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「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」でスポーツカーで走ることの楽しさを学ぶ

2023.01.19

外周コースを自分で運転しながらポルシェドライビングコーチのマンツーマンの指導を受け、より安全で確実、そして速いラップを目指す。

ポルシェブランドの魅力を体験すると同時に、スポーツドライビングの楽しさを学ぶ施設として世界中に展開されている「ポルシェ・エクスペリエンスセンター」。アジアでは上海に次いで2番目、世界では9番目の施設として、2021年10月に千葉県木更津市にオープンした、「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(以下、PEC東京)」。

スタートから1年あまり経過した今、全長約2.1kmのハンドリングトラックを皮切りに、ポルシェブランドの世界を体感するために、そしてこの魅力に溢れた施設の可能性を確認するために都内からアクアラインを渡り、木更津へと向かった。

クローズドコースがスポーツカーの裾野を広げる

2021年開催の東京オリンピックではスケートボードの日本代表として、そして翌22年の北京冬期オリンピックではスノーボードの日本代表としてハーフパイプ競技に出場し、悲願の金メダリストとなった平野歩夢選手。彼を始めとした代表選手たちの活躍によって「横乗り系(サーフボード、スノーボード、スケートボードなど)スポーツ」は大いに盛り上がっている。中でもストリートカルチャーのひとつとして認知されているスケートボードは、場所や時間などの制約を受けることが少ないという気軽さから、多くの人たちが楽しんでいる。

一方で一般道や歩道、さらには駅前広場や公園などのパブリックエリアを、我がもの顔ですり抜けたりするボーダーが社会問題にもなっている。本来のストリートカルチャーが言うところの「自由」と「好き勝手」をはき違えているからだろうが、他人をも巻き込む恐れのある行動には一片の酌量の余地もない。もはや言い尽くされていることかもしれないが、社会性が担保されなければ「真の自由」とはいえない、と思っている。

そんなことを改めて考えさせられたのは、帰省の折に新潟県村上市にある日本最大級の全天候型のスケート施設「村上市スケートパーク」を訪ねた時だった。ここ村上市といえば平野選手の故郷であり、幼い頃にはスケートボードで研鑽を積んだ、まさにルーツの地。ここに実の父が私費を投じ、同時に地域の尽力によって建てられたのが「日本海スケートパーク」という練習施設だった。通年、使用できる屋内施設は利点が大きく、平野のバランス感覚や体幹の強さはここで養われたのである。現在は老朽化のため、2019年に閉鎖されたのだが、それを引き継ぐ形で同年に前出の「村上市スケートパーク」が、クルマで数分の場所に完成したのだ。

さすが行政が主体となって管理する専用施設ともなれば充実度はワールドレベル。システマティックにレイアウトされたコースは、トップアスリートへの夢を叶えようという子どもや若者たちで賑わっていた。こうした社会性を持った施設があるからこそ、自由に自在にスキルを向上させられるし、横乗り系スポーツの本当の楽しさと同時に、競技のリスクさえも学ぶことができるもの。当然のように競技の裾野は広がり、この地に新たな交流が生まれ、ひいては仕事の創出、地域経済の振興にまでつながって地域の活性化にまで図られることを目指している。そしてこの施設は、企業版ふるさと納税の制度を活用して整備されているという。

実はオープンから一年以上が経過したPEC東京も、寄付額は1700万円と破格ではあるが、1日貸し切りにできるプランが、木更津市のふるさと納税の返礼品に追加されている。「それほど高額な寄付は果たして現実的なのか」という思いもあった。だがこれまで17万円~35万円といったふるさと納税返礼品プランを告知すると約半年の間に300件以上も申し込みがあったという。そんな人気が後押し、オープンから1周年記念として、この高額プランが追加された。たとえば個人では少々きついかもしれないが一般企業の福利厚生の一環として「食事などのホスピタリティやインストラクター付きでポルシェを朝から晩まで楽しむ」という一種のアトラクションと考えるなら、1700万円は決して高額とはいえないかもしれない。現在、この他にもいくつか寄付金プランもあり、ふるさと納税の選択枝として地元への貢献度を上げていたのだ。

スポーツカーで走ることの本当の楽しさとは?

約1年ぶりに訪れたPEC東京には、すっかり落ち着いた雰囲気が漂っていた。オープン当初は、ポルシェブランド普及のため、高級車を所有できる富裕層向けの限定的なサービスになるのではと個人的には考えていたが、いまとなっては、もっと広範な意味を内包するほどに存在感を増していたのだ。同時にベースとなるセンター内にあるカフェやレストラン、限定商品を販売するオフィシャルアイテムショップ、そしてイベントスペースはブランドイメージを大切にしながらも、気取りや敷居の高さをあまり感じさせないような気配りがあり、実に心地いい居心地である。

そんな中で始まったブリーフィングはドライビングレッスン受講前の必須のカリキュラム。インストラクターから走行中のルール、そして自分の責任において事故を起こした場合の処置など、しっかりと説明を受けるのである。スポーツカーを、というより正しいドライビングポジションを学ぶだけでも、普段の自分のミスが浮き彫りになっていく。しかし、多少なりとも腕に自信がある人は、この辺からすでにテンションが高めになるものだが、実はこのブリーフィングには、そうした高ぶりを鎮める果があるとは思うのだが……。やはり走りへの欲求は高まるばかりとなるのは、この時点で致し方ないことかもしれない。何せこれからステアリングを握るのは一級品のスポーツカーである。

走行コースとして用意されているのは「ハンドリングトラック(外周コース)」、「ドリフト」、「スラローム」、そして「オフロードコース」など。そのなかから、最初に乗り入れたのは全長2.1kmの外周コースだ。世界のPECの多くは平坦なコースが多いが、山あいにあるPEC東京はその地形を活かし、アップダウンのあるコースレイアウトになっている。コース内にはドイツ・ニュルブルクリンク北コースの「カルーセル」やアメリカにあるラグナ・セカの「コークスクリュー」という名物コーナーも再現されているという変化に富んだもの。クルマの挙動は上りと下りで大きく変化するが、それを合法的にハイスピードでポルシェとともに体験できる。ここでポルシェのポテンシャルの高さを知ることはもちろんだが、過信や油断が生み出す怖さをも同時に学ぶことになる。

数百馬力のパワーを路面に伝えていくのは、タイヤのトレッド面の1割にも満たない面積。それを頼りにして加速もブレーキングも曲がりもこなしていくことの危うさを知ると、公道でむやみに飛ばすことが愚かなことだと理解できるはず。少しだけ冷静さを取り戻して、今度は少しゆっくり走ってみる。するとポルシェはどんどん快適さを増していくのである。このとき“良く出来たスポーツカーほど低速で快適”ということにも気が付くと思う。普段、何かに急かされるように高性能スポーツカーを走らせている人ほど、このコースで学ぶことは多いのである。

間もなく、コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド社はアジアで初めての本格的な会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB(ザ マガリガワ クラブ)」を千葉県南房総市に開業する。まるでプライベートサーキットのような感覚のあるサーキットで、誰にも気兼ねせず愛車のフェラーリやランボルギーなどを走らせ、その後には温泉や食事を、というコンセプトで、PEC東京とは少し違った独自性を見せている。それでもこうしたクローズドコースでしか体験できない世界は、日本のスポーツカー文化、いや車文化を成熟へと向かわせることを期待したい。

様々な規模のグループに対応可能な8つのミーティングルームがあるセンター。

ポルシェドライビングコーチの運転で助手席からエキサイティングな体験が出来る「デモンストレーションラップ」。希望すれば運転免許証不要。身長が140cm以上であれば、誰でも申し込み可能。

一般的なサーキットとは違い、愛車などの車両持ち込み走行は不可。用意された最新のポルシェをドライブする。

ドライビング講習前に受けるブリーフィング。ここでコース走行のルールを、学ぶことになる。

約50台の最新のポルシェが用意され、ドライビング体験に対応する。

ポルシェの車両などが展示されたイベントスペース。少人数のグループからレストラン・カフェの貸切りまで、ゲストの要望に応じたオーダーメイドのケータリングサービスも用意されている。

的確な指摘でドライバーのスキルアップをサポートしてくれるインストラクター。

舗装された広大なオープンエリアではスラローム、フルブレーキ、ローンチコントロールなど、ドライな路面特性を利用した特別なプログラムを体験可能。

ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京
千葉県木更津市伊豆島中ノ台1148-1
0120-718-911 / 受付時間:9:00-18:00 (定休日を除く)

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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