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中村憲剛も納得!?お得感、友達招待、メタバース、ショート動画、若者たちが示したサッカーファン拡大への秘策

2023.01.25

若者世代が示したサッカーファン増加へのキーワード

母校・中央大学の学生からサッカー低関心層・獲得策のプレゼンを聞いて感想を語る中村憲剛氏(写真提供=JFA)

 日本代表がドイツ・スペインという世界的強豪国を撃破した2022年カタールワールドカップ(W杯)から約2カ月。森保一監督の2026年北中米W杯までの続投も決まり、日本サッカー界は新たな方向に進み始めている。

 サッカーへの注目度は今のところ高いまま維持されている様子だが、3月にはワールド・ベースボール・クラッシック(WBC)、9~10月には2023年ラグビーワールドカップ(フランス)も開催される。人々の関心は移ろいやすいだけに、日本サッカー協会(JFA)やJリーグは危機感を持ってプロモーションに力を入れていくべきだろう。

 その一環として、JFAが中央大学と連携し、2022年4月から行ってきたのが「JFA×中央大学・アスパス!協働プロジェクト」だ。

 JFAが開発し、2022年11月から公開したアプリ「JFAパスポート」に加える新規企画を学生側がプランニングし、JFAの役員や開発担当者の前でプレゼンテーションするという大がかりな内容。授業は合計4回で、最終的にプランが採用に至れば実用化されるということで、学生側もモチベーションを高めていた。

 2010年南アフリカW杯日本代表で、現在はJFAロールモデルコーチを務める中央大学OB・中村憲剛氏をプロジェクトリーダーに据えたことも、本気度を高める一環。その中村憲剛氏本人が同席した最終プレゼンテーションが1月16日に行われ、驚くべきプランがいくつも出てきたのである。

大学生たちは本格的にまとめた資料を示しつつ、丁寧にプレゼンした(写真提供=JFA)

JFAパスポートのDL回数を引き上げる秘策は?

 1グループ目が提示したのは、ポイント機能の追加。今の大学生世代はポイントを集めてお得なサービスを受けられるアプリのダウンロード(DL)回数が多いという傾向を調査したうえで、この提案を立案したという。

 JFAパスポート内に試合予想コーナーを設けて予想したり、記事や漫画の閲覧をするなど、ポイントの貯め方もいくつか設定。ポイントはJFAのオフィシャルパートナーであるファミリーマートやアディダスなどで利用できる仕組みだ。開発コストはかかるが、大幅なDL数増加が期待できるという。

 これを聞いた中村憲剛氏は「僕自身はそこまで積極的にアプリクーポンをDLしないけど、お得感に着目したのはいい目線。前向きに受け取りました」と語り、「アプリ=お得」という若い世代の価値観を再認識した様子。確かに数えきれないほどのアプリがある中、DLに踏み切らせるためには「強い動機」がなければ難しい。その現実を理解しなければ、先には進めないだろう。

サッカーへの関心がない・低い人はなんと80.9%も!

 それを受け、2グループ目が提案したのは、友達招待の強化だった。中央大学内での調査によれば、サッカーへの関心がない・低い人は80.9%もいたというが、一方で「初観戦のきっかけの約70%が友人・家族からの誘い」「20代の約30%が誘われたらスタジアムに行きたいと考えている」「約60%が観戦に他の人を誘う傾向がある」といったデータもあった。友達招待機能の強化はDL数の増加に直結するのだ。

 それに向けた1つのアイディアが、日本代表戦でのシュートゲーム参加。友達紹介でアプリをDLした人は2人揃ってプレーでき、得点によってサイン入りユニフォームやグルメクーポンなどをもらえる形。そういう楽しみがあれば「また観戦に来たい」と思ってもらいやすい。

 もう1つはサッカークイズの導入。クイズに答えてポイントを獲得すれば、様々な特典を受けられるだけでなく、サッカーへの知識もアップし、低関心層を高関心層へと引き上げる一助にもなる。こちらもシステム開発コストがかかるため、実用化のハードルは高いが、「友達招待の強化」という発想は、人々を取り込むうえでの必要な視点と言っていい。

中村憲剛氏も真剣な表情で話を聞いていた(写真提供=JFA)

 次の3グループ目は、「メタバース(インターネット上に存在する三次元空間)」を活用したスタジアム模擬体験を提案してきた。

サッカーにより関心を持つためには、ABEMAでカタールW杯を解説した本田圭佑選手のように面白く分かりやすい解説がほしい。サッカーを通して人々がつながれるメタバースアプリがあれば、解説の可視化も図れるし、実際には会えない選手との交流もできる。友達の輪も広がるし、新たなファン層を巻き込むことができる」と学生は資料を使いながら熱心に説明していた。

 メタバースというアイディアは年齢層の高い40~50代以上にはあまり思いつかないだろう。とはいえ、現実にはアメリカのIT大手・メタのマーク・ザッカーバーグCEOが年間100億円(約1.3兆円)を投資することを表明するなど、注目すべき成長分野であることは間違いない。

「最新のテクノロジーを考えながら今テンスを考えていける妄想が高まった」とJFAの担当者もコメントしていて、彼らの発想力に驚かされた様子だった。

2022年11月に公開された「JFAパスポート」を知らない人は93.6%。現状をどう変える?

 そして最後の4グループ目は、ショート動画を有効活用したDL喚起策を提示していた。

 彼らはまず「中央大学でJFAパスポートを知っているかというアンケートを実施したところ、知らない人が93・6%もいた」という衝撃的な数字を披露。一方で「ショート動画を見るという人が82.4%いて、興味のないジャンルでも何となく見る人が多いと回答した人も76.1%いた」というデータも紹介。低関心層をショート動画で取り込む策が有効だと考えたようだ。

 その一例としては選手のチャレンジ動画。サッカー漫画の技の再現などはサッカー系ユーチューバーの間でもよく行われているが、比較的人気の高いコンテンツ。それは確かに生かせるだろう。一方で、選手同士の会話や食事、休日の過ごし方などピッチ外の様子を流して親近感を持ってもらうという提案もなされた。W杯期間中にJFAの公式密着動画「Team Cam」の再生回数が爆発的に伸びたことを考えると確かに有望な策と見ていい。

 Bリーグ・川崎ブレイブサンダーズはこうした仕掛けを行った結果、ユーチューブの再生回数が3年で49倍、ホームゲームの来場者数が1.5倍に増えたというから、成功例からフィードバックすることもできる。すぐに実用化するとしたら、このプランが一番近いのではないかと感じさせられた。

中村憲剛さんの話を真剣な表情で聞き入る学生たち。若者たちの力は重要だ(写真提供=JFA)

少子化の今だからこそ、若い世代の話に耳を傾けるべき

 この4つの提案から分かることは、大学生世代の若者の興味関心を引くためには、「お得感のあるコンテンツの提示」「友達招待による低関心層の誘導」「メタバースなど新たなテクノロジーの有効活用」「ショート動画を使った需要喚起」…が、重要なカギになり得るということだ。これらのポイントは新規サッカーファンの獲得にとどまらず、他のビジネスにもフィードバックできる可能性がある。若い世代の意見に耳を傾けるという今回のJFAの取り組みは非常に有益だったのである。

僕らの世代にはなかった発想やアイディアは本当に有難かった。正直、僕らサッカー村の住人だけだとここまで話は膨らまない。それだけ無関心層が置いてきぼりになってしまうということなんです。彼らの提案からいろんなことを学ばさせられたし、大きな可能性を感じた。これからもサッカーファミリーの一員として盛り上げてほしいと思います」と中村憲剛氏も学生たちに心から感謝した。

 学生側もこの協働プロジェクトとカタールW杯を経て、サッカーへの見方が変わり、代表の様子を逐一、チェックするようになった人もいたという。

 こうしてJFAと学生が接点を持ち、少しずつ歩み寄ることで、新たなファン層を増やすという今回の試みには確かな成果があった。少子化が進む日本だからこそ、若者世代の力をもっと積極的に借りていいのではないだろうか。

プレゼン後に参加者全員で記念撮影(写真提供=JFA)

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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