母子関係よりも父子関係の方がもろい
米国の若年成人の多くは、少なくとも一時的な親子関係の断絶を経験しており、特に父子関係は壊れやすいことが、米国の1万組以上の親子関係を1990年代から最近まで追跡した新たな研究から明らかになった。
この研究を実施した米オハイオ州立大学社会学部のRin Reczek氏らによると、若年成人の4人に1人が父親と絶縁状態になったことがあると報告。
その数は、母親と絶縁状態になったことがあると報告した人の4倍に上っていたという。研究の詳細は、「Journal of Marriage and Family」に2022年12月1日掲載された。
この研究は、全米で実施された2件の研究データに基づくもの。
1件目の研究(NLSY79)では、1979年の時点で14~22歳だった米国人1万2,686人を対象に、2018年まで聞き取り調査が行なわれた。
2件目の研究(NLSY79-CYA)では、NLSY79の一部の参加者から生まれた子どもを対象に、対象者が15歳に達した1994年から2018年まで聞き取り調査が行なわれた。
Reczek氏らは、これらの研究から8,495組の母子と8,119組の父子に関する長期間のデータを入手することができた。
データを分析した結果、成人した子の26.0%が父親とある程度の期間、絶縁状態になった経験があると報告していた。
一方、母親との絶縁状態を経験した人の割合は6.3%だった。このような親子関係の断絶を経験したときの子の平均年齢は、父親との断絶で23歳、母親との断絶で26歳だった。
親子関係の断絶は、その後ある程度は修復されていたが、和解に至る割合は母子よりも父子の方が低かった。
人生のある時点で母親との絶縁状態を経験した人の81%は、再び母親と連絡を取り合うようになっていたが、父親との絶縁状態を経験した人でのその割合は69%だった。
人口学的背景による違いも認められた。例えば、母親と絶縁状態になる人の割合は、息子よりも娘の方が低かった。
また、黒人の若年成人では白人の同年代の成人と比べて、母親と絶縁状態になる人の割合が低く、父親と絶縁状態になる人の割合は高かった。
さらに、レズビアンやゲイ、バイセクシュアルの若年成人では、ヘテロセクシュアルの若年成人と比べて父親と絶縁状態になる人の割合が高かったが、母親との関係についてはセクシュアリティによる違いは認められなかった。
「この研究から明らかになったことの一つは、家族と絶縁状態になるのはよくあることで、失敗の兆候ではない」というのが、Reczek氏らの見解だ。
「家族との断絶には深い羞恥心や沈黙がつきものだが、本質的には良いことでも悪いことでもないというのが私の考えだ」と同氏は言う。
Reczek氏によると、親子関係を断ち切るのは多くの場合、親ではなく成人した子の側であり、それにはさまざまな理由が考えられるという。
「子どもは成長に伴い、自立に向けて自分で物事を選択するようになる。その過程で、自分の心の安定のために親との関係を断ち切ったり、接触する機会を激減させたりすることもある」と同氏は言う。
また、悪化した親子関係により自分が傷つくことを理由に、関係を断ち切る人もいる。
「誰かと絶縁状態になるのは、米国では珍しいことではないと理解してほしい。人間関係が終わることは、たとえそれが親子関係であったとしても、道徳的な失敗ではなく、比較的よくある出来事なのだ」と話す。
親子の断絶が近年になって増えているのであれば、少し皮肉なことだ。米サンフランシスコ・ベイエリアの心理学者Joshua Coleman氏によると、現代の米国人は、幸せで精神的に安定した子どもを育てるためのアドバイスを本やウェブサイトに求めるなど、昔の世代と比べて“良い”親になることへの関心が強い。
しかしこのことは、成人した子が親に食事や安全な場所だけでなく心理的サポートも期待することにつながっている可能性がある。
また、親の過干渉や過保護な育児が原因で、成長した子が親から離れる必要性を感じるようになるケースもある。
Coleman氏は、「健全な親子関係の修復の鍵となるのは、他者の考え方を理解しようとする気持ち、すなわち共感する力だ。誰が正しくて誰が間違っているかという視点だけではうまくいかない」と話している。(HealthDay News 2022年12月20日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jomf.12898
構成/DIME編集部
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