培った技術力を駆使したこだわりのブランド「NC PRODUCTS」
持続可能なものづくりに加え、ハイブランドからカジュアル、ワークウェアまで手掛ける同社が今まで培ってきた技術や知見をNC PRODUCTSで存分に活かしている。
デニムパンツの「BACIC LINE」は端材を使った再生デニム。製造工程で出た裁断くずや端材を、繊維メーカー「クラボウ」の裁断くず再生技術「L ∞ PLUS(ループラス)」によって再生糸に生まれ変わらせ、経糸に再生糸、緯糸にはオーガニックコットンを使用した再生デニムを製作している。
再生デニムはすでに市場に出ているが、通常の再生デニムは3~5%程度が主流なのに対し、NC PRODUCTSは再生率が17%と非常に高い比率になっている。実際には17%が最大値とされ、クラボウの中でも一番高いリサイクル率であり、これ以上比率を高めると糸の繊維が切れやすくなってしまうという。
縫製にも同社ならではのこだわりがある。量産されるデニムは縫製作業を単純化するため、多くが直線的な縫い方を採用しているが、この結果、動きにくさやつっぱりを感じる場合もある。
NC PRODUCTSではスラックスなど生地の薄いパンツに使われる立体的な縫い方を採用。デニムのような厚い生地では技術を要するため通常は使われないが、立体的な縫製により股の可動域を高めて動きやすくし、お尻がすっぽりと入るフィット感のある履きやすいデニムパンツに仕上げている。
ウエストベルトにベルトループを挟み込んで縫製することで強度を高めている。ウエストベルトも通常はまっすぐなものが多く、しゃがんだり、前屈みになったときに背の部分が浮いてしまうが、NC PRODUCTSではカーブした形を採用し、お腹周りにフィット感がある。ポケットはリベットを省略した代わりに閂止めで強度を高めるなど、縫製工場だからこそできるこだわりが随所にある。
サイズは26インチから36インチまで2インチ刻み。価格は2万6400円。オンライン販売のため、初回購入時はトライアルサービスの利用を推奨している。希望のサイズと前後1サイズの計2本のサンプルに、採寸・裾上げガイドを同封して送付。裾上げを希望する際はダブルクリップで留めた状態で返送する。
受注生産制のため最大3か月後の納品となる。トライアルサービスは無料だが、購入を見合わせる場合は返送送料1000円と振込手数料などの費用が負担となる。
「PATCHWORK LINE」はデニム製作の過程で出る残反を使ったパッチワークのクッションカバーとラグ。デニム生地は魅力的で多様な表情を持ち、他の服地よりも強度に優れた特性があることから、残反をパッチワークでつなぎ、クッション、ラグマットのインテリアラインとして製作した。ブルーミックス、ブラックミックスの2種類があるが、その時に出た残反を使用するため色や組み合わせが違う一点ものになっている。
生地の厚みや動きも異なる残反なので、接合部を合わせるのに高度な技術が必要になるが、同社の持つ縫製技術を駆使して精巧に仕上げている。クッションカバー(45㎝×45㎝・中材なし)が9900円、ラグ(60㎝×80㎝)が2万2000円。
さまざまな分野のクリエイターとのコラボレーションに挑戦する「SPECIAL EDITION」では、第一弾としてブルックリンを拠点に活動する現代アーティスト・山口歴氏とコラボ。巨大な立体作品も手掛ける山口氏は、制作時に着用するワークパンツスタイルのデニムパンツをNC PRODUCTSに依頼。
膝をついて作業するために膝あてをつけたり、ポケットが付けられるスナップを背部に加えるなどの特別仕様になっている。制作現場で山口氏が作業した際に付いたペイント状態のデニムパンツを1点もののアートピースとして抽選で販売する。今後は無地の同型製品を販売予定だ。
【AJの読み】児島の縫製工場が世界に向けて問う新ブランド設立とB Corpへの挑戦
国産ジーンズ発祥の地の児島で、井筒社長の祖父が1965年に縫製の仕事を開始、ナイスコーポレーションとして設立したのは1990年。企画から、パターン作成、裁断、縫製、洗い・加工、プリント、仕上げ、検品、出荷にいたるまで総合的に管理する地域型ワンストップ生産を行っている。
デニムの生産地として知られる児島を拠点としている同社が培ってきた、技術、知識、経験を活かし、社会的価値を持った企業としての在り方をデニムという素材を通じて社会に提示したのが新ブランドのNC PRODUCTSだ。
若い世代がなかなか集まらない地方の製造業だが、同社では20~30代の若いスタッフが多く働いている。新ブランド設立と並びB Corp申請は同社にとって大きな挑戦でもあるが、B Corpの認証取得に動いていることが若い社員から評価され、認証取得への動きが入社の決め手になった来春入社の社員もいるとのこと。
ナイスコーポレーションの取り組みが、地域やアパレル業界にどのような変革をもたらすのか、さらに世界に向けてどのように発信していくのか今後も注視していきたい。
文/阿部純子