AR(拡張現実)技術を使った「ARスポーツ」という新しいジャンルが盛り上がっている。 その先駆けが『HADO(ハドー)』と呼ばれる、頭にヘッドマウントディスプレイ、腕にアームセンサーを装着して、デジタルで表示した仮想のボールを雪合戦のように投げ合うARスポーツだ。まるでアニメやゲームのような体験を現実で味わえると人気を博し、世界39カ国以上、100カ所以上で店舗を展開。世界大会が開催された他、福岡第一高等学校ではHADOを部活動として採用! 新スポーツ、新エンタメとして注目の競技だ。次世代のスポーツ『HADO』をDIME Gaming所属プロゲーマーのRaitoが体験した!
話題のARスポーツ『HADO』実際に遊んでみた!
「ARスポーツ」という、拡張現実(Augmented Reality、AR)の技術を活用した新しい競技が徐々に話題を集めている。ひときわ注目を集めているのが『HADO』だ。
その名の通り波動の弾を撃ち合い、より多く相手に当てた方が勝利するという、シンプルなルールのARスポーツだ。一体どんなスポーツなのか、実際に体験するためにDIME Gaming所属のRaitoがお台場の「HADO ARENA お台場店」へ実際に行ってきた。
【店舗情報】
HADO ARENA お台場店
東京都港区台場1-7-1 アクアシティお台場5F
070-4802-3190
info_odaiba@meleap.com
平日14:00~22:30、土日祝10:00~22:00
今回遊び方をレクチャーしていただいたのは、HADOインストラクターの武藤郁さん。HADO ARENAには専属のインストラクターが常駐しているため、初めての人でも安心だ。
たまたまHADO関連イベントのナレーションの仕事を受けたところ、HADOの魅力にハマったそう。趣味はフラダンス。
HADOで使用するのはヘッドマウントディスプレイとアームセンサー。プレイヤーはディスプレイ上に表示されたAR映像を見ながら戦う。
「ヘッドマウントディスプレイが思っていたより軽くて、頭が重くて疲れるということはなさそう。左右と下部が大きく開いているおかげで、実際の視界も確認しながら戦えるからより拡張現実のような感覚を楽しめますね!」(Raito)
ヘッドマウントディスプレイとアームセンサーにはそれぞれスマートフォンを使用しており、ヘッドマウントディスプレイの映像はカメラのリアルタイム映像とARが合成されたものが表示されている。
アームセンサーを装着した腕を上げるとエナジーボールのエネルギーがチャージされ、前に素早く突き出すことで発射する。腕を下げると、弾を防御するシールドのエネルギーをチャージ。チャージが完了した状態で腕を下から上に振ると、シールドを展開することができる。
4つあるライフにエナジーボールを当て、全て破壊すると1ポイントを獲得できる。制限時間80秒内でより多くのライフを削りきり、ポイントを多く獲得した方の勝利となる。
「油断しているとすぐエナジーボールに当たっちゃうから、思っていたより全身を使って激しく動かないといけないですね。でもドッジボールのように体格差にかかわらず同じようにボールを投げられるから、リアルのスポーツが苦手な人でも、HADOならヒーローになれるチャンスがあるかも!」(Raito)
エナジーボールは最大5回分までチャージして、連続して発射できる。ボールの照準はヘッドマウントディスプレイを動かして合わせる。ライフは身体の中心から放射状に表示され、身体の動きに合わせて移動する。
勝負の鍵を分けるのが、エナジーボールやシールドのパラメータカスタマイズだ。弾速、弾の大きさ、チャージ速度、シールド耐久値の4種類のパラメータにポイントを振り分けることで、それぞれの能力が向上する。調整の仕方次第で次の試合内容が大きく変わるため、パラメータの振り分けはとても重要だ。
「全てのパラメータに割り振ることができないので、戦略が問われる部分。団体戦ならチームメイトで作戦を立てて、役割をうまく分担してパラメータを割り振る必要があるので、”やり込みがい”がありますね。ゲーマーの血が騒ぐ!」(Raito)
パラメータのカスタマイズは試合間で行う。調整可能なポイントは合計6ポイントで、各能力値の合計が10になるように割り振る。試合中にパラメータの変更はできない。
一通りレクチャーを受けたところで、インストラクターの武藤さんと早速実戦!
「身体の使い方が全然違う! しゃがんだり身体を左右に動かしたりして弾を避けつつも、頭のわずかな動きで的確にこちらのライフを狙って弾の照準を合わせてくる! さすがHADO上級者、参りました……ARスポーツ、奥深い!」(Raito)
80秒間常に動き続けなければいけないので、想像以上に体力を使う。普段使わないような身体の動かし方をするので、ゲーム感覚で楽しめるのにいい運動になる。
ARがもたらす、誰でも平等にスポーツを楽しめる世界
2016年のローンチ以降、世界中で350万人以上がプレイしてきたHADO。生みの親は運営元である株式会社meleap代表取締役の福田浩士さん。子供の頃の夢だった『マンガやゲームのような必殺技を撃ちたい』という想いを形にしたものだと、イベント&プロモーション担当の奈良歩さんは語る。
「誰しも一度は憧れたことがある空想を現実に再現させたようなサービスだからこそ、世界中で親しまれているのだと思います。また、開発当初は複数人でバーチャル上の共通の敵を倒すというサービスを構想していたのですが、対戦形式のものへと変化していきました。対人戦だからこそのドラマやコミュニケーションが生まれるのは『HADO』の魅力といえます」
ARスポーツには、リアルスポーツにはない強みがいくつもある。その一つがソフトウェアやハードウェアを『アップデート』できる点だ。
「現在は目を覆うヘッドマウントディスプレイを装着していますが、いずれメガネ型デバイスなどよりコンパクトなものへと進化するでしょう。ソフトウェアも技術革新によりプレイの快適さは向上していきます。また、現在は限られた空間内でしかプレイできませんが、いずれは開けた場所さえあればどこでもできるようになると思います」(奈良さん)
専用コートの両側の壁に描かれた模様は、ディスプレイのキャリブレーションとしての役割も担っている。模様から位置情報を読み取ることで、ARの表現が正しくディスプレイ上に表示されるようになる。
また、身体能力による差が生まれづらいのもARスポーツの魅力だ。
「ドッジボールだと投擲能力が高い人が強い構図になりますが、HADOのエナジーボールは誰がどう投げても同じように飛びます。ARスポーツであれば、年齢や性別、身体的ハンディキャップを超越して戦うことができます」(奈良さん)
今後は学校教育など若年層向けの取り組みをより進めていきたいと語る。
「福岡県の福岡第一高等学校ではHADOを部活動として取り組んでおり、大人のチームと対等に競い合っています。また、東京学芸大学附属世田谷小学校でHADOを使った研究授業を行った際は、普段の体育の授業ではあまり活躍できない子が、ゲーム好きな経験を活かして作戦を立てるなど、新たな関係やコミュニケーションが生まれていました。学生さんからの満足度も高く、教育との親和性は高いと考えています。今後はよりコンパクトかつどこでも遊べるデバイスの開発により、日常的に親しめるような世界を作っていきたいです」(奈良さん)
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。