発炎筒は、車に備えておかなければならない「非常信号用具」です。助手席の足元付近に設置されていることが多い発炎筒には、有効期限があるのをご存じでしょうか。また、近年では、有効期限切れの心配がないLEDタイプの非常信号用具も増えてきています。では、発炎筒とLEDの非常信号用具の違いとは何なのでしょうか。今回は、いざというときに使う発炎筒について解説します。
そもそも「発炎筒」とは?
発炎筒(自動車用緊急保安炎筒)とは、道路運送車両の保安基準第43条の2に定められている「非常信号用具」です。条文には、「自動車には、非常時に灯光を発することにより他の交通に警告することができ、かつ、安全な運行を妨げないものとして、灯光の色、明るさ、備付け場所等に関し告示で定める基準に適合する非常信号用具を備えなければならない。ただし、二輪自動車、側車付二輪自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車及び被牽引自動車にあっては、この限りでない」と記載されていることからも、車に備え付けておかなければなりません。
また、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第64条には、次のように定められています。
非常信号用具の灯光の色、明るさ、備付け場所等に関し、保安基準第43条の2第1項の告示で定める基準は、次の各号に掲げる基準とする。
1.夜間200mの距離から確認できる赤色の灯光を発するものであること。
2.自発光式のものであること。
3.使用に便利な場所に備えられたものであること。この場合において、次に掲げるものは、この基準に適合しないものとする。
イ.運転者席または運転者の乗降口において直接確認できない箇所(ドアポケット、グローブボックス等であって、他の物品の収納等により直接確認できなくなるおそれのある箇所を含む)に備えられたもの(運転者に当該箇所を認知させるためのラベルの貼付等の措置が講じられている場合は除く)
ロ.容易に取り外しができないもの
4.振動、衝撃等により、損傷を生じ、または作動するものでないこと。
次の各号に掲げるものは、前項の基準に適合しないものとする。
1.赤色灯火の発光部のレンズの直径が35mm未満の赤色合図灯
2.豆電球2.5V・0.3Aの規格またはこれと同程度以上の規格の性能を有しない電球を使用した赤色合図灯
3.JIS C8501「マンガン電池」のR14P(いわゆるマンガン単二形乾電池)の規格もしくはJIS C8511「アルカリ一次電池」のLR6(いわゆるアルカリ・マンガン単三電池)の規格またはこれらと同程度以上の規格の性能を有しない電池を使用した赤色合図灯
4.灯器が損傷し、もしくはレンズ面が著しく汚損し、または電池が消耗したことにより性能の著しく低下した赤色合図灯
5.JIS D5711「自動車用緊急保安炎筒」の規格またはこれと同程度以上の規格の性能を有しない発炎筒
6.損傷し、または湿気を吸収したため、性能の著しく低下した発炎筒
このように発炎筒には、実は細かな規定があるため、保安基準に適合するものを使用しなければなりません。
一般的な火薬式の発炎筒は有効期限が4年
一般的に備え付けられている発炎筒は、火薬式のタイプです。この火薬式の発炎筒は、マッチのように発火部分をすり薬で擦って発火させます。使用回数は1回で、燃焼時間はおよそ5分です。また、使用期限は製造から4年となっているため、定期的な交換が必要となります。
発炎筒は、明るい光とともに煙も発生するため、車内で使用したり、トンネル内での使用したりすると、視界が悪くなったり、車が燃えてしまったりする可能性もあるため、発炎筒を使うときは煙がこもらない場所で使うようにしてください。
実際、駐車中に幼児が発炎筒を触っているうちに発火させてしまい、車に燃え移り全焼するという事故がありました。そのため、国土交通省も発炎筒の使用について警告しています。
発炎筒は、このような危険もあるため、使用する際には十分な注意が必要です。
近年増えてきたLEDタイプの非常信号用具
近年増えてきているLEDタイプの非常信号用具は、火薬を使用していないため、煙が発生したり、車が燃焼したりする心配がありません。
また、火薬式のような使用期限はありません(定期的な電池交換は必要)。さらに、何回でも繰り返し使うことができ、約8時間も継続して使用することができます。そのため、非常信号用具として車に備えておくのであれば、LEDタイプの方が良いというケースもあるでしょう。ただし、保安基準に適合したタイプでなければ車検に合格できないため、車検対応の非常信号用具を選ぶようにしてください。
車検はどちらでも通る!
発炎筒であっても、LEDの非常信号用具であっても、保安基準に適合していれば車検に合格します。そのため、どちらを選んでも良いとはいえますが、車両発火の危険性や使用できる時間を考えると、LEDタイプの非常信号用具の方が良いといえるかもしれません。ただし、煙による危険認知は発炎筒ならではの機能のひとつであるため、時と場合によって発炎筒とLEDの非常信号用具を使い分けるのがベストだといえるでしょう。
取材・文/齊藤優太
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