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気になるその内容は?ユーグレナが4名の著名作家による100年先の未来を見据えたSF小説を公開

2023.01.05

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

ユーグレナ(ミドリムシ)、クロレラなどを活用した食品、化粧品の開発、販売やバイオ燃料の製造開発、遺伝子解析サービスの提供を行っているユーグレナが、早川書房の協力のもと、著名作家4名と同社経営陣のコラボレーションによる「SF(サステナビリティフィクション)小説」で、100年先の未来を見据えた4作品を発表し、特設サイトにて無料公開している。

「ユーグレナ SF小説 発表会」にて、自らも作品を発表したユーグレナ 取締役代表執行役員CEO 永田暁彦氏が小説の制作背景について語った。

「ユーグレナのフィロソフィーは『Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)』。事業が発展すればするほど、社会の課題が縮小するという世界を本気で目指しています。

ユーグレナの超長期経営空想から生まれた「SF(サステナビリティフィクション)」小説

小説のコンセプトは『経営も、小説も、始まりは空想から』ですが、創業時の17年前、貧困問題をミドリムシで解決するなど空想の世界だと思われていました。現在はバングラデシュの子どもたちに栄養豊富なユーグレナ入りクッキーを無償で配布するプロジェクトを実施しています。

また、創業当時からバイオ燃料で飛行機を飛ばすと宣言し、こちらも2021年に日本で初めて成功しました。学校を卒業してすぐに始めたこの会社が、上場企業として事業が成り立っていること自体、空想を現実に変えたと思っています。

人々が未来を想像して、自分事としてリアリティーを持つこと。未来を語るサイエンスフィクションが未来においてはノンフィクションになる。これが新しい100年後を見越した僕たちの“超長期な経営空想”で、サステナビリティフィクションという小説として発表することにしました。

4名の経営陣がそれぞれの技術領域と未来に対する想いを掛け算して、空想物語ではなく100年後の未来に実現できる可能性があるものを題材にした小説に取り組みました。物語を楽しんでいただきながら、背景には人類がどのような方向に行くべきか、100年前の今を生きる私たちが何を読み取り、アクションに繋げていけるのか、考えていただきたいと思います」

発表会にはCFO(最高未来責任者)の渡部翠氏も登壇。ユーグレナでは20~30年後に生きる世代の人が会社の未来を決める、CFOを中心とした18歳以下のサミットメンバーを募集しており、会社と契約して意思決定ができる。これまで2人が就任し、18歳を機に定年退職、渡部氏は3代目。

「自分たちの未来を決めて欲しいからではなく、未来に生きる人を前提にした未来にする社会に変わって欲しいという思いから会社に参加しています。4作品とも100年先はまだ私は116歳で生きているというリアリティーを持って読むことができました」(渡部氏)

発表会では、永田・渡部両氏と、3作品の編集を担当した早川書房 塩澤快浩氏が4作品を解説した。

○田丸雅智×代表取締役社長 出雲充 「貧困の博物館」

あらすじ~未来の博物館に展示されているものは世界から根絶された貧困。目玉はかつての途上国の暮らしを再現した「貧困体験プログラム」。水、電気、栄養すら不十分な世界で何を感じ、何を考えるか。先人の奮闘の末SDGsが達成された未来に、果たして人々は豊かで健康になったと言えるのか、次に解決すべき課題とは何か?100年先の世界を考え変えるためのヒントをめぐる物語。

渡部「博物館で『私の時代はこういうことがあった』と言っている自分を想像しながら読み進めました。物理的な貧困が解決された後にそれでも残る課題は何か?心の中の貧困とは?100年前を知っている自分が今からできることはなんだろう?貧困博物館に自分の姿があるのでは?そんなことを考えながら読んでいただきたいです」

永田「博物館は恐竜などかつて存在したものを現代の人に伝える場所。貧困が博物館に飾られるという夢を100年後に実現したという作品です。出雲は15年前から貧困が過去のものになる貧困博物館を作りたいと言い続けてきました。貧困を撲滅するという想いが本という形になったのです」

塩澤「今作品の編集は担当しませんでしたが、他の3作品ももっとユーグレナをフューチャーすべきだったかなと(笑)。出雲さんがもともと構想されていたことだとお聞きし腑に落ちました。100年後の人が貧困を疑似体験することでリアリティーが出ていたと思います」

○林譲治×執行役員 CTO 鈴木健吾 「共棲の始まり、そして未来」

あらすじ~ES(ecosystem sheet)と呼ばれる生態系復活装置を用いて、荒廃地の食料供給計画に従事してきた己龍ケイン。大規模自然災害により傷ついた地球環境の復興支援を使命に向かった宇宙で、彼は最愛の妻を失ってしまう。その後、ケインは恒星間小惑星宇宙船「遥」の開発へと着手する。宇宙環境に適応し、不死の領域に到達した人間が夢見た「永遠」とは何だったのか?

永田「鈴木は当社の研究のトップで、彼が何のために人生をかけて研究しているのか僕は知っていて、時間を犠牲にして研究している鈴木の想いが詰まった作品です。人間が健康で長く生きるために多くの研究者が関わっていますが、鈴木が行っている微生物を活用してどのように実現しようとしているのか、リアルな構想が作品に表れていると感じました。15年前に鈴木と出会った頃なら、こんな結末はあり得なかったけれど(笑)、今は家族を持ち、人類に対する愛があふれていると感じました」

塩澤「林譲治さんはSF全般に多くのアイディアをお持ちで、特に宇宙を舞台にした作品を多く書かれていることから依頼しました。“パーソナルな生態系”というアイディアから物語が広がっていった作品です」

渡部「特に好きだったのが主人公の己龍さんと奥さんの遥さんが出会ったシーン。己龍さんの食糧不足解決への取り組みに対し、遥さんの食糧不足解決だけでなく、その地の食文化の再生も必要と激しく議論をしていました。課題を解決するためには一方的な押し付けではなく、科学と共に歴史や文化も考えて取り組むことも大事で、こうした議論ができる社会で働きたいと思いました」

○菅浩江×執行役員 バイオインフォマティクス事業担当 高橋祥子 「幸せな長い人生」

あらすじ~22世紀中盤の科学の発展により人類の病がほぼ克服されつつある未来。健康寿命が伸びた一方で、記憶の底にある個人のトラウマだけは未だ解消できていなかった。医師である「私」は、そんな辛い過去の記憶をピンポイントで消し去る「積極的健忘治療」を、自らの身体で治験していた。治療から目覚めた「私」は、男との会話を通じ、新たな思いを抱き始める。寿命と記憶の間で揺れ動く、未来の人間の生き方を問う。

永田「高橋は遺伝子を基にしたヘルスケアの研究を長年やっており、人間の遺伝子を解析して未来を予測し、薬の開発に活かす研究を行っています。トラウマという過去から蓄積されている心に向き合っている作品で、人々心の傷に対応するやさしさがサイエンスに掛け算されている点が印象深かったです。出雲、鈴木、高橋の3人は10年以上の付き合いのある友人ですが、そこから見えていた彼らの人間らしさが本当によく出ていました」

渡部「200年ぐらい生きられるような時代になったら、たくさんあるはずの辛い記憶や後悔の気持ちを抱えてどうやって生きていくのだろうと考えさせられました。苦しい記憶を消し去ることには賛否両論あると思いますが、作品を通じて高橋さん自身の声が聞こえた気がした場面が多々あり心に残りました」

塩澤「菅浩江さんは人類の歴史に関わるすべてのものを集めた惑星を舞台にした『博物館惑星シリーズ』があります。今作品は登場人物が二人でほぼ対話劇の形で進んでいきます。高橋さんは『100年後は良い未来しかない!』と言うポジティブな方で、物語として面白くするためには困難を克服する要素も入れた方が良いと言う菅さんと、たくさんのやりとりを積み重ねたうえで完成しました。人の心などかなり深いところまで追求できた作品だと思います」

○藤井太洋×取締役代表執行役員 CEO 永田暁彦 「モラトリアム」

あらすじ~人々が宇宙へ移住し、核融合で得られる無限の電力によって、働く必要すらもなくなった未来。翠谷悠里は関わっていた月の鉱山が閉山することを知る。地球に行くことを決める仲間の月人ユエレンたちをよそに、月に残ることを選んだ悠里は、宇宙空間で素肌を晒して歩く女性を目撃する。彼女は遺伝子調整と化学工業が生んだ「電気吸いエレク」だった。宇宙という新天地を人間の生きる場所に変えるための「条件」とは?

永田「4作品に共通して、さまざまな技術開発が進み、人類がエネルギー、食糧、健康をすべて獲得することが可能になった先に、人類に何が訪れるのかをテーマにしています。根本には人類が目指す未来には明るいものだと示したい想いがありました。

僕の作品のキーワードは『好奇心』。人類はかつて新世界を見つけるために大海原に出たように、宇宙に向かうことは止められません。そこに人類の幸福を見出そうと考えた作品です。

藤井先生は作品からサイエンスやギミックが大好きな方だと感じ、意見をぶつけ合いながら作品ができあがりました。僕はリアルテックファンドという日本の研究者に投資する日本最大のファンドを経営していて、何百人ものサイエンティストに会っており、こうした研究者たちの未来をイメージした作品になっています」

渡部「主人公の名前に私と同じ翠が入っていて、行動パターンも自分と似ているところがありうれしかった(笑)。月面というこれから発展する場所で、さらに好奇心を持って宇宙出ていく人たちが交錯する場所の設定が印象に残りました」

塩澤「林さんはハード面を重視した作品、菅さんは内面を追求した作品、藤井さんはその中間です。藤井さんは近未来の世界をディティールも含めて作り上げるのがうまい作家さん。100年後の月面の世界における日常の描き方は共感できますし、逆に突き抜けているところもあります。人類ともう一歩先に行っている存在との関係性に、人類の進歩が象徴されていると感じます」

【AJの読み】昨今の“軽すぎるサステナビリティ”に対するアンチテーゼ?

SF小説を多く手掛ける早川書房だが、企業の未来像としてSF小説を利用するコラボが最近増えているとのこと。今回も宣伝企画的なものではないかと穿った見方をしてしまうが、コラボ作品では作家に任せるのが大半という中、今回は初打ち合わせから真剣そのものだったとのこと。「空想ではなく100年後にはこうなるという作品を作りたいと意見を戦わせ、本当の意味で作家とユーグレナ経営陣との共作になった」(塩澤氏)という。

「企業案件ではなく、未来に対してアントレプレナーシップ(起業家精神)を持って臨んでいることを先生方に感じていただき、真剣に向き合って作り上げたので、遠慮なくダメ出しもした。実際にそうしたプロセスを経て4作品が完成した。

昨今サステナビリティがバズワードになり、やっている側も受け取る側も本当に理解しているのか?と正直、怒りを覚えることもある。サステナビリティフィクションはサイエンスフィクションのもじりではないことをきちんと伝えないと、サステナビリティと言うだけの世の中と同じようなノリになってしまう。だから本気で小説に取り組んだ。

やらなくちゃいけないからではなく、未来の世界のため、100年後も生きている世代のために何をするのかという真剣さを持って、社会とコミュニケーションしていかねばならない。CFOやSF小説がなくても僕たちの仕事は本気だが、これらを出すことで受け手も本気になって未来の世界を考える社会になるように働きかけていきたい」(永田氏)

ユーグレナの見据える100年後はどのような世界か、その世界を実現するためには今どうすべきか、読了後の行動が読み手にとって未来への試金石になる。

文/阿部純子

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