パワハラに受け取られないための指導ポイント
最近では若手社員の傾向として、「パワハラに敏感」という側面もある。パワハラに受け取られないための指導のポイントとは?脳科学の観点から聞いた。
●相手の特性に合った形で伝える
「現代の若者は、これまでのパワハラに関わる社会情勢のニュースを見たり、聞いたりしてきた世代でもあります。そのようなネガティブな記憶が『海馬』などに貯蓄している可能性があり、パワハラなどに関して、とても敏感になっていると考えられます。パワハラは、そのこれまでの経験的な記憶によって影響があり、許容や忍耐、受け止め方にばらつきがある点がポイントになります。そのため、相手の特性や受け取り方を観察し、見極め、相手の特性や受け止め方に合った形で伝えることが大切になります」
●メリットとなる情報を伝える
「また怒りなどの感情に基づいたネガティブなフィードバックは、ストレスやトラウマにかかわる『扁桃体』などに影響を与える可能性があります。そのため冷静な対応で、相手に納得してもらえるような対応が求められます。フィードバックをする際、相手にメリットとなる情報を伝えることができればベストです。メリットとなる情報は、やる気に関わるため『線条体』にポジティブな影響を与える機会になります」
年齢の離れた部下とうまく仕事をするコツ
多様性が求められる時代。単純に年齢の離れた部下と世代間ギャップが生まれて、うまく付き合えないこともあるはずだ。うまく仕事をするコツとは?
●積極的傾聴
「早い段階から、肯定的な対話をすることが大切になります。年が離れた世代間ギャップを解消できるように、お互いの理解を増やしていくことが大切です。これまでの研究では、上司は、部下に対して積極的な『傾聴』などを行うことが重要とされています。
●即時フィードバック
「上司は、積極的に部下に相談を持ちかけたり、挨拶したり、部下からフィードバックをもらったりするコミュニケーションの場を増やすことが大切です。特に『鉄は熱いうちに打て』ということわざは事実で、すぐその場でほめる『即時フィードバック』はとても有効です。『即時フィードバック』は、やる気に関わる脳内のドーパミンを増やします」
●共通の肯定的な話題や体験を増やしていく
「年が離れていても共通の肯定的な話題や体験を増やすことを意識していくことが大切になります。また早い段階から、会社や社会に貢献できるような協働経験を増やしていくことが大切になります。その際、上司の方はコラボレーション・フィードバックを行うことが重要です。コラボレーション・フィードバックとは、協働しながら、うまくできる方法を自ら示していくことです。」
●現代に合わせたやり方を
「年の離れた上司が注意しなくてはいけない点は、過去、自分が受けた指導や指摘などに関して、現代の部下に同じようにしないことが重要です。これまでの様々な研修に携わり、気づきましたが、過去に上司に叱られたトラウマ経験を部下に同じようにしてしまうケースが多くありました。自分が受けてきた指導や経験は、時代によって変化している可能性があります。過去の常識にとらわれず、現代に合わせたやり方に変えることが大切です」
脳科学を用いるアプローチは、人間を指導するという意味では効率的な方法といえるかもしれない。ぜひ取り入れてみよう。
【取材協力】
徳吉 陽河氏
一般社団法人コーチング心理学協会代表理事・講師。資格は、公認心理師、キャリアコンサルタント、コーチング心理士、ポジティブ心理療法士など多数。脳科学、認知科学、コーチング心理学、ポジティブ心理学を活用した実践的な教育・研究活動を行っている。また、上記に関わる教育プログラムやアセスメントツールの開発を多数行っている。
https://www.coaching-psych.com/
【調査出典】
経営者JP エグゼクティブを対象とした調査
取材・文/石原亜香利