COVID-19から1年後でも手術後の心血管合併症リスクが高い
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後の手術に伴う心血管合併症のリスクは、COVID-19罹患から手術までの間隔が長いほど低下するが、その低下傾向は診断から1年経過後も続いているとするデータが報告された。
つまり、COVID-19から1年後でもなお、手術に伴う心血管合併症のリスクが高い状態が続いている可能性が浮かび上がった。
この研究は、米ヴァンダービルト大学医療センターのRobert Freundlich氏らによる単施設での後方視的研究であり、結果は「JAMA Network Open」に2022年12月14日掲載された。
論文の上席著者であるFreundlich氏は、「COVID-19罹患後の手術は合併症リスクが高いことを示したデータは既に報告されているが、われわれの研究は罹患後からより長期間経てから実施された手術成績も解析対象としている点で、既報研究と大きく異なる」と、研究の特徴を強調している。
またFreundlich氏は、「本研究が進行中に、『重症COVID-19患者への手術は呼吸器合併症のリスクを勘案し、COVID-19診断から最大12週間おいて行なう』とする勧告を発表した学術団体もある。ところが本研究からは、心血管合併症のリスクに関してはCOVID-19診断から1年以上経過後にも依然リスクの低下傾向が認められ、この結果に驚かされた」とも述べている。
この研究の対象は、2020年1月1日~2021年12月6日に同大学医療センターで手術を受けた18歳以上の患者のうち、術前に新型コロナウイルス検査が陽性との記録のあった3,997人〔年齢中央値51.3歳(四分位範囲35.1~64.4)、女性55.6%〕。
深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管障害、心筋損傷、急性腎障害、および手術後30日以内の死亡で定義される心血管合併症を複合アウトカムとし、その発生リスクとCOVID-19の診断から手術までの間隔との関連を検討した。
COVID-19診断から手術までの間隔は、中央値98日(同30~225日)で、485人(12.1%)に心血管合併症が発生していた。合併症リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、人種、緊急手術か待機手術か、全身状態(ASA分類)、手術時間など〕で調整後、COVID-19診断から手術までの間隔が長いほど、心血管合併症発生率が低下していることが明らかになった。
具体的には、COVID-19診断からの間隔が10日長いごとに、心血管合併症発生率が1%有意に低下していた〔調整オッズ比(aOR)0.99(95%信頼区間0.98~1.00)、P=0.006〕。
なお、診断後の最初の100日間では心血管合併症発生率は約18%から10%へと比較的急速に低下して、その後は緩やかに低下していき、COVID-19診断から400日後には約8%となっていた。
ワクチン接種歴の有無でサブグループ化しても、以下のように、主解析と同様の結果が得られた。1回以上ワクチン接種を受けていた群(1,552人)では、COVID-19診断からの間隔が10日長いごとにaOR0.98(同0.97~1.00、P=0.04)、ワクチン未接種群(2,445人)はaOR0.98(0.97~1.00、P=0.02)。
症候性COVID-19か否かでサブグループ化すると、症候性の場合は同様の有意な関連が認められ〔aOR0.98(0.97~1.00)、P=0.009〕、無症候性陽性者も同様の傾向にあったが、わずかに有意水準未満だった〔aOR0.98(0.96~1.00)、P=0.06〕。
以上を基に著者らは、「COVID-19の診断から手術までの間隔が長いほど、術後の重大な心血管合併症のリスクが低下することが示唆された。このデータは、COVID-19罹患歴のある患者に手術を行なう際に、その最適なタイミングの検討と周術期リスクの評価に役立つのではないか」と結論付けている。(HealthDay News 2022年12月15日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2799548
Press Release
https://news.vumc.org/2022/12/14/surgical-risk-persists-for-patients-whove-had-covid/
構成/DIME編集部