『スマートホームハブ』では何ができる?
サムスンは年始に開催された「CES 2023」で、スマートホームハブ『SmartThings Station』を発表した。
スマートホームハブとはその名の通り、スマートホームを実現するためのハブになる製品。スマホアプリを通じて複数の家電製品を登録、集中管理できる機能を備えていて、1つの操作で複数の家電を連動させる「ルーチン」を実行できる。
たとえば就寝時に『SmartThings Station』をワンタップすると、自動的に照明が消え、ブラインドが閉じ、エアコンの温度が下がるといった具合。『SmartThings Station』ではタップ操作だが、同様にスマートホームハブの機能を備え、音声で操作できるのがスマートスピーカーだ。
『SmartThings Station』は日本での発売は未定。15Wのワイヤレス充電もしている。
Apple、Google、Amazonほか400の企業が参加する「Matter」とは?
『SmartThings Station』が注目を集めているのは、同製品がMatterへ対応しているからだ。Matterとは、サムスンのほか、アマゾン、グーグル、アップルなど、400を超える企業が参画する「Connectivity Standards Alliance(CSA)」が開発した、スマートホーム向けの接続規格のこと。スマートホームは、前述のように家電などの製品が連動することで、スマートな暮らしを実現するものだが、現在はつながるためのしくみが、メーカーやプラットフォームによって異なっている。
たとえば「Google Home」対応をうたう家電製品を、「Amazon Alexa」で使いたいと思っても、つなげられない可能性がある。さらに同じメーカー製の家電同士でしか、つながらないというケースもある。スマートホームを実現するためにユーザーはいちいち、自分が使いたいプラットフォームに対応しているかを確認して、少ない選択肢の中から家電を買い揃えないといけないし、途中でプラットフォームを乗り換えたいと思っても自由が効かない。そこでこうした状況を打破しようと、業界標準の共通規格を目指して昨年10月に正式リリースされたのがMatterだ。
アップルの「HomeKit」やグーグルの「Google Home」、アマゾンの「Amazon Alexa」は、すでにMatterをサポートしている。アップルはiOS 16.1から『iPhone』でサポートするほか、2月3日には最新の対応スマートスピーカー『HomePod(第2世代)』をリリース。グーグルもAndroidスマートフォンや、スマートスピーカー『Google Nest』シリーズをアップデート済みだ。AmazonもAndroid用の「Amazon Alexa」アプリや、スマートスピーカーの『Amazon Echo』シリーズで対応済み。未対応のiOSアプリやThread(Matterで採用されている低消費電力な無線通信規格)も、春にはサポートすると発表している。
Matterに対応する『HomePod(第2世代)』は4万4800円。温湿度計も搭載されている。
スマートホームのプラットフォームは現状、この3社が中心となっているが、サムスンもCESで『SmartThings Station』を発表することで、自社のプラットフォーム「SmartThings」がMatterに対応したことをアピールした格好だ。
これからMatter対応のロゴを付けた家電製品やスマートロック、センサーなどのIoT製品が続々登場し、スマートホームでできることはもっと自由に、もっと便利になるはずだ。すでにSwitchBotがCESで、同社のBluetooth対応のIoT製品をMatter対応プラットフォームにつなぐための『SwitchBot Hub 2』を発表している。
『SwitchBot Hub 2』を通じて『SwitchBot カーテン』などをMatter対応プラットフォームに接続する。
一方でMatterという共通の規格ができたことで、スマホのSIMフリー化がキャリアを乗り換えやすくしたように、プラットフォームの乗り換えも容易になるだろう。どのアプリが、どの音声AIアシスタントが使いやすいのか、ユーザーのプラットフォームを選ぶ目はますます厳しくなるはずだ。これからいよいよ本格化するスマートホームのプラットフォーム争いに、サムスンはのろしを上げた。未だ様子見している日本の家電メーカーやプラットフォーマーはどう動くのか、注目したい。
取材・文/太田百合子