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深刻な景気後退の懸念は杞憂に終わるか?2023年グローバル市場の展望

2023.01.10

パンデミックを背景とするサプライチェーンの混乱により、世界のエネルギーや食料品の価格に上昇圧力がかかった。そこへロシアのプーチン大統領によるウクライナへの軍事侵攻が重なり、さらなる価格高騰を招く。

中央銀行はインフレを管理する役割を担っているものの、コスト・価格がスパイラル的に上昇するという現実に直面することになった。

多くの主要国で失業率が極めて低い水準にある中で、賃金上昇期待を抑制するという、非常に困難な課題にも直面した。今後も中央銀行が政策を誤る余地は依然大きいと考える。

こうした実情を踏まえ、英国の独立系資産運用グループ・シュローダーはこのほど、「2023年市場見通し:グローバル/テーマ型株式」と題したレポートを公開した。

市場に懸念は広がるも、1970年代に逆戻りすることはない

現時点で多くの国々でインフレ率は高止まりしているか、上昇を続けている。中央銀行の対応は賃金引き上げ圧力を抑制するには十分でないとの懸念があり、1970年代と同様のスタグフレーション(成長停滞・高インフレ)が起こるかもしれないとの議論がある。

しかし2022年の物価ショック(物価統計に対して金融市場が大きく反応すること)は、1970年代に匹敵する部分があるものの、基調的なインフレ(コア・インフレ)の上昇率が既に緩やかなペースになってきている点は注目すべきだ。サプライチェーンの混乱が沈静化に向かっていること、借り入れコスト上昇、消費者所得の圧迫、住宅価格の下落等の要因から、世界経済は冷え込み、需要が減退している。このため、コア・インフレが落ち着きをみせる傾向が続く可能性があるとみている。

サプライチェーンの混乱の沈静化

このような背景から、賃上げ要求も穏やかなものになると考えられる。賃金インフレに警戒すべき理由として、労働力不足やストライキの急増を挙げられるが、経済減速に伴い、労働の柔軟性は改善されると考えている。企業は間違いなく雇用を先延ばし、労働力を削減すると予想される。この兆候が、例えば情報技術セクターでは既に明確に表れている。

また、過去最低水準にある労働参加率についても、50代以上の非参加者が再就職を決めることにより上昇する可能性がある。その他に、技術進歩を背景に自動化の導入による労働代替への動きが加速する可能性がある。つまり大量失業に逆戻りする可能性は低い一方で、求人は増加し、労働参加者数の緩やかな増加によって、将来賃金コストが抑制される可能性は十分にあるのだ。

深刻な景気後退の懸念は杞憂に終わるか

このような状況下で景気減速は避けられない可能性があるが、少なくとも一部の国々では深刻な景気後退は杞憂に終わる可能性がある。非常に低い失業率が継続すれば、消費者はコスト上昇に耐えることができると予想している。

また、エネルギー料金への政府の支援策も、コスト上昇の影響を緩和している。新型コロナのパンデミック期間にかなりの貯蓄を積み上げた家計のバランスシートが、多くの消費者にとって安心材料となっている点に注目すべきだ。(ただし、最貧困層の所得にとっては十分ではないことは認識している。)

企業部門も同様にレバレッジ(負債の活用)は相対的に低い水準かつ、平均より長い期間にわたるものとなっている。

以上のことは、実体経済の課題は残るものの、インフレの定着や景気後退は多くの人々が予想しているほど深刻ではない可能性があることを示唆している。その可能性が最も高いと考えられるのが米国だ。米国は、実質的にエネルギーを自給自足しており、ほぼ全ての主要コモディティの価格が米ドル建てであり、移民政策も積極的に進めていることから、大きな恩恵を受けている。一方、英国を含む欧州では、残念ながら状況は少々異なる。

業績の低迷

景気後退に陥るかどうかは別として、企業の業績予想は引き下げを余儀なくされている。足元の市場サイクルの興味深い特徴の一つは、株価が暴落する局面でも、企業利益はこれまでのところ意外なほど堅調であることだ。その理由は、価格設定にある。

欧米では企業が製品価格への転嫁を進めてきた。例えば、ペプシは7-9月期に+17%の価格引き上げを実施し、また欧州ではルイ・ヴィトンやネスレが製品価格を2桁引き上げたが、いずれも販売数量にほとんど影響を及ぼさなかった。

このようなケースでは、消費者はプレミアム製品に高いお金を払おうとする傾向があるため、収益を維持できるかもしれない。しかし多くの企業にとっては、負の弾力性が働き、需要が減少し始めるのは時間の問題であると考えている。

米国のアマゾンやターゲット、また欧州のM&SやH&M、プライマークなどは、消費者が既に支出を削減しているとの初期の兆候がみられる。

2023年には企業(エネルギー企業を除く)の収益と利益率は低下する可能性が高く、利益の下方修正サイクルが生じると予想されるが、依然十分に反映されていない。

弱気市場を乗り切る

以上のことから、底値についての議論は直感に反するように聞こえるが、足元の弱気市場はほぼ一巡したと見ている。とはいえ、今後当面の間、高ボラティリティの展開が継続すると予想している。

S&P500指数構成銘柄の一株あたり利益(EPS)コンセンサス予想の225ドルや235ドルはやや高い水準と判断され、今後数か月間にわたって徐々に下方修正され、2023年7-9月期に底打ちすると予想している。

しかし、株式市場は常に先を見据えており、実際の利益の底よりも6~9か月前に織り込み始める。このことは、世界の株式市場の足元の反発(ダウ指数が10月に1976年以来の最高値を付けたが)が非論理的ではないことを示唆しており、足元の上昇は夜明けのようなものだと考えている。

非常に短期的には、収益性の圧力がより明らかになるにつれて、一段の企業業績に対する失望材料があるかもしれない。

景気後退入り前後の企業利益と株価バリュエーションの推移

リスクとリターン

ウクライナ情勢の一段の緊迫化、ロシアから欧州向けガス供給量の追加削減の可能性、中国の台湾に対する姿勢など、地政学的リスクについても考えてみよう。これらは「ブラックスワン」(確率論や従来の知識・経験から事前にほとんど予測できす、それが起きた時に人々に多大な影響を与える事象)となる可能性があり、その性質上、確実に予測することは不可能であると考えている。

これらの事象のどれか一つでも実現すれば、世界の株式市場にとって非常にマイナスの材料になると予想される。良識が広がり、状況が落ち着くことを願わずにはいられない。

過去1年間の出来事については、現在の危機以前に既に明白であった傾向をさらに強めることになると予想される。

安全保障は(ほんの数例を挙げると)、国家安全保障、エネルギー安全保障、食糧安全保障、サイバー・セキュリティなど、過去10年間で政府や企業にとって非常に重要な課題となっている。ロシアの侵攻は、不安定な国へエネルギー供給を依存することにより、いかに悲惨な状況になる可能性があるかを示している。ロシアと比較すると、中国ははるかに理性的で慎重であると見られるが、習近平国家主席の政策運営は拡張主義的だ。

供給の安定性の確保

再生可能エネルギーへの投資、生産設備を自国内に戻す動きや移転、新しい食糧生産方法の支援、半導体やソフトウェア、バイオテクノロジー等の戦略的産業の保護など、政府や企業がより安全な供給を実現するために支出する傾向が見られる。これらの分野において、東西間のある種の二極化は避けられないと考えている。

厳しい環境においても、合理的なリスク水準で利益を実現できる企業に着目している。その多くは、構造的な成長率が高い、前述の分野に属している。

しかし同様に、弱気市場の成熟に伴い、日本など以前から投資家の選好の対象外となっていた地域にも関心を寄せている。

賃金インフレの低さと通貨の競争力により、今や東京でソフトウェア・エンジニアを一人雇う方が、インドのバンガロールで一人雇うより安くなったという驚くべき事実をお伝えする。

このように世界のどこかに必ず投資機会があるのだ。

<解説>
アレックス・テダー氏(グローバル株式・米国株式ヘッド兼CIO)

【本資料に関する留意事項】
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出典元:シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

構成/こじへい

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