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「手を動かしてから口を動かす!」ゼロからプログラミングを学んで人気ボードゲームを作ったコロコロ編集部員の突破力

2023.01.25

2021年11月、小学館からボードゲーム「ロジカル真王」が発売された。小学館コロコロコミック編集部員のアイデアがかたちとなり、累計1万2000部(2022年12月時点)を売り上げている。さらに、2022年12月にはNintendo Switch版の発売も開始。シンプルながら奥の深いゲーム性で、子供だけでなく大人も楽しめると話題を呼んでいる。

今回、「ロジカル真王」のアイデアをかたちにした小学館コロコロコミック編集部の杉本和希さんと、Nintendo Switch版の「ロジカル真王」の開発を担当されたFuRyuのゲームプロデューサー大和田智史さんに、誕生秘話や開発での試行錯誤についてお話を伺った。

*本稿はインタビューから一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

論理的思考+運が勝敗を決める!

ロジカル真王は、二人対戦型のボードゲーム。両者が0から9までのカードを10枚持った状態でスタートし、そのうち2つの数字を隠し合い、カードの効果を使いながら相手の隠した数字を当てていく。シンプルなゲーム性だが、論理的な思考だけでなく運の要素を程よく取り込んでいる点が特徴だと杉本さんは話す。

「『真王』と書いて『シンキング』と読むんですが、名前の通り、少し頭を使って相手を倒すゲームです。将棋のような〝詰め〟も楽しめるんですが、それだけではなく運の要素も程よく入っています。だから、運がいい人がミラクルを決めて勝てちゃうこともあるんです。カードにはそれぞれ『効果』があって、適したタイミングで使うと強い、弱いがあるんですが『相手がそのカードを使うはずなのに使ってこなかった。ということは、きっと隠しているだろう』とか、そういった読み合いが生まれるんです。相手の行動パターンをすべて考えた上で、どれが一番適切なのかを読みながら戦うゲームです」(杉本さん)

入社してからの思いをコロナ禍でかたちに

杉本さんは入社以来、「ボードゲームを作りたい」という思いがあったという。コロナ禍になり、その実現に向け動き出した。

「実は、ボードゲームを作ってみたいという気持ちは、入社してからずっとあったんですが、なかなか作り出すタイミングがなくて…。そんな時にコロナ禍になり、自分が抱えている仕事が全部ストップしてしまったタイミングがあったんです。自宅にこもる時間が増えたので、その際『コロナが回復したタイミングで、自分の作ったものが世の中に出ないかな』と考え始めました」(杉本さん)。

ゲームのアイデアが浮かんだのは、ふとした瞬間だったと杉本さんは振り返る。

「会社の帰り道に、坂道を登っていたらふと『お、これだ!』と思い浮かんだというのが正直なところです。しかも、そのタイミングでもう0から9までの10枚のカードがあって、相手の数字を当てるというところまで決まっていて。二回攻撃とか、各種カードを交換するなどの細かいルールは、その段階で浮かんでなかったのですが、ルールの全景みたいなのは、ほぼほぼその一瞬のタイミングで浮かんだ感じですね」(杉本さん)。

そこから杉本さんは、編集部に企画を出すことになるが、本気度を見せるために、自らある程度かたちにした状態で持ち込んだという。

「実は、ロジカル真王の企画を提出した時、紙の企画書ではなくて、自分でプログラミングをしてパソコンで遊べる状態にしたURLを渡したんです。人から説明を聞いても、その人の気持ちによっては、疲れている時に説明されたら嫌だなと思ったり、よくわからないなとなったりすると思うんです。でも、もう遊べる状態にして『好きな時に遊んでください』と渡しておけば、自分がやりたいと思う時に遊んでくれるかなと。本気度やゲームの面白さも全部伝わると思ったので、自分でプログラミングしたものを提出しました。編集部としては『おお、ここまで作ってすごいね!』と言ってくれて、それからはトントン拍子に話が進んでいった感じです」(杉本さん)。

ゲームと同時に漫画も展開!

杉本さんがプログラミングをして作成したゲームは、その完成度の高さから、コロコロコミック編集部だけでなく、多くの協力者を得ることになる。

「当時担当していた『ベイブレードバースト』の漫画家の森多ヒロ先生にも、ゲームのURLをお渡しして遊んでもらったんです。その時、森多先生から『面白いです。これは漫画にできる。イラストまで書くので、一緒に作りましょう!』と言っていただいて。森多先生と一緒にゲームだけでなく、漫画も並行して作り始めました。漫画の中では『頭を使う主人公たちのカッコ良さを見せたいのと、その戦いで最終的に勝った者は王様になる漫画にしましょう』と話し合いの中で決まりました。その時にちょうど『ロジカル真王』というタイトルが思い浮かんだんです」(杉本さん)。

https://www.corocoro.jp/episode/3270296674393275156

開発で苦労したのは未経験の「プログラミング」

杉本さんは元々、プログラミングは未経験。ゲームをかたちにするために、一からプログラミングを学んだという。

「ルールは1分ぐらいで思い付いて、その後の調整もそんなに時間はかかりませんでした。ゲーム自体はそこで完成していますが、それを『人に伝えるためにどうするか』で悩みましたね。オンライン上で友達にトランプで遊んでもらいながら調整をしていたんですが、それでは埒が開かないなと思ったのと、これを編集部に持っていってもOKしてくれないだろうなと思ったので、自分でプログラミングすることにしたんです。仕事が終わってから、夜から朝までの時間と土日はずっとプログラミングしている感じでしたね。このゲームを作ることだけ考えてやろうと思って」(杉本さん)。

そうして完成したプロトタイプについて、Nintendo Switch版の開発を行ったFuRyuの大和田さんは次のように振り返る。

「おそらく、小学館コロコロコミック編集部内で杉本さんからプレゼンをされた人と同じ衝撃を、FuRyu側としても受けました。『え、出来ているの?』と(笑)。言葉で説明されるでもなく、映像で見せられるでもなく、実物としてどんな人が触っても間違えようがなくイメージが伝わるというところが、すごいと思いました。開発する側としても、とてもありがたかったですね」(大和田さん)。

さらなる「進化」を目指し、コンシューマーゲーム化を開始!

こうして世に出た「ロジカル真王」は、コロコロコミックの読者だけでなく、大人たちにもその魅力が広がっていく。

「発売後の反応は、とても良かったですね。カードゲームやボードゲームが好きな方からも高評価でした。半年に一回開催されているゲームマーケットで発売させてもらい、そこで大人のボードゲームユーザーにも認知していただきました。年代問わず面白いと言ってくれたのも嬉しかったです」(杉本さん)。

発売後、瞬く間に評判を集めた「ロジカル真王」。その後すぐに、コンシューマーゲーム化の話が進む。

「ゲームが発売されてからは、Twitter上でワッとバズるような感じで、すぐに重版が決まりました。そのタイミングでFuRyuさんから『これコンシューマーゲーム化するのはどうでしょうか?』とすぐに連絡が来て。僕はその時に『これすぐ出るんだ!嬉しい!』と思ったんですが、実際にはそこから半年ほどかかりました(笑)」(杉本さん)。

FuRyuの大和田さんは、Nintendo Switch版の開発にあたり、何よりもゲームの面白さを伝えることを意識したという。

「ロジカル真王のルール自体が良くできていて、シンプルなのに奥深い。誰でも一回やれば理解できて、リプレイアビリティがある(繰り返し遊べる)というそのシンプルな美しさを阻害せずに、ゲームにしっかり落とし込みたいなと思いました。いろいろと付けたし過ぎると良くないだろうというのがあったので、無駄になりそうなところは省いて削ぎ落とし、面白さを実現しなきゃいけないとすごく意識しましたね」(大和田さん)。

大和田さんは、杉本さんの行動力が「より良いものを作ろう」という社内の雰囲気に影響を与えたという。

「開発中、杉本さんに攻撃演出のビジュアル動画をお送りすると、夜中のどんな時間でも『このエネルギーの弾が相手に飛んでいく様は、もう少しこうした方がいいと思います!』などと、すぐに返信が来ました。その気迫に押されて、開発現場でも『こんな意見もらっているから、なるべく反映しよう』『むしろそれを上回るものを次は提案しよう』と、そういう連鎖が生まれたんです。やっぱりモノを作っていくときの楽しさとか、良いものが出来ていく過程で、とても良い流れがあったと感じます」(大和田さん)

杉本さんは、Nintendo Switch版の開発にあたり「デジタルゲームでも遊べる」ではなく「進化する」ことを目指したと振り返る。

「今回目指したのは、『ボードゲームのロジカル真王がデジタルゲームで遊べる』ではなくて『進化する』という点です。特に、相手の数字を攻撃して、それが当たっているかの演出やドキドキ感は、デジタルゲームの方が確実に表現できているなと思っています。勝った時の爽快感も、デジタルゲームならではだと思います」(杉本さん)。

Nintendo Switch版ならではの楽しみ方について、杉本さんと大和田さんは次のように話す。

「このゲームは、日本語、英語、簡体字、繁体字、韓国語の5カ国語に対応しています。全世界同時で発売して世界中のプレイヤーと対戦できるので、そこも楽しんでもらいたいと思っています。きっと、いろんな個性があるプレイが出てくるはずです」(杉本さん)。

「オンライン対戦機能もバッチリで全世界のユーザーと遊べますし、あとランク戦も楽しめます。戦いに勝つとポイント(レート)を入手できるんですが、そのポイントが高い人はより上のランクで腕試しができる要素もしっかり備えています。ランク戦でのオンライン対戦も楽しんでもらいたいですね」(大和田さん)

「やればできる!」「手を動かした後に口を動かせ!」

今回のロジカル真王の開発を通じて、杉本さんと大和田さんは、次のようなことを学んだという。

「『実行力』とも言えると思いますし、もっと言うと、やっぱり『手を動かした後に口を動かせ』というところは、今回の開発を通して杉本さんから学んだところです。開発中に杉本さんに対して『喉元にナイフを突き立てるような感じで仕事されますよね』と言ったことがあって。『もう俺はこれだけ動いた。お前はどうやるんだ』と、とても近い距離で迫られるというか(笑)」(大和田さん)

「『やればできる!』。僕、実はコロコロコミック編集部に入ってから、自分でコンテンツを作ってみたい気持ちがあったものの、なかなか上手くいかなかったんです。それは権利だったり、お金だったりという問題もあると思うんですが、一番の問題は『アイデアがなかったこと』だと思っています。そのアイデアを生み出すのは、やはり自分でしかできないんだと思って。今回、アイデアを一旦自分で形にするところまではやれば、FuRyuさんみたいに協力者が出てきてくれるんだなと学びました。その意味を込めて、『やればできる』(笑)。プログラミングを自分でやらなかったら生まれなかったと思います」(杉本さん)。

「ロジカル真王」のアイデアをかたちにした小学館コロコロコミック編集部の杉本和希さん(写真左)、Nintendo Switch版の「ロジカル真王」の開発を担当されたFuRyuのゲームプロデューサー大和田智史さん(写真右)

ロジカル真王公式サイト
Nintendo Switch版ロジカル真王公式サイト

取材・文/久我裕紀

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