次世代機能を搭載する航空機キャビンや弱視者用スマートグラスも公開
ジェンテックス・コーポレーションは、2023年1月8日まで米国ラスベガスで開催された世界最大規模の家電展示会「CES 2023」において、自動車メーカーが今日の自動車にすぐに搭載できる拡張性のあるカメラベースのドライバー支援システムを中心とする、自律走行時代に向けて設計された製品ポートフォリオを展示した。
さらに飛行体験を向上させる次世代機能を搭載する新しい航空機キャビンのモックアップも公開された。
今回の展示に関して同社の開発担当副社長 兼 最高技術責任者のニール・ベーム氏は、次のように述べている。
「今年のCESでは、自動車および航空宇宙産業のお客様に、ジェンテックスの技術を新しい刺激的な方法で体験していただけるでしょう。私たちは、先進的な車両や航空機の胴体シミュレーターを開発、ショーの来場者に私たちの技術の利点を直接体験していただけるようにしました」
車室モニタリングシステム
センシング〜ドライバーの頭部の姿勢や視線などの指標を追跡
NCAP規制の進化と自動運転レベルの高度化により、自動車メーカーはドライバーと乗員を監視する安全システムの導入に邁進している。このニーズに対応するジェンテックスの戦略は、CESブースの中核となるもので、同社もドライバーと車室のモニタリングにおいて拡張性があり包括的なアプローチを紹介するユニークな車両デモ機を展示した。
これは、システムのリアビュー・ミラーと頭上の一体型カメラが捉えるイメージを見て、システムの意思決定プロセスを理解し、対応する機能について学ぶ没入型の体験を提供するものになる。
ジェンテックスのドライバーモニタリングシステムは、ドライバーの頭部の姿勢や視線などの指標を追跡して注意散漫、眠気、急病、半自動運転状態からマニュアル操作への復帰などを判断していく。
このシステムは簡単に拡張でき、乗客、動作、物体、生命体の存在を検知するための2Dおよび3Dの車室モニタリングも可能だという。さらに、機械嗅覚センサーは、空気中の化学物質や微粒子を検出するためのデジタル嗅覚を提供し、乗客の安全を確保しつつ車両を運行するのに役立つ、と同社では説明している。
さらに、車内をモバイルコミュニケーションセンターとして、テレビ電話やオンラインミーティング、車内でのセルフィー撮影などを行なうことも可能だという。
「私たちの目標は、コアドライバーのモニタリングから、完全な車室モニタリング、機械嗅覚に至るまで包括的な車室モニタリングソリューションを提供することです。ジェンテックスは、現在の自動車だけでなく、移行期や自律走行車のためのソリューションを提供したいと考えています。それは、独自のセンサーフュージョン技術に基づく包括的で拡張性のあるモニタリングプラットフォームを開発することを意味します」(前出・ベーム氏)
デジタルビジョン〜車両の後方視界を最適化するリアビジョンシステム
ジェンテックスのCESブースでは、業界をリードするフルディスプレイミラー(FDM)も展示された。これは、カスタムカメラとミラー一体型ビデオディスプレイを使用して、車両の後方視界を最適化するインテリジェントなリアビジョンシステムだ。
このシステムでは、後方カメラからの映像をミラー一体型LCDにストリーミングし、ドライバーに遮るもののないパノラマビューを提供。FDMは6年前にデビューし、すでに世界の14の自動車メーカーの約80種類の車両に搭載されている。
またFDMは、さらなるイノベーションのためのプラットフォームとしての役割も担っている。ミラー内蔵型デジタルビデオレコーダー(DVR)、拡張可能なトレーラーカムシステム、タッチスクリーンディスプレイ、車線投影オーバーレイ、ミラー内蔵型の車内撮影用セルフィーカムなどの機能を追加することが可能だ。
セルフィーby リアビューミラー
自動防眩ガラス〜日射量センサーと連動して暗くなる透明な防眩パネルなど
同社は自動防眩装置の世界的なリーディングサプライヤーであり、年間4,000万個以上を出荷している。現在の製品ラインアップには、眩しさを抑えるリアビュー・ミラーとエクステリア(サイド)ミラー、航空宇宙産業向けの自動防眩ウィンドウなどがある。
防眩バイザー
今回新たにラインアップされたのは、必要に応じて、またはシステムインテリジェンスと連動して暗くなるサンルーフや、従来のサンバイザーのように折りたためながら、日射量センサーと連動して暗くなる透明な防眩パネルなどの大面積の調光装置だ。
さらに、透明ディスプレイのコントラストや視認性を向上させたり、センサーを隠したり、カメラの露出を調整するために暗くなる小型の調光装置も紹介された。
カーコネクティビティ〜ホームオートメーション機器を車内から作動
今回のCES 2023におけるジェンテックスブースでは、業界をリードするカー・トゥ・ホームオートメーションシステムであるHomeLinkなどの接続機能も登場。
これらのシステムにより、RFとクラウドベースのワイヤレス通信を利用して、ガレージドア、サーモスタット、照明、セキュリティシステムなど、さまざまなホームオートメーション機器を車内から作動させることができるようになった。
また、ジェンテックスのパートナーであるシンプルナイト(Simplenight)社は、OEMのモバイルアプリケーションやセンターコンソール、顧客専用ウェブサイトに自社ブランドとして統合可能なホワイトラベルeコマースプラットフォームを構築。顧客専用のeコンシェルジュや旅行予約サービスを通じて、自動車メーカーに新しい収入源を開発する機会を提供していく。
航空宇宙〜機内体験を個人化する生体認証システム、機内の空気を監視するセンサーなど
ジェンテックスの成長著しい航空宇宙テクノロジーは、全く新しい機体のモックアップを使って展示された。ベーム氏は、この分野に関して「自動車産業向けに開発された製品の多くは、航空宇宙産業向けにカスタマイズ可能な技術プラットフォーム上に構築されています」とコメントしている。
キャビンモックアップ
これを実証するために、ジェンテックスの機体モックアップは、完全な機能を持つ調光可能なウィンドウや客室間仕切り、読書や食事、コンピュータ作業などの様々な機内活動に合わせて照明を自動的に最適化する乗客用スマート照明、機内体験を個人化する生体認証システム、機内の空気の質を監視する微粒子・化学センサーを備えていた。
イノベーション・ラボとeSight Go〜視力増強電子アイウェアの最新製品
ジェンテックスの最近の技術買収やパートナーシップ、プロトタイプは、当社ブース内の特別なイノベーションラボで展示された。今回、弱視者の視力回復を支援するために設計された視力増強電子アイウェアの最新製品であるeSight Goも、ここに登場していた。
スマートグラスeSight Go
eSight社は、視覚障害者が日常生活で必要な作業を行いながら外出できるようにするウェアラブル補助技術の開発企業。ジェンテックスは、デジタルビジョン、ソフトウェア開発、工業デザインの専門知識を活用して、高解像度カメラ、独自のアルゴリズム、強力な処理能力を組み合わせ、リアルタイムビデオを撮影して2つの高解像度近眼スクリーンに投影。完全な両眼視を実現するeSight Goの開発に協力した。eSight Goはジェンテックスが製造し、現在のところ2023年中の発売を目標としているという。
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構成/清水眞希