岸田政権による「骨太の方針2022」で、バイオ、量子、AI、センサー、IoTなどのいわゆるディープテックは、国益に直結する科学技術・イノベーション分野として重点投資分野に指定されている。
そこでグロース・キャピタルはこのほど、カイオム・バイオサイエンスと共同で、ディープテックのうち新たな薬や医療技術を開発するバイオベンチャーの投資に焦点を当てた「バイオベンチャーへの投資意識調査」を実施。データ分析と併せて、その結果を発表した。
なお、日本国内で上場するバイオベンチャーは機関投資家が投資を行うケースは少なく、個人投資家が中心となってバイオベンチャーを支える構図となっていることから、個人投資家を対象に調査を行った。
バイオベンチャー複数社に投資経験がある(積極投資層)は投資家全体の約6%
「バイオベンチャーへの投資経験」について調べたところ、全体の18.7%の投資家がバイオベンチャーに投資経験があることがわかった。その内訳は、複数社に投資経験のある「積極投資層」が6.3%、1社のみ投資経験がある「たまたま投資層」が12.4%であることが判明した。
バイオベンチャーは将来の成長を期待される分野ではあるが、その研究開発投資を支えるバイオベンチャー領域への投資経験者は、複数社に投資経験のある「積極投資層」で約6%、過去1社でも投資したことがある「たまたま投資層」は約12%で、合計でも2割弱に留まった。
技術や対象疾患を調べ、理解した上で投資する層が約6割
「バイオベンチャーへの投資前の情報収集」について調べたところ、「理解して投資」を行う層が56.5%、フィーリング投資層が34.3%、テクニカル投資層が9.2%という結果になった。バイオベンチャーの投資経験者は、半数以上が技術や対象疾患について「理解」しようとする姿勢を持っていることが見て取れる。
バイオベンチャーへの投資理由、TOP3は「将来大きく成長しそう」「テクノロジーの競合優位性」「社会にとって有益」
「バイオベンチャーへの投資理由」について調べたところ、「将来大きく成長しそうだから」と回答した人が70.3%と最多に。以下、「テクノロジーに競合優位性がある」と回答した人が30.8%、「社会にとって有益だから」と回答した人が23.2%、「対象としている疾患・病気に関心がある」と回答した人が18.5%と続いた。
いまだ治療法が確立していない疾患に挑むバイオベンチャーには、世界に変化をもたらすテクノロジーの優位性や社会への貢献を期待する投資家層が一定数いることがわかった。
バイオベンチャー投資家を4パターンに分類
調査対象の個人投資家(n数=15,020)のうち、バイオベンチャー投資経験者(n数=2,809)に対して、投資状況(複数社/1社のみ)、投資時の調べ方・理解状況(調べ理解/調べず理解せず)の回答結果から4パターンの分類を行った。
その結果、バイオファン(積極投資×理解して投資) が20.7%、勉強家(たまたま投資×理解して投資)が35.8%、ギャンブラー(積極投資×分からず投資)が13.2%、トライアル(たまたま投資×分からず投資)が30.3%となった。
岸田政権が重要投資分野に掲げるバイオ・創薬領域だが、技術や対象疾患を理解した上で積極的に投資する層は投資家全体の約4%に留まり、今後バイオファンの増加がバイオベンチャーの資金調達環境の改善に向けたキーになると推察される。
バイオファンは他分類の投資家に比べ情報収集への意欲が高い
「あなたが株式投資で特定の会社に興味を持った場合、普段行う情報収集の方法(その企業を知るために確認する情報)をすべて教えてください」と質問したところ、バイオファンは他の分類より積極的に情報収集を行っており、バイオファン獲得に向けて、バイオベンチャーは積極的な情報発信が肝要であることが確認できた。
バイオファンの投資理由は?
「バイオベンチャーに投資した際の投資の理由として、あなたに当てはまるものをすべて教えてください」と質問したところ、バイオファンがバイオベンチャーに投資する理由として、他の分類に比べて「社会にとっての有益性」「対象疾患・病気の治療法への期待」が強い傾向にあることがわかった。