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衛星データプラットフォーム「Tellus」は宇宙ビジネスのジレンマを解消できるか?

2023.02.07

宇宙産業市場の拡大と一つの“ジレンマ”

宇宙関連ビジネスは私たちの暮らしにどのようなメリットを与えてくれるのだろうか。2020年、米・モルガンスタンレー証券は「宇宙産業市場は2040年には100兆円規模を超える」との予想を出している。確かに、昨年には大手旅行会社が宇宙旅行プランを発表するなど宇宙ビジネスに関するニュースは年々増えてきているという実感はある。官民を問わず、毎年のようにロマンを刺激するプロジェクトが発表され期待は膨らむばかりだ。

一方で、「宇宙開発は私たちの生活に何の役に立つのだろうか」という疑問も芽生えてくるのも事実だ。今回、こうした疑問に応えてくれる一例として経済産業省の「Tellus」(テルース)を紹介したい。Tellusは衛星データを提供してくれるプラットフォームで、2019年、経済産業省が衛星ビジネスマーケット整備のために開始した。そして、まさにいま、このサービスが活用され様々なサービスが生まれようとしているという。

同サービスの特徴は、無料かつ誰でも利用できる点にある(※要登録)。なぜこれほどまでに大盤振る舞いのサービスが提供されているのだろうか。その理由として、経済産業省は宇宙産業、とりわけ衛星ビジネスが抱える「鶏卵状態」を指摘している。

どういうことか。近年、ベンチャー企業の参入などにより衛星の小型化、民間での打ち上げ、衛星データの収集など衛星ビジネスは年々加速している。しかし、衛星データを利用したビジネスの展開にはなかなか進んでいない。ユーザーが衛星事業者から衛星データを購入しようとすると、1シーンで数万円、場合によっては数百万円にもなり購入するハードルが高い。衛星事業者にとっても利益が出すことができない。こうしたジレンマにより次の一歩に進まず、ビジネスの停滞が起こっているのだ。

こうした現状を打破すべく、経済産業省のTellusは民間の衛星事業者から衛星データを買い取り提供しているだけでなく、気象衛星「ひまわり」やJAXAによって開発された合成開口レーダ(SAR)であるPALSAR-2を搭載した「だいち2号」の衛星データなど、多くの衛星データを提供している。

公開されているデータの一部は有料だったり、観測データが必ずしもビジネス利用に直結できなかったりする。だが、「Tellus」というひとつのプラットフォームから一元的に、様々な種類の衛星データにアクセスできるというメリットは大きい。衛星データへのアクセシビリティが改善されれば、「天気予報」や「農作物の生育把握」と言ったものから、衛星データから駐車場の車両台数をカウントし企業の業績予想を行なうことによる「株価予想」といったものまで広く活用が期待されるという。

2022年には衛星データがさらに充実

そして2022年10月12日、Tellusでは新たに宇宙実証用ハイパースペクトルセンサHISUIの衛星データの提供を開始した。HISUIは経済産業省と宇宙システム開発利用推進機構によって開発された最新のセンサで、有用性実証のために2019年に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」の船外プラットフォームに搭載され、画像の取得を行なっている。

このHISUIは何がすごいのか。センサが物質を識別する能力である波長分解能が、従来の光学センサ(マルチスペクトルセンサ)では数~十数バンド程度だが、HISUIではその能力が大きく向上しており185バンドにも及ぶ。これは、例えば宇宙空間から識別できる鉱物の種類が10種類から30種類になる程で、石油資源や鉱床を探知に大きく役立つことが予想される。経済産業省は以下のようなデータ利用実証事例を挙げている。

(出典:衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」上で宇宙実証用ハイパースペクトルセンサ(HISUI)のデータ提供を開始します

すでにHISUIの衛星データをビジネス、研究に活用したいと100件ほどの申し込みがあるという。

世界的に活気づいている宇宙ビジネス。人工衛星の打ち上げのニュースを一つとっても「ロマンがある」という視点だけでなく、「自分の業界にも関係あるかもしれない」という視点で見てみると、新たな発見やビジネスチャンスが見つかるかもしれない。

取材・文/峯亮佑


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