少子高齢化、人口減少、非正規雇用の増加などの影響で、あらゆる産業において人材不足が深刻化している。こうした中、より良い環境を求めて転職を考えているビジネスパーソンや、従業員の離職・定着を懸念している企業はどの程度存在するのだろうか?
グローバル人材の転職を支援する人材紹介会社「ロバート・ウォルターズ・ジャパン」はこのほど、首都圏、関西圏を中心に国内で働く会社員864人と、国内196社が回答を寄せたアンケート調査結果をもとにした国内の採用・給与動向を発表した。
【転職】66%が1年以内の転職を視野に入れており、うち半数は転職活動中
66%の会社員が、1年以内に転職を検討していると回答した。また、そのうちの約半数はすでに新しい転職先を見据え転職活動を始めていることがわかった。一方、回答企業の76%が、従業員の離職・定着率が懸念事項であると認識している。
では、実際に企業は従業員の定着へ向け、どのような取り組みをしているのだろうか。
企業が従業員の定着率向上対策として行っている施策内容は、1位「ハイブリッド・ワーク制導入」(63%)、2位「トレーニングやスキルアップ支援向上」(62%)、3位「ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み」(44%)だった。
企業は高齢化社会による人材不足の中、離職者数が増えることは企業の存続問題にも関わることから、従業員の定着へ向けた取り組みをさらに強化していく必要があると言えそうだ。
【昇給】企業回答と会社員の期待値にギャップ
昇給に対して、企業回答と会社員の期待値に乖離があることがわかった。調査対象企業のうち、74%が今年中に従業員に対して昇給を行うと回答したのに対し、昇給が期待できると回答した会社員は44%にとどまった。
これは、ポスト・パンデミックの時代に突入しても、従業員が「COVID-19の企業への影響を考慮する」(従業員に「昇給交渉をしない理由」を尋ねたところ19%でトップ)のに対し、現実には、企業が経済状況の改善とともに昇給できる状態にあると考えていることの表れと思われる。
また、「昇給よりも雇用の安定性をより重要視しているため」(16%)、「昇給交渉のやり方がわからない」(15%)など、昇給への期待が低い理由も挙げられており、企業と従業員間で、給与に関する期待値に齟齬を生まないようコミュニケーションの改善が必要であることが明らかになった。
【インフレ】物価上昇で昇給・ボーナスアップは期待できる?
2022年12月に総務省が1981年以降で最も高い消費者物価指数の上昇率を示すデータを発表したことから、会社員は、物価上昇が給与に及ぼす影響を懸念している。しかし、74%の会社員は、企業側が物価上昇を昇給やボーナスに反映させるとは考えていないようだ。これとは対照的に、企業に逆の質問をしたところ、企業の85%が、給与交渉の際に物価の上昇は影響してくると考えていた。
構成/こじへい