東証は1月25日、新市場の上場を維持する経過措置について2025年3月以降に順次終了する案を公表した。
この発表を受けて、三井住友DSアセットマネジメントは、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「東証の市場再編~上場維持の経過措置は順次終了へ」と題したレポートを発表した。レポートの概要は以下のとおり。
新市場の上場を維持する経過措置について2025年3月以降に順次終了する案を公表
東京証券取引所(以下、東証)は2022年4月4日、「市場第一部」、「市場第二部」、「マザーズ」、「ジャスダック」の4市場を再編し、新たに「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場を発足させた。その際、上場維持基準を満たしていない企業でも、新市場にとどまることができる「経過措置」を設けたが、東証は2023年1月25日、この措置を2025年3月以降に順次終了する案を明らかにした。
これまで、経過措置の期間は「当分の間」とされていたため、明確な期限の設定を望む声も市場で多く聞かれ、今回の案はこれに応える格好となった。同案によると、例えば経過措置が適用されている3月期決算企業の場合、2025年3月に経過措置が終了となり、その後1年の改善期間で上場維持基準に適合しなければ、原則として6カ月間、監理銘柄・整理銘柄に指定された上で、上場廃止となる(図表1)。
新市場で13.4%の企業は、上場維持基準に適合するための行動を数年内に起こす必要がある
2022年12月末時点における新市場の上場企業数は、プライム市場が1,838社、スタンダード市場が1,451社、グロース市場が516社となっている。東証の資料では、同時点において、新市場の上場維持基準に適合せず、経過措置を適用している企業数は、全体で510社にのぼり、内訳はプライム市場が269社(上場企業数比14.6%)、スタンダード市場が200社(同13.8%)、グロース市場が41社(同7.9%)となっている。
したがって、3市場全体で13.4%の企業は、上場維持基準に適合するための行動を数年内に起こす必要がある。なお、今回の案では、経過措置を適用してプライム市場に上場している企業については、昨年4月の新市場移行前、市場第一部に所属していた場合、審査なしで改めてスタンダード市場を選択する機会が設けられている。そのため、該当する企業の多くは、スタンダード市場に移行することが予想される。
経過措置終了や企業価値向上に関する本案は評価できる内容、今後も改革の進展が待たれる
また、東証は今回、経過措置の終了時期を明確化したことに加え、中長期的な企業価値向上に向けた取り組みの動機付けとして、4つの項目を示した(図表2)。1つ目の「資本コストや株価への意識改革・リテラシー向上」では、株価が1株あたり純資産の何倍に当たるかを示すPBR(株価純資産倍率)について、継続的に1倍を割れている企業に対し、改善策などの開示拡充を求める方針とした。
経過措置の終了時期については、決定がやや遅れ、終了までの期間もかなり余裕を持ったものとなったが、市場の声を反映したことは評価できると思われる。また、図表2の4項目は、いずれも企業価値向上につながると考えられるため、強く推進することが望まれる。新市場は、段階的な改善が行われている最中だが、プライム市場の上場企業数の絞り込みなど、更なる改革の進展が待たれる。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい