは思っているんですけど、黒字化できないことはないかなと。

法林氏:黒字化できなくはないと思うんですけど、足りないものが実はたくさんあって、端末の話もそうだし、販売のマーケティング的な戦略とか色々課題があるんです。以前から言っているように500万契約の壁って、キャリアにとってなかなか厳しいんだなというのを、最近、改めて感じる。

石野氏:楽天モバイルが黒字にならないと、楽天グループも黒字になりにくい。

法林氏:モバイル事業を切り離して、「ほかは儲かっています」と言っているけど、グループ全体を見てもどんどんプラス要素が減ってきている。楽天証券のうまみがなくなったから、SBIに変えたっていう人もたくさんいますしね。

房野氏:いずれにしても〝令和の通信キャリア〟として、黒字化をぜひ達成してもらいたいですね。

……続く!

次回は、Galaxyの新型スマートフォンについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年3月15日(金) 発売

DIME最新号はデザイン一新!大特集は「東京ディズニーリゾート&USJテーマパークの裏側」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。